高齢の母を呼び寄せたら、私の家事に文句ばかり 同居を後悔【お悩み相談室】
構成/中寺暁子
認知症介護指導者の落川晃央さんが、高齢者や介護の様々な悩みに答えます。
Q.一人暮らしの母(70代)の腰痛が悪化して料理や入浴が難しくなったので、私の自宅に呼び寄せて同居をスタートさせました。母は料理など私の家事に文句をいう、夫は手伝ってくれない、私のイライラはマックスで同居を後悔しています(50代・女性)
A.お母さんからみると、相談者は何歳になっても自分の子どもです。相談者のやることが気になって、つい口を出してしまうのでしょうね。そんなお母さんの気持ちをくみとれると少しはイライラが落ち着くかもしれませんが、毎日のこととなるとやはり大変だと思います。
同居をするうえで大事なのは、役割分担を明確にするなど、ルールをつくることです。お母さんや夫と一緒に、家事の役割分担を決めて、自分の担当以外のことは口を出さないと決めるのです。さらにルールの中に加えてほしいのが、“アサーティブ・コミュニケーション”です。これはどちらか一方だけが言いたいことを我慢するのではなく、相手の意見を尊重しつつ、自分の意見も伝えるというコミュニケーションのことを言います。家族といっても価値観はそれぞれなので、お母さんに何か言われたら「お母さんはそう思うんだね。私はこう思うよ」というように、相手の意見を否定せずに、自分の意見も主張できるようになると、ストレスは軽減するのではないでしょうか。アサーティブなやりとりができると、これまで気づけなかったお母さんや夫の思いを知ることもできるかもしれません。
もう1つおすすめなのが、“先手を打つ”ことです。お母さんに対して感謝できる部分を見つけて、その気持ちを伝えるのです。「ありがとう」と言われてイヤな人はあまりいないと思います。感謝の言葉を伝えられたあとに、文句を言おうという気にはならないと思いますし、相談者に対しての言葉遣いもやわらかくなるのではないでしょうか。
お互いの意見を尊重した話し合いのなかで、お母さんのほうにも同居を解消したい、施設に入りたいという希望が出てきたら、それも選択肢の1つとして考えてもいいと思います。
お母さんに同居を続けたいという意思があるのなら、ルールづくりやコミュニケーションの工夫によって、お互いにストレスなく過ごせるようになるといいですね。長い人生の中でお母さんと一緒に暮らせるのは、ほんのいっときです。お母さんと過ごした大変な時間も人生の一部と考えて、かけがえのない時間を大事に過ごしてほしいと思います。
【まとめ】家事に文句を言う母、手伝わない夫。同居を後悔しているときには?
- 家族で役割分担を明確にして、自分の担当以外のことには口を出さないというルールをつくる
- 相手の意見を尊重したうえで、自分の意見も伝える“アサーティブ・コミュニケーション”を意識する
- お母さんに文句を言われる前に、感謝を伝える
≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました≫