お悩み相談室

自宅介護する母が認知症の父に暴言 施設を勧めるが…【お悩み相談室】

居宅介護支援(ケアマネジャー)の市川裕太さんが、介護経験を生かして、認知症の様々な悩みに答えます。

Q.認知症の父(78歳)を母(76歳)が介護しているのですが、たまに様子を見に帰ると、母が父に対して上から目線で暴言を吐いているので、父がかわいそうです。母もストレスから暴言を吐いてしまうのだと思うので、お互いのためにも父は施設に入所したほうがいいと思うのですが、母は「自分が元気なうちは面倒を見る」と言って反対します。(52歳・女性)

A.お母様は何(どのようなこと)に対して「暴言」は吐いているのでしょうか。例えば、同じことを何度も聞かれて「さっきも言ったでしょ」ときつく叱ってしまったり、食事をしたばかりなのに「ごはんまだ?」と言われて「食べたばかりでしょ」と怒ってしまったりするのでしょうか。認知症介護では本人の記憶の欠落に対してストレスを感じることが、多く見受けられます。あるいは認知症のことを頭では理解していても、長い時間を共に過ごしてきたからこそ、これまでと違うお父様を受入れられない、受け入れがたいというお気持ちがあるのかもしれません。認知症は記憶の欠落が多く見受けられますが、記憶が失われることは家族にとっても非常に辛いのです。なんとか思い出せるのではないかと思い、必死で問い詰めてしまうこともあると思います。また、お母様は介護する生活が中心となり、ほかのやりたいこと、やらなければならないことが犠牲になって、ストレスも大きいはずです。「元気なうちは面倒を見る」と言っている責任感の強いお母様ですから、誰にも話せずに我慢していることもあるのだと思います。

一方のお父様はどうでしょう。暴言を吐かれるのはつらいでしょうし、自尊心が傷ついて気持ちも沈みます。また、認知症で理解力が低下している状態だと、なぜそう言われたのか、あるいはなぜ妻が怒っているのかが、わからない場合もあります。さらにこうしたことが続くと、お父様が知っているお母様は怒るはずはないので、今の怒っているお母様の姿と自分の知っているお母様の姿が一致しなくなる場合も出てきます。場合によっては「知らない人」と感じてしまうこともあります。そうなると急に他人行儀に敬語で話をしたりすることもあり、お母様のストレスは余計に大きくなるかもしれません。さらにはストレス以外にもショックを受けたり、悲観して気持ちが不安定になったりする可能性もあります。その反動がお父様に向けられると、お父様も危険な状態になる可能性があります。認知症は脳の状態が変化して正常な状態が保てなくなります。お父様の変化にストレートに対応しようとしてかえって心が折れてしまう可能性も少なくありません。そうなる前に何らかの支援が必要なタイミングといえます。

こうした状況の場合には、まずは第三者である専門職に、現状のお二人の暮らしを見てもらうことをおすすめします。お母様が元気なうちは面倒を見たいと思っている理由、どうして暴言を吐いてしまうのか、そこを受け止めつつどんなことにストレスを感じているのか。お母様も話をすることで気持ちが楽になることもあります。また、家族の力が大きいのは確かですが、家族だけでは介護が続けられないことを第三者側から話してもらうのも一つです。家族介護をサポートする専門職の「相談会」や家族介護者が集まる「家族会」なども地域で開催されています。すでに何らかの介護保険サービスを利用しているのであればケアマネジャーに、まだ利用していなければお近くの地域包括支援センターに相談してみてください。状況を見てもらってお母様がどんなことにストレスを感じているのかがわかると、それをできるだけ解消するような提案も受けられると思います。

施設入所ももちろん選択肢の一つですが、生活の場を変えることはお父様とって大きな環境の変化となり、認知症が進行する場合もあります。それ以外にもデイサービスやショートステイを利用することで、お母様は自分の時間をもてて、心の余裕ができればお父様に暴言を吐くことはなくなる可能性も考えられます。状況に合わせて介護のやり方を変えていくことは介護と長く付き合う方法の一つです。

介護を長く続けるには、介護をしながらも介護者自身が自分らしくいることが必要だと思います。自分を見失わないように介護をすることも必要ですし、それは決して悪いことではありません。たまには息抜きも必要ですし、気持ちのゆとりはお父様の生活にも影響すると思います。

【まとめ】認知症の父に対する母の暴言をなくすには

  • 暴言を吐く要因はどんなところにあるかを理解する
  • 専門職である第三者に今の夫婦の生活を見てもらう、また、介護の思いや苦労を第三者に話す
  • お母様がお母様らしくいられる時間をつくるために、介護保険などのサービスを利用する

あわせて読みたい

この記事をシェアする

この連載について