認知症とともにあるウェブメディア

五十路娘 母の住まい探しに迷走中!

出てくる出てくる…親の家じまいで気づいたお年寄りに渡すと危険な手土産

片づけられた荷物がどんどん散らかされていく・・・「あーこの写真!」「旅行のときや」『楽しそうだからよしとしよう』

いつかはやってくると思いつつ、ついつい先送りしてしまう親の介護の準備。関西在住のイラストレーター&ライターのあま子さんもそんな一人。これまで一人暮らしを続けていた母が、2022年正月早々に転倒し、骨折→入院という経緯で認知症を発症。姉と兄による“介護押しつけバトル”を経て、いったん母は首都圏に住む兄一家のところで暮らすことになったのですが、あっという間に関西に戻ってくることになりました。再び、母の住まい探しが始まりました。今回は、「母のマンションじまい」のお話です。

前回、神戸の実家じまいの話をしました。今回は、母が一人暮らしをしていたA市の賃貸マンションを引き払ったときの話をしたいと思います。
2022年。母が、首都圏で暮らす兄宅で暮らしはじめて約3カ月たったころの話です。今後、関西へ戻るにしても、元のマンションで母が一人暮らしするのは難しいというのが兄姉の一致した意見でした。ホーム入居はお金がかかるし、住む人もない部屋を借り続け、家賃や光熱費を払い続けるのはもったいない。母と電話で何度か話し合い、新たな母の住まい(老人ホーム)が決まる前に、マンションを引き払うという方針が決まりました。

登場人物【あま子】アラフィフのライター&イラストレーター。関西で夫と2人暮らし。優柔不断な性格。【母さん】91歳。要介護3。娘2人の世話で1人暮らしをしていたが…性格はマイペース。【カン太】あま子の夫。突然の施設探しに右往左往するあま子のよき協力者。【カラ美】あま子の6歳上の姉。気の強いしっかり者。兄とは犬猿の仲。3児の母。【ツヨシ】あま子の3歳上の兄。首都圏在住。小さいころからオレ様気質。3児の父。※年齢は施設探しを始めた2022年当時のもの
登場人物

2023年のお正月過ぎに兄一家と母が、母のマンションの荷物整理のため、関西にやってきました。ひさしぶりに会う母は、道中の疲れも見えず元気そうで、私もホッ。ただ、認知症は進んでいて、同じ話を繰り返す頻度は高まっていました。
母は久しぶりのわが家(マンション)でくつろぎ、お墓参りに出かけたり、叔父や叔母が会いに来てくれたりして、大満足の様子。その代わり、荷物の片づけはほったらかしでした。母によると「とくに必要なものはない」とのこと。荷物整理に時間を割くより、妹弟とおしゃべりしたり、大勢で食事したりするほうが、よほど大切だったのでしょう。数日の滞在のあと、母は兄一家と再び関東へ。関西に戻ることが決まっているので悲壮感はなく、笑顔で別れを告げたのでした。

またもやため込む不要物

母がマンションの荷物整理をせずに関東へ戻ってしまったため、結局、私が母のマンションじまいをすることになりました。
私にとって、家じまいは2度目。前回と違うのは、新居は老人ホームになるため、荷物のほとんどを処分しなくてはいけないことです。
7年前の実家じまいで学んだことは「今後必要になるもの」を最初に集めるのがスムーズな片づけのコツということ。ところが、今回は、母の新居が決まっていないため、何がいるのかわかりません。この時までに10件近く老人ホームなどを見学しましたが、施設によって必要なもの、持ち込み可能なものはさまざまなのです。小型家具、仏壇、寝具、テレビ、冷蔵庫、空気清浄機、敷物…。キープしておくほうがいいものと、季節の衣類など必ず必要なものを集めると、けっこうなボリュームになりました。
ウチの狭いマンションに全て入れるのは不可能なので、姉と兄にも預かってもらうことにしました。2人ともウチよりよほど広い家に住み、子どもが独立して空いた部屋もあります。姉兄からは、あれこれ文句を言われましたが、荷物があるのは一時のことだし、姉兄は片づけにほぼノータッチ。この件については、私も折れませんでした。

