さよならアントニオ、追悼のホームベーカリー 認知症の母が喜ぶ毎日ごはん
撮影/百井謙子
フードライター大久保朱夏さんが、認知症のお母さんとの生活のなかで見いだしたレシピを紹介します。膝にしがみつく愛猫の温もりは、まるで焼きたてのパンのようでした。
※料理は普通食です。かむ力やのみ込みに配慮した介護食ではありません
愛猫アントニオが「99%がん」と言われ、抗がん剤治療を始めて3日後、動物病院に精密検査の結果が送られてきた。そこには「がんの所見は一切確認できない」と驚きの事実が書かれていた。すぐさま抗がん剤の投与は中止され、原因不明の腹膜炎で治療の手立てがないと言われ、その日のうちに退院。
アントニオが東京の自宅に戻ってからは、横浜の実家では母に週7日デイサービスに通ってもらい、介護保険の枠を超えて自費で夕食作りのホームヘルパーさんに来てもらって、日中はできるだけ長くアントニオと過ごす時間を作った。日々衰弱していくアントニオを置いて実家に帰りたくなかったが、どうにもならない。
一人にできない母がいることで、私は気を確かに持つことができたのだろう。母の前では明るくふるまい、冗談を言って気を紛らわすことができた。
アントニオは2週間ほど、点滴や腹水を抜く処置でがんばってくれ、亡くなる前日、力をふり絞って顎を上げ、私の膝にしがみついてきた。実家へ帰る頃にはほとんど反応しなくなり、明け方、夫に抱かれて事切れた。再び一緒に暮らせると思っていたが、もう叶わない。
アントニオが旅立ったのは、雲ひとつない青葉の美しい朝だった。実家で母をデイサービスに送り出してから、アントニオとお別れするために自宅に向かった。到着して、気持ちを落ち着けたかったのか、なぜか私はホームベーカリーでパンを焼いた。
スクランブルエッグとにんじんのサンドイッチ
カラフルな料理は、見るだけでエネルギーが湧いてきます。にんじんマリネとスクランブルエッグを挟んだボリュームのあるサンドイッチです。パンはマヨネーズの油分で食べやすくします。
材料 2人分
食パン 4枚
にんじん 1本(120g)
オリーブ油 小さじ1
塩 小さじ1/2
とき卵 3個
粉チーズ 小さじ2
バター 10g
マヨネーズ 大さじ2
作り方
- にんじんはせん切りにしてオリーブ油、塩で和えて10分ほどおく
- とき卵に粉チーズを加えて混ぜる
- フライパンを弱火で熱し、バターを溶かし、2を流し入れ、中火にして大きく混ぜて半熟のうちに火を止める
- パン1枚にマヨネーズを塗り、水けをかたく絞った1と、スクランブルエッグの半分をのせ、パンで挟む。残り2枚のパンも同様にし、皿を重石にして5分ほどおく
- 半分に切って皿にのせる