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コロナの面会制限 往診もダメなんて!体調管理は誰が?もめない介護59

工事現場のバリケードのイメージ
コスガ聡一 撮影

新型コロナウイルス感染拡大を防ぐための面会制限がスタートして3カ月になろうとしています。義母が暮らす有料老人ホームから送られてくる「お知らせ」も、新型コロナ一色。つい先日届いた封書によれば、「緊急事態宣言の延長に伴い、ご面会の制限を5月31日まで延長させていただきます」とありました。

少し前まで面会制限期間は「当面の間」と記載されていましたが、こんな状況ですから延長は想定内。ただ、このコロナ禍のなかでも続けてきた月一回のもの忘れ外来の往診についても、「薬の処方内容も変わっていないので休むことはできないか」と打診されるような状況にありました。

たしかに、2019年2月の入所以来、義母のもの忘れ外来に関する処方内容は変わっていません。「リスクを少しでも避けるため」と施設側が考えたのも、理屈としてはわかります。ただ、これだけ状況が変わっている中で、診察を飛ばして“これまで通り”の薬でOKとするのには抵抗がありました。

今まで何度かこの連載コラムでも紹介してきましたが、義父は入退院を繰り返した末、現在は施設を退所してリハビリ病院にいます。医療体制が充実した有料老人ホームに空きが出るのを待っている状態です。

義父が入所を希望している有料老人ホームに、義母も一緒に移るのか。それとも別々の施設で暮らしながら、ときどき面会に行くというスタイルで交流するのか。そのあたりは義母と一緒に、義父のお見舞いに行きながら相談しようと考えていました。

新型コロナと必死に戦う施設側の思いも分かるけれども

ところが、この新型コロナ騒動のおかげでお見舞いにも行けず、義父母は離ればなれのまま。義父の部屋がなくなってしまったことを、義母がどうとらえているのか。不安や不満を抱えているとすれば早々に解消したいけれど、電話でのやりとりはすでに難しくなっています。

これまでのように、面会を通じて義母の様子を垣間見ることも、フォローすることもできない。そんな中、認知症発覚当時からの主治医によるもの忘れ外来の往診は、“命綱”のような存在です。施設の方針として、一切の往診がNGという方針であれば、従います。でも、「薬が同じだから」という理由で省略することを家族は希望しませんといったことを伝えました。

施設としては感染症を拡大させないため、必死に対応してくださっているに違いありません。こちらが想像している以上に大変な状況に直面しているのかもしれません。でも……。とにかく冷静に、淡々と必要なことのみ伝えよう。そう心がけながらも不安は募り、不信感が頭をもたげてきます。ああ! もう!!

「提携クリニックによる往診がありますから、まったく診察がないわけではありませんし……」
「専門医による診察を受けたいんです……」

夫の応援に励まされ、粘り強く交渉

施設には提携のクリニックがあり、月2回の定期往診があります。これまでも、認知症に関する部分以外は提携クリニックに委ねていました。家族が付き添わなくても、定期的に健康状態をチェックしてもらえるという、ありがたい仕組みです。ただ、義父の熱がしょっちゅう上がったり下がったりしていたときも、ひたすら解熱剤(ときどき抗生剤)を処方するのみ。当時、感染症を疑い、総合病院への受診を促してくれたのは、もの忘れ外来の医師でした。その結果、義父が20代(!)のころにかかった結核が再発していたことが発覚した、という経緯がありました。

日に日に体調を崩すことが増えていった義父に比べて、義母は元気いっぱい。食欲も旺盛で、体操などのレクリエーションにも積極的に参加していました。そう考えると一時的に、提携クリニックに往診を委ねてもいいような気もしますが、本当に“一時的”で終わるのか……?

電話をしながらふと夫を見ると、なぜかガッツポーズをしています。「よし、その調子だ。行け!」というメッセージのようです。なんとなく励まされて、「短時間で構いません。専門医に診てもらうことを希望します」と交渉。そして、往診の続行が決まりました。

“お変わり”あるじゃん!

こうして迎えた、往診日。家族は立ち会えないため、往診後に施設から情報共有してもらう形です。施設長いわく「特にお変わりなく、薬の内容も変わりません」。

何の気なしに「先生は何かおっしゃってましたか?」と尋ねると、「以前より、やりとりのなかで見当識障害が見られる頻度が増えているので、日中の活動量が減っているのではないか?と心配されていました」という答えが返ってきました。

見当識障害は、認知症の中核症状のひとつで「今日が何月何日かわからない」「知っているはずの人を思い出せない」など、状況が把握できなくなる状態を指します。

以前から義母の会話は時折タイムスリップ。ある瞬間、暮らしている施設が「学校(または寄宿舎)」になったり、亡くなった祖父母(義母の両親)がよみがえったり、息子(わたしの夫)が弟として認識されたり……といったことがありました。どうやら、その頻度が高まってきたようです。“お変わり”あるじゃん! と苦笑い。

心配をよそに、おやつを持ち寄って“女子会”にも参加

今回、施設から届いたお知らせによると5月中旬以降、LINEのビデオ通話を利用したオンライン面会の導入が予定されているそうです。導入時期は施設によって違うとも書かれていたため、改めて施設に問い合わせるとともに、義母の様子を聞いてみました。

食欲は相変わらず、旺盛。朝昼晩と、しっかり食事をとり、食後はテーブル拭きを手伝うなど、ちょこまかと活動されている模様です。
事務室に現れては「夫のところに行かなくては!」「お見舞いに行きます!!」と訴えるといったような行動はほぼないそう。

「ガタガタ騒いでも仕方がない」と腹をくくったのか、家族の記憶があいまいになりつつあるのか。時間の感覚があやふやになっているおかげで、かえって落ち着いて過ごせているのかもしれません。本当のところは義母のみぞ知るですが、少なくとも義父恋しさに泣き暮らしている状態ではないことにホッとします。

「体を動かすと、とっても気持ちがいいのよ」と言っていた体操には毎日参加。おやつを持ち寄り、おしゃべりを楽しむ“女子会”にも参加しているそう。いいぞ、その調子だ!

オンライン面会が始まったら、どうなるのでしょうか。かえって混乱を招くのではないかという不安もありますが、義母の性格を考えると、「大変な世の中になったわね」と案外アッサリ受け入れてくれそうな気もします。使用予定のタブレットがまだ施設に届いていないとのことで、実際に面会がスタートするのはもう少し先になりそうですが、実現でき次第、この連載でご報告します!

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