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強引に入所させた父が職員に暴言 面会する勇気が出ない【お悩み相談室】

車いすに乗ってうなだれるひと、Getty Images
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認知症介護指導者の落川晃央さんが、高齢者や介護の様々な悩みに答えます。

 Q.認知症の父(70代)を在宅でみてきましたが、心身ともに限界となり、かなり強引にグループホームに入居させました。入居後も落ち着かないようで、スタッフに暴言を吐いているようです。怖くて一度も面会に行けていませんが、父のことが常に頭から離れません(40代・男性)

A.「父のことが常に頭から離れない」という言葉から、お父さんを心配する気持ち、お父さんへの罪悪感など、相談者の複雑な思いが伝わってきます。

施設への入居に関して、本人の意思を尊重するのは大事なことですが、家族の苦労を考えるとそうもいかないケースもあり、相談者も苦渋の決断だったことでしょう。後悔しても仕方がないので、これから先のことを考えてほしいと思います。

あくまで私の推察ですが、お父さんがグループホームでスタッフに暴言を吐いているのは、息子が一度も会いにきていないことに、原因があるのかもしれません。お父さんの「息子は自分を施設に入れっぱなしで知らん顔をしている」といった思いが、スタッフへの暴言につながっているのではないでしょうか。

大事なのは、やはりお父さんと会話をすることだと思います。もちろん会ったときに怒られる可能性はありますが、強引に入居させたとのことなので、ある程度は覚悟しなければならないことです。

会いに行く勇気が出ないということであれば、まずは手紙を書いて今の気持ちを伝えるのはいかがでしょうか。強引に入居させて申し訳ないという気持ちを素直に伝えてもいいと思います。お父さんの認知症の程度によって自分で手紙を読むのが難しければ、スタッフに代読してもらったり、スタッフを通して気持ちを伝えてもらったりする方法もあります。

必ずしもグループホームで面会する必要はなく、ほかの場所で会ってもいいですし、お父さんが一時帰宅するのでもいいと思います。よく入居者のご家族は「やっとの思いで入居したのに一時帰宅をすると里心がつくのではないか」と心配されるのですが、意外とそういったケースは経験していません。

息子に会ったり、一時帰宅したりして家とのつながりを感じられると、お父さんの気持ちは落ち着いてくるかもしれません。暴言を吐かなくなれば、介護をするスタッフにとってもいいことなので、協力してもらって、少しずつお父さんとの距離を近づけていけるといいですね。

特養に勤務していて日々実感するのは、どんなに一生懸命にケアしても、スタッフはご家族にはかなわないということです。ご家族が面会に来ると、利用者の方たちは私たちスタッフには見せないような笑顔を見せます。お父さんも同じだと思いますので、ぜひ勇気を出してほしいと思います。

【まとめ】グループホームに強引に入居させた認知症の父がスタッフに暴言。怖くて一度も面会に行けないときには?

  • スタッフに暴言を吐いているのは息子が面会に来ないことが原因かもしれないので、怒られるのを覚悟で会いに行く
  • 会いに行く勇気が出なければ、まずは手紙を書く、あるいはスタッフに思いを伝えてもらう
  • グループホーム以外の場所や自宅で会う方法もある

 

 

≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました≫

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