介護ストレスの逃し方・かわし方3カ条 もめない介護138
編集協力/Power News 編集部
「介護」というと、つらい苦しいと嘆くような話ばかりが目につく時、「楽しい時間もあれば、笑い転げるぐらい面白い瞬間だってあるのに」と歯がゆく思います。でも、「家族仲がよくていいですね」「やっぱり前向きがいちばんですね」とポジティブ一辺倒に染め上げられると、それはそれで何か違うような気がしてモヤモヤ。介護の面白さとストレス、悩みと喜びは表裏一体で、スパッと切り離せるものでもないと感じているせいかもしれません。
クールに割り切ったつもりでも、無意識のうちに抱え込みストレスを抱えてしまうこともあります。自分でもそうと気付かないうちにテンパっていて、周囲の声も耳に入らなくなる。夫がよかれと思って言った「頑張らなくていい」のひと言に否定されたような気持ちになり、“介護離婚”のシミュレーションをしてみたり……。
気付いてしまえば何のことはない。ストレスが限界値に来ていただけなんですが、渦中にいるとそもそも負荷がかかっていることにすら気づかない。重たい荷物を下ろして身体が軽くなって初めて、「重たかったんだ!」と気づく。介護が始まったばかりのころのわたし自身も、まさにその繰り返しでした。
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介護ストレスは何らか生じるものと考えて、自覚があろうがなかろうが、セルフケアを試みる。それは家族が共倒れしないための大切な自衛策なのではないかと考えています。そこで今回は、過去の「もめない介護」から「介護ストレスの逃がし方・かわし方」をダイジェストでご紹介します。
やましい気持ちになるぐらい、しっかり自分に時間を使う
明確な理由はないけれど、どうにも親に会いたくない。
イライラして、きついひと言をぶつけてしまいそう……。
そんな相談をされた時、真っ先におすすめしているのが「適当な口実を使ってサボること」です。やさしくて真面目な人ほど一生懸命、親に尽くし、我慢に我慢を重ねています。でも、その努力が報われているかというと必ずしもそうとは言えません。むしろ、親にはすっかり「ワガママを言ってもOK」認定され、感謝されるどころか、文句ばかり言われる……という状況に陥ってるケースも珍しくありません。
「そういう言い方は傷つくからやめてね」
「私には私の生活があるので、すべて言いなりになることはできないよ」
心にゆとりが残っていれば、伝える内容は厳しくとも、声音を優しくするなどひと工夫もできます。でも、まったく余裕がなくなってしまってから伝えようとすると、それどころではなくなります。怒鳴り合って、傷つけて合って、それでも「言いたいことが言い合えて良かった!」となれば万々歳です。でも、言わなくてよかった一言を突きつけた結果、子どものほうがより一層傷つき、忘れられずにいることも。
そこまで関係がこじれる前に、積極的に<ひと休み>を取り入れ、自分に充電していきましょう。「わたしばっかり楽しんで申し訳ない」と少々やましい気持ちになるぐらい、自分の時間を楽しむと、優しい対応もしやすくなります。
ちなみに、親に会う前におなかに何か入れておくのもおすすめ。バカバカしいと思うかもしれませんが、おにぎり1コ食べておくだけで、気持ちのゆとりはぜんぜん違います。朝早くから移動し、やらなくてはいけないことも盛りだくさん。とてもではないけれど、ゆっくり食事をしている余裕なんてない!という時こそ、空腹がもたらすイライラに要注意なのです。
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日程調整は“往復回数”を減らすことに注力
介護はひとりで抱え込まないことが大事。でも、複数の人がかかわる時につきものなのが、スケジュール調整にまつわるストレスです。
介護が始まったばかりのころは、ケアマネさんとのこんなやりとりに戸惑いました。
ケアマネ「サービス者担当会議を開きたいんですが、いつごろがご都合いいですか?」
わたし「そうですね……15日(水)と21日(火)あたりだと都合がいいです」
ケアマネ「時間帯は何時がいいですか?」
わたし「午後1時~3時ぐらいスタートだとありがたいです」
――数日後。
ケアマネ「看護師さんの都合がつかないので、14日(火)10時だとどうですか?」
わたし「すみません。その日は難しくて……」
ケアマネ「ほかの日だと、いつがご都合いいですか?」(最初に戻る)
ケアカンファレンスではヘルパーさん、看護師さん、訪問診療の先生など多職種の方々が集まり、ケアの現状を共有しながら、介護方針を話し合います。具体的に、課題が浮上している場合にはどう解決するか? についても話し合われます。介護のキーパーソンだから必ず参加しなくてはいけないというわけではなく、「やむを得ず、欠席します」ということもあります。とはいえ、できれば出席したほうが情報共有もしやすいし、疑問も解消しやすいです。なので、できれば出席したい。でも、日程調整のための電話のやりとりに対応するのも限界があると感じました。
