ひた隠しにしていた「家族の秘密」 打ち明けたのには理由がありました
《介護士でマンガ家の、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》

美佐子さんは、父・隆さんの症状を、友人へ打ち明けた。それまでは、他人に迷惑をかけてはならないと、ひた隠しにしていたのだ。

けれど、父親の徘徊が始まり、美佐子さんは途方に暮れた。しかし同時に、隆さんを保護してくれた警察官の笑顔に、人を頼ってもいいと感じはじめた。

少しずつ、隆さんの症状を知る人が、町に増えた。隆さんは、前よりも穏やかな心地で、歩いている。
認知症のある高齢者が、徘徊で行方知らずになった時の恐怖は、何年たっても忘れることができません。
無事、ご本人が戻られた当時は「もう、こんな目にあわせるものか」とGPS対応を強化したり、日に何度も電話で居場所確認をするなど、あらゆる対策を行いました。
しかし、本人はそれでどんなに窮屈な思いをしたことでしょう。
本人を大切に思うがゆえに「見守り」が「監視」になってしまったのです。
今思えば、私たちにできた一番のことは、ご近所への声かけでした。
本人が毎日行くお店で、一声かけてもらうなどのサポートは、非常に有用です。
「うちの○○は、認知症で…」と打ち明けるのはご家族にとって、勇気がいることです。
だからこそ、それを耳にしたときは、そっと見守りの一人となりたいものです。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》
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