Better Care 通信

コロナ禍真っ最中の介護施設 取材で見えたのは緊張下でただよう活気

介護情報季刊誌「Better Care(ベターケア)」となかまぁるのコラボレーション企画です。同誌に掲載されたえりすぐりの記事とともに、なかまぁる読者のための、雑誌には載っていない情報を加えてお届けします。野田真智子Better Care編集長からのごあいさつはこちらです。

コミュニケーションをとる管理者の田中雄寬さん
コミュニケーションをとる管理者の田中雄寬さん

微熱の利用者にすぐ対応

新型コロナウイルス感染症(新型コロナ)の勢いが増すばかりの2020年10月下旬。千葉市花見川区花園にある小規模多機能型居宅介護「がってん!となり組」を訪ねてきた。新型コロナ流行下。友人・知人が経営する施設も含め、アチコチで取材を丁重に拒否されるなかでOKを出してくれた。感謝!

その「がってん!となり組」は総武線新検見川駅から徒歩3分ほどの閑静な住宅街にある。訪問介護と介護福祉タクシーも同居して運営しているのだけれど、2階建て事業所入り口横の壁に「がってん!となり組」のロゴマークも貼り付けられており、会社の理念

<本気 本質 本物>

という三つの言葉が際立つ。

マスクは必須。玄関で検温。36度ピッタリ。両手を消毒しフロアへ。すると、朝食を済ませたばかりの佐藤真佐江さん(仮名、81歳、要介護2)が、食後の薬を飲む寸前に大欠伸。皆で大笑いしながら取材は始まった。

そうこうしている間に、職員や利用者さんでフロアが埋まり活気が漂いはじめる。バイタルチェックに検温。すると、お一人が37度3分。川島成子さん(仮名、67歳、要介護5)。その後、何度か測定するも微熱は続き、少々の咳き込みもあるため別室へ移動。この移動について小規模多機能管理者である田中雄寬さん(49歳)に聞いた。

「<がってん>では、新型コロナ流行下であるという事情、さらにはご利用者様にご高齢の方が多いため、体温37度5分以上ある方にはご利用を控えて頂いたり、帰宅して頂いたりすることをご家族の皆さまにもお知らせしています」

幸い、川島さんの微熱がそれ以上に上がることもなかったので、一日を無事に終えられ、帰宅された。

朝食後の薬を飲む寸前に大欠伸
朝食後の薬を飲む寸前に大欠伸

感染症の対策

ところで、このご時世。どうしても新型コロナ流行下での施設運営について問わなければならない。実は、「がってん!となり組」の近隣介護施設で患者が発生した経緯もあり、介護統括の大塚ひろ子さんに聞いてみた。

「新型コロナ患者が発生した事業所の管理者が知り合いだったので状況などを詳細に聞きました。その事業所は自主休業して、保健所が入り対策指導があったと聞いてますが、いま、そこで行っている対策なども聞いたんです。そのなかで、私のところでもやれることをスタッフで話し合い、予防・対策に努めています」

その対策の詳細が以下になる。

1. スタッフに対して
「出勤前自宅での体温測定」「昼食後の体温測定」「マスクを常時使用する」「1アクションごとの手指消毒」「外出後の手洗い・うがい」「本人・家族の健康管理」「室内の換気」「送迎時1席を空ける」「送迎中の換気(窓を少し開けておく)」「訪問時、ご利用者に対しての体温測定」「送迎終了後の車内の消毒」

2. 通いの利用者さんに対して
「利用前(乗車前)の体温測定」「乗車前の手指消毒」「入室時の手指消毒」「トイレ後の手洗い・手指消毒」「利用中のマスクの着用」「なるべく大きな声を出さない」「体温が37度5分以上ある方の利用を控えて頂く、帰宅して頂いたりする」「訪問中の室内の換気」

さらには、以前は利用者さんにできる範囲で洗濯物たたみや食事の盛り付けなど手伝ってもらっていたが、現在はスタッフが行う

3. 訪問時
「入退室時の手指消毒」「ご利用者様宅の室内の換気」「ご利用者様の体温測定」「発熱されている方については、限られたスタッフで対応」

足浴を楽しむ
足浴を楽しむ

スタッフは終身雇用?

