介護の裏ワザ、これってどうよ?

病院から深夜に呼び出されたらツタヤへGO?これって介護の裏技?

青山ゆずこです! 祖父母が認知症になり、ヤングケアラーとして7年間介護しました。壮絶な日々も独学の“ゆずこ流介護”で乗り切ったけれど、今思えばあれでよかったのか……? 専門家に解説してもらいました。

おねー作りすぎじゃ・・・※病院です。

病院からのSOS「今から来てください!」

ばーちゃんが庭で転んでしまい、念のため病院に行った時のことです。骨は特に問題がないとの結果でちょっと安心していたのですが、血液検査やCT検査をするうちに「深刻な貧血状態」ということが判明しました。
そういえば最近、手を握るとじんわり冷たかったような気も……。すぐに異変に気付けなかったことに罪悪感を感じつつ、輸血もかねて急きょ短期間入院することになりました。ばーちゃんが数日間滞在することになったのは一般病棟の4人部屋です。

処置はスムーズに進み、顔にも赤みが戻ってきたのでほっとひと息……するはずだったのですが! 「昼夜を問わず同じ病室の患者さんに突然声を荒げてしまう。どんなに止めても病院内を歩き回ってしまう。今から来てください!」と、看護師さんたちから深夜の呼び出し電話が頻繁にかかってくるようになったのです。

「貧血で少しの間だけ入院することになったの」「★日したら帰れるからね」と、いくら正論で説明しても、慣れない環境に戸惑ってしまっているばーちゃんには通じません。わたしも過去に入院した経験があり、夜中にふと目が覚めると、真っ白い壁やカーテン、慣れないにおいなどに一瞬「え!? ここはどこ!?」と、寝ぼけていたとはいえ戸惑ってしまったこともあるので、混乱してしまうばーちゃんの気持ちも分かります。
だからこそ、そんな時わたしたちにできるのは、言葉じゃなくて自分の体温を伝えること。ずっと手を握っていたり肩をさすったりすると、強張っていた顔にちょこっとだけ笑顔が戻るのです。

ばーちゃん、スマン。先にDVDレンタルさせてくれ

ゆずこは当時、超夜型人間だったので、夜中に原稿を書き上げた後に「24時間営業のレンタルビデオ屋さんに行こ~♪」と、よく夜の街を車でブラブラしていました。すると毎回のように絶妙なタイミングで電話が鳴ります。病院からの呼び出しです。

そしてレンタルしたDVDの袋をぶら下げながら「さすさすさす……」と背中を撫でるゆずこ。もはやミッドナイトルーチン(病院に向かう途中にビデオ屋さんがあるので、ちゃっかり先に借りてから病院に寄る)です。
もちろんこれは、呼び出された際にばーちゃんの状況を電話で聞いて、よほどの緊急性がなければの話。でもゆずこ的には、自分を追い詰めないためにもこれくらいのテキトーさがちょうどいいバランスでした。

母も何度か病院から呼び出されていて、ばーちゃんのベッドの隣に簡易ベッドを並べて寝泊りしていました。食堂や売店は早々に閉まってしまうので、暖かい食事はなかなか食べられません。しかもゆずこが住んでいたのはコンビニに行くにも車が必要な地域だったので、気軽に外食も出来ない。
そこで、たまたまヒマだったゆずこと妹が超大盛のミートソースパスタを作って、これまた超デカいタバスコと粉チーズまで用意して、母に夜食の差し入れをするために病院へGO!

看護師さんの許可をもらい、薄暗い談話コーナーでひたすらパスタをすする親子3人。傍から見れば少々怖い(?)シチュエーションかも知れませんが、母は「なんかこういうのも面白いわね(笑)」と割と気に入っていたような……。
あくまでもこれはゆずこたち家族の特殊な例。でも、真面目なことや本当は負担に感じていることも、適度に面白がれると自分たちの中に余裕が生まれるような気がします。そしてそれは、笑顔に繋がるという。ばーちゃんもそれを見てつられて笑う。
あら、すんばらしい。

わたしが病院にちょこちょこ行く(100%TSUTAYA経由)ことで、ばーちゃんは少しずつ落ち着きを取り戻しましたが、基本的に院内の移動は車いすがメインです。ずっと寝ているか車いす利用かだと、やはり筋力面が心配。
そこで、お見舞いに行くと必ず院内や庭を“手引き歩行”していたのですが、「大丈夫? ゆっくりでいいから歩こうね」「はい、イチニ、イチニ……」などばーちゃんの様子を伺いながら歩くことは一切しません。
体を支えることは支えますが、世間話やわたしの悩み相談をぶつけたり、とにかく病院ということを忘れて二人でもうめっちゃ話す。イメージは“下校時に話に夢中になって爆笑しまくる女子高生”のような感覚。……女子高生というのはおこがましいですが、誰かと話しながら歩いていると、結構な距離もあっという間に歩けてしまいますよね。

気分はJK(JK=女子高生)※イメージです。

切羽詰まったときこそ、適度な“テキトーさ”を!

症状の強弱はありますが、ゆずこのばーちゃんのように「入院すると心身ともに混乱して弱ってしまう」「認知症の症状が進んでしまう」のは、ご高齢の方が入院するにあたって家族としても心配なところです。
認知症や介護ストレスを専門とし、東大病院老年病科で物忘れ外来を担当している亀山祐美先生にお話しを聞きました。

「いつもと違う環境の中で、目が覚めるごとに『ここは家じゃない!』と驚いたり混乱してしまうと、どうしても気持ちや感情がついていくのは難しいですよね。そこで効果的なのが、慣れ親しんだご自宅の環境に近づけること。普段使っている時計やタオル、お人形や食器などを持ってきていただくこともあります。
また、入院中にある“お仕事”をお願いすることもあります。これはうちの病院の看護師のアイデアなのですが、患者さんに負担のない範囲でバスタオルなどを『一緒に畳んでもらっていいですか……?』と尋ねるのです。そして畳んでもらったら、ものすごく感謝をする。ぼ~っとする時間をなるべく減らして、役割と達成感を感じてもらいます。頼られるって、すごく大切なんですよ」

頼るといえば、病室でばーちゃんに「車いすを押すお仕事」をよくお願いしていました。ばーちゃんが押して、ゆずこが乗る。

バキバキの筋トレではなく、手押し車の要領で押すだけなのでそこまで負担はない(ハズ)。でも乗るのは体重(ピー)kgの巨漢、ゆずこ。ゆっくりとフロアをお散歩し、「めっちゃ楽しかった!」「ばーちゃん最高!」と褒めると、額に汗を浮かべながらちょっと得意げな顔をするんです。頼られて、感謝されることでやる気がむくむくっと起きてくるような。

お見舞いに行くたびに押してもらっていたので、ある看護師さんには「めっちゃ愛嬌がある鬼孫ですね(笑)」と言われていました。でもばーちゃんが途中で押すのに飽きると、いつの間にか放置して病室に帰ってしまうことも。そんな適当さも、また楽しい!

亀山祐美(かめやま・ゆみ)先生
東京大学医学部附属病院・老年病科助教。医学博士。認知症、老年医学、介護うつ、介護ストレスを専門とし、日本老年医学会、日本認知症学会、日本老年精神医学会、日本抗加齢医学会などの専門医を務める。2003年より東大病院老年病科で物忘れ外来を担当。『不安を和らげる 家族の認知症ケアがわかる本』(西当東社)を監修。

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