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認知症の父がマスク拒否でデイ出禁になりそうです【お悩み相談室】

看護師の石橋さつきさんが、介護・支援活動を生かして、認知症の様々な悩みに答えます。

Q.認知症の父(80歳)と同居しているのですが、平日はデイサービスに通っています。通所する際は、マスクを着用するように言われていますが、父がマスク着用を嫌がり、困っています。先日はとうとうスタッフから「マスクができないなら通所は控えてほしい」と言われてしまいました。どうすればマスクをしてくれるでしょうか。(52歳・男性)

A.相談者が困っているように、認知症の方にマスクを常時つけてもらうのは、とても難しいことです。特に新型コロナウイルスのことを理解できていないと、マスクを着用する意味もわからず、嫌がることは多いと思います。たとえ理解して最初は着用していても、つけている理由を忘れてしまったり、違和感が出てきたりして、途中で外してしまうのはよくあることです。

まずはお父さんがマスクを嫌がる理由を確認できるといいですね。一度つけたマスクを外そうとするときなどに「うっとうしい」「苦しい」など言葉を発しているかもしれないので、施設のスタッフにも聞いてみるといいでしょう。肌触りや見た目などの問題であれば、マスクの素材や種類などを変えて、いろいろと試してみると、解決することもあるかもしれません。

「なぜ着用するのかわからない」「通常とは違うことを受け入れられない」といったケースであれば、本人がこれまで何か新しいことを受け入れるときに、どんなことをすると受け入れやすかったのかを思い返してはいかがでしょうか。そして、その方法をとり入れてみてください。お父さんのことをよく知るデイサービスのスタッフにも確認するといいでしょう。初めてデイサービスに行ったとき、初めてデイサービスで食事をしたときなど、さまざまな場面を思い返してみるといいと思います。例えば、私が関わった中では、書類で通達すると受け入れてもらいやすいという方がいました。会社勤めが長かった方などは、こうした傾向があるようです。

私が関わっているデイサービスでは、認知症の方はマスクを嫌がるという前提で、無理にマスクをつけさせることはせず、ほかの感染対策を徹底させるようにしています。手洗い、消毒、会話をするときのイスの配置、間仕切りの設置など、スタッフの作業が増えて大変ではあります。ただ無理強いしたり、何度もマスクを着用するように説得したりしていると、それが認知症の方のストレスになり、BPSD(行動・心理症状)が出てしまう可能性があるのです。

マスク着用など感染対策のルールは、施設によってさまざまです。ケアマネジャーに相談して施設を変えるのも1つの方法ではありますが、できれば環境は変えたくないですよね。息苦しいなど、マスクを着用できない理由次第では、施設側も着用しないことを受け入れてくれるかもしれません。施設のスタッフとご家族で一緒に、解決策を考えられるといいですね。

【まとめ】認知症の父がマスク着用を嫌がり、デイサービスから通所を控えてほしいと言われたときには?

  • マスクを嫌がる理由を確認する
  • これまで新しいことを受け入れるときに受け入れやすかった方法を、デイサービスのスタッフにリサーチしつつ振り返り、その方法をとり入れてみる

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