「近所の人にネックレスを盗まれた」と母 認知症が心配 【お悩み相談室】
構成/中寺暁子

認知症介護指導者の久保圭司さんが、認知症の様々な悩みに答えます。
Q.隣県で父と暮らす母(80代)から電話がかかってきて「近所の人がパールのネックレスを勝手に持って行ったから取り返して」と言われました。「そんなことあるわけない」と相手にしないでいると自分で取りに行ってトラブルになったようです。母はボケてしまったのでしょうか。混乱しています(50代・女性)
A.確かに認知症になると「もの盗られ妄想」といって、お財布など大事なモノをどこに置いたのかを忘れてしまい、「誰かが盗った」と思いこんでしまうことがあります。このため相談者が混乱するのもわかりますが、このエピソードだけで認知症とはいえないと思います。お母さんは80代ということなので、年齢的にも心身の変化が出てきているのかもしれません。何かしらの原因によって生活に支障が出てきていて、不安から妄想がふくらんだことも考えられます。
気になるのが、お母さんが隣県に暮らす相談者に「取り返して」と言っていることです。通常であればまず、一緒に暮らしているお父さんに相談するはずです。相談したけれど相手にしてもらえなかったのか、あるいはお父さんが相談できるような状態ではなくなっているということも考えられます。お父さんとの2人の生活にストレスがあり、それが被害妄想につながっている可能性もありますし、お母さん自身のミスが続いて自分を守るために誰かを疑っているのかもしれません。人間関係でトラブルがあり、人への不信感が妄想の原因になるということもあります。
不安を感じているなかで娘である相談者にも相手にしてもらえないとなると、お母さんは余計に孤立し、不安がつのることが考えられます。まずはお母さんの訴えを受け止めて、可能であればネックレスを一緒に探してあげられるといいですね。実家に帰ることが難しければ、「たんすを探してみた?」「大事なものはどこに置くか決めておいたら?」などアドバイスをするだけでもいいと思います。
お父さんと2人の生活で、地域での交流もないとなると心配です。地域のサービスを利用して、日ごろから外部とつながりをもつことも大事です。また、脳梗塞による認知症など、脳の変化による症状である可能性もあるので、かかりつけ医などにも相談できるといいですね。
今回のことは、お父さんとの生活に問題が起きていないかを確認するいい機会だと思います。これまで以上にこまめに連絡をとり、時間があるときには一度帰省し、家の様子なども気にかけてほしいと思います。
【まとめ】「近所の人がネックレスを勝手に持って行った」という母。家族ができることは?
- お母さん、あるいはお父さんの変化により生活に支障が出ていて、不安感から妄想が出ている可能性もある
- まずはお母さんの訴えを受け止め、ネックレスを一緒に探したり、難しければ電話でアドバイスをしたりする
- 2人暮らしに問題が起きていないかを確認するために、こまめに連絡をとり、時間があるときに帰省して家の様子を気にかける
≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました≫