ある程度整理できたら、つぎは母には必要なくても「使えるもの」を集めます。たとえば洗剤やゴミ袋などの生活日用品。一人暮らしの日用品の量などたかが知れていると思われるでしょうが、実際はかなりの量になりました。マンションは3LDKで、スペースに余裕があったため、母は買っては忘れて買いなおし、様々な物をあちこちにしまい込んでいたのです。たとえばカイロは、30個入りの箱が20箱以上あったうえ、バラのカイロも数十個。買い物用袋や保存用袋はサイズ違いで何袋も出てきました。紙パンツなどの大物や、食料品などは、私もこまめにチェックしていたので、カイロや買い物袋といった小物くらいですんだのだと思います。そのほか、大量の日用品や食器類、衣服、カバンなどは1部屋に集めておいて、姉兄やめいに欲しいものを持って行ってもらいました。

最後に残るのは不用品です。「なんぼほど出てくるねん!」と思ったのはお菓子などが入っていた缶と空き箱。実家じまいのときも大量にあって辟易(へきえき)したので、マンションでは目を光らしていたはずなのに…。大きな紙袋5袋以上になりました。お年寄りへの手土産にキレイな箱のお菓子はキケン。絶対ためこむ(泣)。
神戸の実家から持ってきたまま開けることのなかった段ボールは、中身の確認をしたのち、ほとんど処分しました。一度にゴミ出しをすることはできないので、何回かマンションに通うことになりましたが、前回に比べると家が近いし、大物が少ない分、断然ラクでした。

お年寄りあるある 同じようなモノをめちゃくちゃためこんでいる 気をつけていたはずなのに・・・ ごっちゃり

さて、賃貸で不安だったのが、退去の際は「部屋を借りたときの状態に戻す」という原状回復ルールです。気をつけて暮らしていても、壁に傷やシミ、床のへこみなどはありました。風呂の換気が悪く、タイルにカビも生えていました。ネットでは「敷金は返ってこない」どころか「清掃代を要求された」といった怖い書き込みも多くありました。自分で掃除をしても限界があり、プロに頼むことも考えましたが、夫には「そこまでしなくていいんじゃない」と言われました。
退去前に、管理会社の人に相談してみると、すぐに社長さんが来てくれることになりました。部屋を見てもらい、気になる箇所を伝えました。借りる前からあった汚れやシミは、写真に撮っておいたものの、当時の画像が見つからず、口頭で説明しました。クリーニングが必要か尋ねたところ「このままで大丈夫です」との返事。全てリフォームすることになっているとのこと。相談してよかった!

最後は不用品回収の業者にまとめて処分を依頼。4社で見積もりを取った結果、実家じまいのときと同じ会社に決めました。担当者さんが同じで心やすかったのと、リピーター割引をしてもらえたからです。エアコンなど使えそうなものは買い取ってくれました。当日は、前回同様めちゃくちゃ手際よく片付けてもらい、私と夫は邪魔しないようリビングで見守るのみでした。

【感想&後日談】

 部屋がきれいになったあと、管理会社さんにきてもらいました。部屋を一緒に確認して、カギを返却して母が約10年間住んだマンションの退去が完了。さみしい気持ちもありましたが、高齢の母が事故を起こしたり、孤独死したりすることもなく、無事に部屋を返せた安堵(あんど)の気持ちが一番でした。
そして、気になるマンションの敷金の返却額は…? ネットでは、ほとんど返ってこないとの体験談が多かったので、まったく期待はしていませんでしたが、数日後に振り込まれた額を見て仰天。なんと全額戻ってきました!古いマンションで不便も多々ありましたが、最後にいいことありました。リフォーム万歳! 大家さん、管理会社さん、ありがとうございました。

あわせて読みたい

この記事をシェアする

この連載について

認知症とともにあるウェブメディア