気取らず、遠慮せず、素直な気持ちを殴り書く 私の介護ストレス解消法
《介護福祉士でイラストレーターの、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》

今日も、家族のトイレ介助からはじまる朝。
僕は決める。
今日も幸せな1日にするぞって。
周りから見たら、きっと僕はポジティブな人間。
でも、僕を支えているのは、
前向きな気持ちだけじゃない。

これは、僕のノート。
「なんでここでおしっこするんだよ」
「もういっそ、全部わからなくなって、
リハビリパンツにしてくれたほうが楽」
「ふざけるな!」
そんな、誰にも見せられない気持ちも、僕はぜんぶノートに書きだす。
「ここに安心して書き出していいよ。
お疲れさま、よくやってるね」
そうやって、自分に語りかける。
どんな気持ちも受けとめてあげるんだ。

ほら、お天道様も、
僕のこんな健気(けなげ)さを、ほほ笑んで見守ってくれている。
いきいきと介護するために。
今日も、僕は僕自身のいちばんの味方でいる。
ノートに、胸にためたことを
そのまま正直に書き出してみる。
ポイントは、気取らず、遠慮せず、
子どもみたいに素直な言葉で書くこと。
この単純な方法が、色々試した末に、
私にとってはいちばんの介護ストレス解消法となりました。
ネガティブな感情は、ためこまず書き出すと、それ以上ふくらみにくくなる。
しかも、相手にぶつけにくくなるという利点もあるようです。
この方法を友人に勧めたとき、
「本当の自分はひどいやつだから、書いて目の当たりにするのが怖い」
と言われたことがありました。
たしかに、介護をしていると
「私はこんなに性根の悪い人間だったのか」
と、自分の未熟さに打ちのめされることがあります。
でも、怖がる必要は一切ありません。
なぜなら私たちは、誰もが未熟な人間です。
それでも毎日、誰もが自分なりに歩き続け、
大切な誰かの介護に手を尽くそうとさえする、健気な存在です。
だから、もし心が苦しくなったら、
ノートを開いて、ありのままの気持ちを書き出してほしいのです。
そして、
「よくやってるね」
はじめは気持ちが込められなくてもいい。
言葉だけでも、存分にねぎらってあげてください。
介護する人自身が、どんな自分であっても
最大の味方でいられたなら、
介護される人にとっても、
幸せな毎日が待っているのですから。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》
