心に戦火を残す人たち 言葉に耳を澄まし、声なき涙を見つめる夏
《介護士でマンガ家の、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》
八月。あなたは一人、テレビから離れる。この時期に流れる戦争番組に、記憶が揺さぶられないように。
それでもあなたは、一人泣く。多くは言葉にできず「可哀想」と口にするのが精一杯。いまだ戦火は、あなたの中に。
あなたの去った、八月です。あなたが生涯持ち続けた、命へのいたわりが、今もそっと漂っています。
とつとつと、断片的に。
よく耳を澄ませていないと、聞き逃しそうな語り口で、時には無言の涙で、
高齢の方々は、戦争体験を語ってくださいます。
皆さまの、血肉から出るような言葉を聞く時、私は返す言葉もなく、立ち尽くすしかありませんでした。
「高齢者から、戦争体験を聞くこと」
それは、知識や道徳だけでは辿り着けない、
命の大切さや、ただ生きることの価値を、
体温で知る行為なのだと思います。
今年もまた、平和を共に願う、
夏がやってきました。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》