さて、「がってん!となり組」は2015(平成17)年11月、有限会社フィールドビー がってん!となり組として設立された。取材時で設立15年目。社長の加藤幸雄さん(60歳)が表情を緩めて語る。

「ありがたいことに、設立時からのスタッフ6人がいまも一緒に働いてくれてます。介護施設ではまれではないでしょうか? 皆、いまは取締役などの肩書が付いてて、笠原繁樹、大塚ひろ子、田中雄寛、梅澤和彦、天野美津子、そして圓山英里です。決して待遇がいいわけではなく、逆に安い給料で残業も多いなか、よく頑張ってくれたと思います。デイサービスから小規模多機能に移行ができ、少しずつではありますが給料・残業の見直しもできつつあります。本当に感謝感謝です! 私は勝手にいまのスタッフは終身雇用だと思っています」

昼食後、大欠伸で笑わせてくれた佐藤さんの入浴時間となった。佐藤さん、入浴が大好き。入浴を告げられると、待ってましたとばかりの満面のほほ笑み。筆者は佐藤さんに問う。

「一緒について行っていいですか?」

すると、爆笑しながら

「いいよ! もう、男も女も関係ないが」

ところが、佐藤さんに異変が起きた。結果、お楽しみの浴槽につかって幸いを体感するということはできなかった。なぜ? 入浴担当をした小規模多機能主任である天野美津子さんに問うてみた。

「以前より、一瞬にして顔面蒼白(そうはく)になり意識消失されることがあり、当日も普段より血圧が低く血糖値が高い状態であったことと、左鎖骨を骨折されていることが大きな要因になりました。また、入浴前脱衣室にて便失禁があり、臀部(でんぶ)洗浄時にも軟便が出ていたため、排便時(便失禁時)に血圧の低下が多くあることから、浴槽に入らなければ対応可能と判断し、シャワー浴での対応となりました」

コロナ禍での「がってん!となり組」。喜怒哀楽に包まれながらも、職員の方々の一生懸命がヒシヒシと伝わってくる。

改めて記す。会社理念。

<本気 本質 本物>

小規模多機能 がってん!となり組(有限会社フィールドビー)
〒262-0025 千葉市花見川区花園2-9-9
TEL:043-301-3536
FAX:043-301-5023

その後の がってん!となり組
掲載記事の取材は2020年秋。それからも新型コロナのまん延は続き、介護施設はどこも薄氷を踏む思いで日々の介護を続けてきました。

「がってん!となり組」も同じ。運営会社である有限会社フィールドビー社長の加藤幸雄さんに伺ったところ、これまで同様の対策を細心の注意をもって継続してきたことに加え、春先からは全スタッフに、月2回のPCR検査を義務づけてきました。感染状況が劇的に収束してきた10月からは、検査を月1回にしたものの、今後も気を緩めず、対策を順守していくとのことです。

「幸い、これまでのところ、利用者、スタッフともに陽性者は0。このまま行ってほしいですね」と、気を緩める気配はありません。

記事中、「終身雇用か」とされている設立時からの6人のスタッフも、その後も働き続けていますが、「和気あいあい、という“仲良しこよし”の感じではなく、プロとして言うべきことはいいあい、厳しく接せるところは厳しく対応している」といいます。

小規模多機能型居宅介護では、利用者の急な体調変化などへの対応を迫られる例も、少なくありません。「がってん!となり組」では、基本的にそれぞれの利用者のかかりつけ医を契約時に把握しておき、できるだけそれぞれのかかりつけ医に受診するようにしているそうです。

「受診時のつきそいも、毎回ご家族は難しいので、併設の介護タクシーと連携をとって安心して受診していただいています」

いつ終わるともわからない新型コロナ流行下、医療としっかりつながり、その「足」も確保して、「がってん!となり組」の笑顔の暮らしは続いています。

千葉市花見川区の介護環境

地域の特徴

千葉市を構成する行政区の一つ。花見川千本桜緑地や花見川サイクリングロードなど、花見川周辺は桜の名所。大規模な住宅造成地区がある一方、花見川流域は田畑が広がり古い街並みを残す。千葉市の花・古代ハス「大賀ハス」発祥の地。生活圏は、JR中央・総武緩行線、京成千葉線沿いと京成本線沿いの南北二つに大きく分かれる。

福祉の概況
・千葉市花見川区の総人口は177257人、高齢化率は27.7%(2020年 3 月 31 日現在)
・要支援・要介護認定者数は8250 人。要支援1=1408人、要支援2=786人、要介護1=2418人、要介護2=1120人、要介護3=876人、要介護4=913人、要介護5=729人(2020年3月31日現在)

主な相談窓口
千葉市社会福祉協議会花見川区事務所    TEL:043-275-6438
千葉市あんしんケアセンターこてはし台   TEL:043-258-8750
千葉市あんしんケアセンター花見川     TEL:043-250-1701
千葉市あんしんケアセンターさつきが丘   TEL:043-307-3225
千葉市あんしんケアセンターにれの木台   TEL:043-445-8012
千葉市あんしんケアセンター花園      TEL:043-216-2610
千葉市あんしんケアセンター幕張      TEL:043-212-7300

野田明宏さん
野田明宏(文・撮影)
父母2人を在宅でみとる。父の介護は病院付き添いが1年ほど、母と交代で介護するも、6人部屋での他人さまとの人間関係の難しさを痛感。初めて排便処理を経験。母はアルツハイマー型認知症となり、約10年を一緒に過ごす。途中、介護職を経験。虐待経験者でもある。母亡き後、4年半を介護職の現場を体験し、現在は介護フォトライターとして生きる。

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