認知症とともにあるウェブメディア

もめない介護

要チェック!高齢な親もZoomデビューするコツ もめない介護60

クローゼットの扉のイメージ
コスガ聡一 撮影

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、老人介護施設での面会禁止が長期化する中、タブレット端末などを使ったオンライン面会が少しずつ広がっています。

義母が暮らす有料老人ホームでは、ようやく「オンライン面会を導入予定」という方針が示されたものの、実現には至っていません。施設長によると「面会に使用するタブレット端末がまだ納品されていない」とのことでした。

小中高校の休校措置やオンライン授業の実施にともない、ノートパソコンやタブレット端末を必要とする人が急激に増え、入手しづらくなっているとも聞きます。デスクトップパソコンでビデオ通話するときに使用する外付けのウェブカメラやマイクも売り切れ続出で、もともとは2000円程度のものに1万円近い値段がついていたりもしています。

そこで、義母とのオンライン面会は気長に待つとして、まずは自分の親とのビデオ通話環境を整えることに。

わたしが3人姉弟のいちばん上ということもあって、父は76歳、母は70歳と、義父母とはひとまわり以上年齢が違います。介護が必要になる気配は今のところはあまりなく、「お父さんがちっとも家を片づけない!」「お母さんが口うるさい」などとお互いの文句を言い合いながらも、元気に暮らしているようです。

会議室のURLをクリックするだけで参加できる「Zoom」にチャレンジ

父は、ビデオ通話にあまり気乗りしないようでしたが、母のほうは俄然、乗り気。というのも先日、古くから付き合いのあるお友達とLINEでやりとりしているときに、ふいにビデオ通話がつながってしまうというアクシデントを経験したそう。

「スマホに映った自分がやたら老けて見えていて大ショック。さっさと消したいのに、ビデオ通話の切り方がわからなくて、仕方がないから電源切ったのよ……」と、笑いながら打ち明けてくれました。

今回、使用したのはビデオ会議などでよく使われている「Zoom」です。わたし自身も今回の新型コロナウイルスにともなうリモートワークに対応するために急遽、使い方を覚え、打ち合わせや取材などに使っています。

会議室を自分で作成するとなると、こまごまとした設定が必要ですが、参加する側は「会議室のURLをクリックするだけ」と操作がシンプル。両親と同世代のメンバーが参加している研究会や句会をオンラインで開催した時も比較的スムーズに導入できたので、恐らく両親もいけるだろうと考えました。

なかなか会議室に入室できない母と、入室できて得意げな父

操作性だけでいえば、LINEのビデオ通話機能のほうが簡単なようにも思いましたが、父も母もスマホを置くための台を持っていません。「パソコンのほうがゆっくり話せそう」というリクエストもあったため、まずはZoomを使ってのビデオ会議にチャレンジ。ダメなら、LINEのビデオ通話機能にツールを切り替えるという作戦で進めることに。
さて、わたし自身はZoomの有料会員になっていて、会議室の作成はこれまでに何度も経験しています。さくさくとURLを発行し、両親にメールで送り、あとは本番を待つのみ。便利な世の中になったなあとノンキに構えていたら、実家からSOSの連絡がやってきました。

母いわく、「クリックしたらダウンロードの画面になったけど、ダウンロードされない!」「英語の画面が出てきた」「ビデオやマイクはいつつなげばいいの!?」……etc.

後に判明するのですが、実はこのとき、実家のパソコンの処理速度が遅く、必要なファイルのダウンロードやインストールに時間がかかっているにもかかわらず、せっかちな母があてずっぽうにクリック。その結果、インストール作業が中断されたようなのです。

電話で話しながら、再インストール。目の前にあるPC画面にでてきたメッセージを母に読み上げてもらい、一緒にダウンロードを待つ……ということをしようにも、横から「俺のノートパソコンではうまくいったぞ。どれ、見せてみろ」と父が乱入。たしかに、父はZoomの会議室に入室できていて、得意げな顔が映っています。

楽しい老後をサポートするはずが、夫婦ゲンカに発展

父のノートパソコンを、母のデスクトップパソコンの近くに持っていってもらい、状況を確認しながらサポートしようとしたのですが、「言われた通りにやれば簡単にできるのに、お前が何か変なことをしたんだろう」「うるさい、お父さんはちょっと黙ってて!」と夫婦ゲンカが始まってしまい、カオス!

平和で楽しい老後生活をサポートするはずが、むしろ、夫婦の溝が深まっているような……。頭を抱えていると、画面の向こうから、弟のウンザリした声が聞こえてきました。

「あのさあ、おねえだって忙しいんだろうから、ちょっとは考えなよ……」

アンタ、いたの!? ちょうど、下の弟が実家に顔を出し、食事を終えたところだったようです。

「ちょっと、お母さんのパソコン見てあげて。お父さん、場所代わって!」
「えー……面倒くさい」
「いいから! お願い!!」

渋る弟を無理矢理パソコンの前に座らせ、設定してもらうことに。その結果、15分もしないうちにZoomが使えるようになったのです。バンザイ! 最高!!

弟の偉業をほめたたえていると、母が横から「たまにはアンタも役に立つのね」とチクリ。ちょっと、その言い方! 弟は慣れているのか、顔色ひとつ変えずに「おつかれー」と画面から消えていきました。お疲れさま、ホント助かりました。

親と一緒に新しい何かを始めてみることで見えてくること

そして迎えたビデオ会議の本番。ちょうどその日は「母の日」であり、父の誕生日でもありました。弟たちにも一応、会議室のURLは知らせましたが、下の弟は軽やかにスルー。てんやわんやのセッティングに付き合ったので、もう十分だろうと判断したのかもしれません。

上の弟はというと、弟家族みんなでスマホからの接続にトライしてくれたのですが、ビデオは映るものの、音声がうまくつながらず……。クリックひとつで簡単だと思っていたけれど、そうではないこともあることを学びました。しばらく試行錯誤してくれましたが、音は聞こえるようにならず、断念。“スマホやパソコンに慣れている子ども世代なら楽勝”とすっかり思い込んでいましたが、やはり接続テストは大切です。

思いのほか苦戦したものの、Zoomを使ってよかったこともいくつか。スマホの画面を見せながら、LINEのビデオ通話の使い方を両親にレクチャーしたところ、声だけで説明されるよりもわかりやすかったようです。その場で、義妹(上の弟の妻)に「いま真奈美にビデオ電話のかけ方を教わったんだけど、かけていい?」と連絡。新型コロナウイルス騒動以降会えずにいた孫娘とも顔を見て話ができたと、大喜びしていました。

一連のやりとりでは、親の老いを強く感じた瞬間もありました。弟の手助けがなければ、本番までこぎつけられなかったような気もします。その一方で「わからないけどやってみよう」という好奇心や、「うまくいかなくても試す」という根気は健在。こちらがやり方を工夫すれば伝わるという手ごたえもありました。

親と一緒に新しい何かを始めてみる。それは親の「今」を定点観測するのとともに、イライラせずに親対応をする練習としても役に立ちそうです。

「コロナ禍を生きぬく~認知症とともに」 の一覧へ

あわせて読みたい

この記事をシェアする

この連載について

この特集について

認知症とともにあるウェブメディア