相手が答えやすい、問いかけのスタイルを探る
そこで、候補日の提示の仕方を変えました。できるだけ候補の時間帯を長く、多く確保できる日を3~4つぐらい選び、「この日なら、何時でも構いません。決まったら教えてください」とケアマネさんに伝えます。変にピンポイントで“ベストな時間”を伝えるのではなく、向こうに選んでもらい、結果だけ教えてもらう。この方法ならやりとりは一往復で済みます。
わたしがフリーランスで仕事をしているからできた方法で、会社員の場合はそんなにいくつも候補日は出せないということもあるかもしれません。ただ最近はコロナ禍でオンライン担当者会議をZoomで開催するケースもあり、選択肢は広がっています。「我が家にとってラクな方法」を探ってみる価値はあります。
これは家族間のやりとりにも言えることです。誰が病院に付き添うのか、親の様子を見に行くのか――。調整のストレスが重なっていくと、そのうち、相談すること自体が面倒になり、「わずらわしい思いをするぐらいなら、自分でやればいいか」とも思いたくなります。でも、そうやって抱え込むほど、共倒れのリスクは高まります。
「家族なのに」「プロなのに」と口をとがらせたくなったら、深呼吸。相手が答えやすい、問いかけのスタイルを探ってみるほうが、実は解決までの道のりも短くてすみ、ストレスの総量は少なくてなるのではないかと思うのです。
※参考記事はこちら「別居介護はスケジュール闘争 振り回されないコツは もめない介護42」、「予定合わせが苦手な義姉に夫ファイヤー!日程調整の秘訣は? もめない介護43」
介護のイライラ、モヤモヤを吐き出すなら……
セルフケアを心がけ、あれこれ工夫してみても、気づけば溜まっていくのが介護ストレス。パーッと発散し、スッキリ! とはなかなかならず、1人で悶々と悩んでいる。そんなとき、どうするか。
私はかつて、Twitterで匿名の愚痴アカウントを作ったことがあります。夫も家族も誰も知らないアカウントなら、本音も悪口も言いたい放題。誰も傷つかないし、なんてすばらしいアイデア!……となるはずでしたが、実際には書いても書いても、気持ちはどんより。つらつらと書き込んだ文句を読み返すと、さらに落ち込んできます。ちっとも癒やされない! 思ってたのと違う~!!!
さらに、追い打ちをかけたのが同じようにストレスを抱えた人たちから続々とメンションが飛んできたことです。
家族に対する怒りや悲しみ、恨み……。元気なときなら多少は受け止められたかもしれませんが、なんせこちらもヨボヨボヘロヘロの精神状況ですから、ダメージをまともにくらってしまい、グッタリ一直線。それというのも、自分がネガティブなことばかりツイートしたせいじゃん……と落ち込む羽目に。
かくして行き場を失ってしまった、日々のモヤモヤ。どうすれば成仏させられるのか。思いあぐねた結果、とってみた手段は「紙に書き出してみること」。よく言われることではありますが、悩んでいるとき、思いつくままに紙に書いてみると、たしかにスッキリした気分になるのです。
「マジぶっ飛ばしたい」
「もうイヤ! 逃げたい!!」
とダークな感情をダダ洩れにしても、不思議とTwitterほど増幅される感じはありません。そこにあるのは、あくまでも自分だけの思い。第三者の思いに巻き込まれていく不安感もありません。ストレスは内側に溜め込まず、外に出していく。でも、出し方も大事だと感じた出来事でした。
話す相手を間違えたら、すみやかに撤退
ちなみに、誰か第三者に話をするときは「相手を選ぶこと」がとても大事です。そんなの当たり前じゃないかと思われるかもしれませんが、ストレスで心がパンパンにふくれあがっているようなタイミングに、優しい言葉をかけられると、うれしくなって後先考えずに、ペラペラ話をしてしまうことがあります。相手が、待ってましたとばかりに、“あなたのためを思って”トークを始めてから後悔しても、後の祭りです。
心配しているふりをしながら、どうも“他人の不幸”を楽しんでいるような人もいます。まったく悪気はないけれど、口を開けば、ウンザリするような助言しかしない人もいます。また、どういう言葉で励まされるのか、気持ちがラクになるのかは相性もあります。
どんなに相手が“いい人”であっても、経験豊富な“介護の先輩”であっても、気がめいるようなアドバイスを延々聞き続ける必要はありません。話す相手を間違えたら、すみやかに撤退しましょう。そして、次からはみょうちきりんなアドバイスが入り込む余地をなくすべく、こちらからは情報提供しないと、心にメモ。新たなストレスの種を増やさないことも大切な自衛策のひとつです。
※参考記事はこちら「介護のイライラ、モヤモヤ、 解消するならSNSよりこれ! もめない介護46」