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デイサービス自粛。散歩も行かない夫はこのまま寝たきりに?【お悩み相談室】

自宅にこもる認知症の父のイメージ

居宅介護支援(ケアマネジャー)の市川裕太さんが、介護経験を生かして、認知症の様々な悩みに答えます。

Q.認知症の夫(85歳)と二人暮らしなのですが、新型コロナウイルスの感染が怖いので2カ月以上デイサービスに行っていません。デイサービスでは散歩に出かけたり、いろいろなレクリエーションをしたりしていたようですが、家ではボーっとテレビを見ているだけで散歩に誘っても行きたがりません。症状が進行するのではないか、このまま寝たきりになってしまうのではないかと懸念しています。(78歳・女性)


A.確かに家で自粛生活を送っていると、筋力の低下や症状の進行が気になるところです。実際に、感染を防ぐためにこれまでのサービスを中止することで、そうしたことが起こる事例も出ています。基本的には自粛を前提として、「ソーシャルディスタンス(人と2メートルほどの距離)」をとることと「3密(密閉空間、密集場所、密接場面)」を避けられるのであれば、短い時間でも散歩に連れ出せるといいですね。ただし、「運動不足になるから動かないとだめよ」といった言い方をすると、家族から無理強いされているように感じて、逆効果になることもあります。「こういう状況だから○○しなければいけない」といったことは、認知症の人にはどうしても伝わりにくい場合もあるのです。それよりも「天気がいいから少し外に出かけない?」など、日常生活の中で、自然に出かける気になれるような声がけができるといいですね。

ただ、そもそも散歩に行きたがらないというのは、散歩に興味を示していない可能性もあります。人によっては目的がないと出かける気になれず、面倒くさいと感じてしまうこともあるのです。「買い物に行く」「近所に咲いている花を見に行く」「ペットの散歩をする」など、散歩に限らず本人が興味を持ちそうなことを目的に、さまざまな方法で誘い出すのはいかがでしょうか。
また、家族に言われるから出かけたがらないということもよくあります。誰のどんな声がけなら反応するのか、本人が意欲をかきたてられるものは何か、日頃の様子などから考えてみるのもヒントになるかもしれません。

ほかに、外に出なくても動画配信サービスなどで公開されている、自宅でできる運動などを試してみるのもいいでしょう。デイサービスが、自宅でできる簡単な体操などの資料を配布したり、動画配信したりしている場合もあります。また、デイサービスに行けない間だけ、一時的に介護保険サービスの訪問リハビリを利用するのも1つの方法です。

私が担当する利用者の方で、外出したがらない人がいるのですが、話を聞くと「飼っている犬の散歩には行きたいけれど、一人では不安」とのことでした。その人は一人暮らしなので、民間のペット預かりサービスに相談して、犬の散歩をするのを後ろから見守ってもらうように依頼しました。基本的には後ろから見守ってもらうだけなので、本人は自分で散歩ができていると、充実感を得られます。

自粛生活は、この先もしばらく続いていくかもしれません。ご家族の負担を減らすためにも、本人に充実感をもってもらうためにも、介護保険サービスを利用することは大きな選択肢となりますが、それだけにとらわれず柔軟な視点で生活を工夫していく必要があると思います。ご家族だけで抱え込まず、ケアマネジャーにも関わってもらい、本人の生活をさまざまな角度からみて、工夫してみてください。

【まとめ】自粛生活で引きこもりがちな人を散歩に連れ出すには?

  • 本人が興味を持ちそうなことを散歩の目的にする
  • 家族以外から声をかけてもらう

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