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コロナで緊迫の病院に菓子折り!Amazonポチる義姉はアウト? もめない介護54

コスガ聡一 撮影

「Amazonから施設と病院にクッキーおよび、お礼状を送っています。すでに受け取っていただいています」

家族で介護情報を共有するために開設したLINEグループに、義姉からメッセージが届いたのは、3月の頭のことです。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、全国すべての小中学校、高校などに対して臨時休校要請が発表された直後でした。

これまでにも、義父母の入退院や施設への入退所があるたびに、義姉から「(病院や施設に)菓子折りを送ろうと思うだけど……」と相談されてきました。ただ、病院や施設から「(菓子折りなどは)受け取れないルールになっていている」と聞かされていたため、その旨を伝え、「やめましょう」と提案してきました。ところが、なぜか今回に限って、事前の相談はなく、配送済みというお知らせが届いたのです。

なんと返信したらいいものか戸惑っていると、夫がすぐさま、次のようなメッセージを送っていました。

「ちょ、ちょっとまって。施設と病院に菓子折りとお礼状? そういうことは絶対やってはいけないことで、しかもいまものすごく現場が混乱しているときに、送る側の身勝手な都合でそんなことしちゃいけないって」

今までにない事態だからこそ、感謝の気持ちを伝えたいという義姉

続けて夫は、義姉宛のLINEメッセージで病院や施設が大変な状況にあることを再度説明。それぞれ、誰宛に送ったのか、義姉に問い合わせました。すると、思いがけない展開が待っていました。夫の問い合わせに対する、義姉の返信は「両方とも、××××(義父母の苗字)の娘だとわかるようになっています」。夫がしびれを切らして、再度問い合わせても送り主の情報を教えてくれません。これは一体……。義姉から来た返信はこうです。

「勝手にしたのは、悪かったと思います。両親には葉書を送りましたが、施設やスタッフの方にも一筆葉書を書かずにはいられませんでした。いままでにない事態の中、感謝と体に気をつけてほしいという意味でクッキーを送りました」

夫が伝えたかったのは「菓子折りを贈るのはルール違反(先方から送らないでほしいと言われている)」ということ、さらに「いまの状況だからこそ、ルール違反はやめよう」でした。しかし、その真意は伝わらず、「勝手に送るのは困る」という部分だけがクローズアップされてしまったようです。あちゃー……。

夫は、教職についている義姉がイメージしやすいようにと、「学校でも、生徒の親からそういうものは一切受け取ってはならぬという決まりはありませんか?」と送ったのですが、これまた逆効果!

菓子折りは受け取らないことになっているし、言葉では断るけれど、実際にはもらっている。世の中には、建前と本音がある! と、どんどん話がこじれていきます。一方、夫のほうも堪忍袋の緒がヨレヨレのボロボロ。「アイツは一体、何を考えてるんだ。職業倫理観が乏しすぎる!」と、カンカンに怒っていました。ファイアー!

本音と建前。現場の声を聞きました

それにしても、義姉が言うところの「菓子折りを断るのは単なる建前」は、実際にはどうなのか。介護現場で働く方々に聞いてみたい。そこで、わたしもメンバーとして参加している“介護”に関心を持つ人々が集うオンラインコミュニティ「SPACE」で聞いてみました。

「施設の方針でダメってとこはありますね。持ってくる家と持ってこない家でサービスが不公平になったらいけないとか、持ってくるのが定例化すると家族の負担になるとか。でも、持ってきちゃったものを完全拒否するのは見たことないかな」(介護職・千葉)

「菓子折りの力は偉大で嬉しいものです! ただ、時と場合で、今の状況(コロナが流行っている)で菓子折りを持ってくる人、こない人で態度が変わる介護者もどうかと思います」(介護職・九州)

「うちはグループ企業全体で禁止されているので本気で迷惑です。ご家族からでも100%返します」(介護職・福岡)

「絶対にもらわない派です。たかがお菓子なんですけど、施設側の姿勢として“もらえないルールだけど、持ってきてくれたし……”と(もらってしまうことは)、ルールより感情を優先するということを意味します。それは、言ってはいけない、やってはいけないとわかりながら、つい言っちゃう、やってしまうことが育つ風土になるんです」(ケアマネジャー・東京)

施設によっても、地域によっても考え方はずいぶん違うようです。ただ、みなさん共通して言っていたのが「菓子折りをもらう・もらわないで、対応変わることはないですよ」ということ。また、「感謝の気持ちは言葉で伝えてくれるほうがうれしい」とも。

不安も曖昧さも残るけど、決着すればそれでよし

こうした現場からの声もふまえて、改めて夫と菓子折りに関するルールについて話し合い、方針を整理しました。わたしたちとしては、これまで通り、「菓子折りがありか、なしか」は、病院や施設の個別のルールに従う。菓子折りに限った話ではないんですが、判断に迷ったときは「本気で迷惑」という声に耳を傾けたいと。それは、「他人さまに迷惑をかけたくない」という気持ちが人一倍強い義父母のキャラクターを考えると、ルールは裏読み禁止!で対応することが、義父母の意向に沿うのではないか、と考えています。

問題は、義姉に対する伝え方です。これ以上、きょうだいでLINEメッセージを重ねても、感情がこじれていくばかり。そこで、病院からの連絡事項をストレートに報告する形をとりました。

「物品送付は【病院から指示があった場合のみ送付可】と言われています。差し入れも含め物品は一切、送らないよう言われましたので厳守ください。家族から病院スタッフに対する差し入れも、手渡し・郵送問わず禁止です。新型肺炎感染予防のための厳戒態勢です。くれぐれもご理解のほど、どうぞよろしくお願いします」

義姉からはこんな返信がありました。
「物のやり取りについては、承知しました。お騒がせしました」

これにて一見落着! となるのか、ならないのか……。いずれにしても、もし“続き”があるとすれば、それは会ったときに顔を見ながら話そうと、夫婦で話し合って決めました。不安なことも、曖昧な部分も残っているけれど、いったんは決着がついたのでよし!とする。これも、介護を通じて学んだ対応手段のひとつです。

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