画面越しの面会に「あの施設、感染者出た?」 つきささる世間の目
《介護士でマンガ家の、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》
僕が勤務する高齢者施設で、
対面の面会が中止されてから、もう一年が過ぎた。
でも心の奥では、変わらず、ずっと、
もう一人の自分が叫んでいる。
「本当に、家族が画面越しなんかでいいのか?」
「あの施設、感染者、出したのかな?」
心ない誰かの声が聞こえてきた。
どの入居者さんにも直接、家族と会わせてあげたい。
あの僕の心の叫びは傷つけられ、しぼんでいく。
SNSに、消えそうな僕の思いを書き込んだ。
ウザイ、って思われるかもしれない。
でもこれが、今、高齢者を支える僕の叫び。
先日、高齢者施設で働く友人から、メールがありました。
「なにも事情を知らない人から、感染者はいるのか、とか、職員にはうつったのか、と聞かれる。心が潰されてしまいそうだ」
私は、はっ、としました。
情けないことに、私自身、同じことを介護士さんに聞いたことがあったからです。
なんて、傲慢な第三者なのか。
私はそれを口に出すのも恥ずかしく、友人に打ち明けることができませんでした。
コロナ下の今、現場の介護士さん達に、
なにができるのか、またなにをしないほうがいいのか、考えている方も多いと思います。
それには私のように、自分勝手に聞きたいことを聞くのではなく、
介護士さんたちから発せられる思いに、耳を傾ける必要がありそうです。
共に考えれば、なにかひとつでもやれることが、私たちに見つかるはずです。
そして、介護士をされている方には、
可能なかぎり素直な思いを聞かせて頂けたら、と願っています。
人ひとりの心からの叫びには、誰かの心を動かす、確かな力があるのだから。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》