骨折の母に代わり家事をする父 怒られてばかりで可哀想【お悩み相談室】
構成/中寺暁子
認知症介護指導者の椎名淳一さんが、高齢者や介護の様々な悩みに答えます。
Q.70代の両親は2人暮らし。母が骨折してほぼ動けない状態になり、ほとんど家事をやってこなかった父が家事をすることに。母の指示に従ってやりますが、高齢で不慣れなこともあり、うまくできず、母にいつも怒られています。このままでは父がかわいそうです(40代・女性)
A.お父さんは高齢になって慣れない家事をやらざるをえなくなり、ストレスを抱えていると思います。一方お母さんも自分がやればスムーズにいくのにそれがかなわず、うまくできないお父さんを見ているとイライラして、つい、きつい口調になってしまうのでしょうね。
ただ、視点を変えてみると、お父さんは家庭の中で家事をするという、新たな役割を担うようになったといえます。慣れずにうまくいかないこともあると思いますが、まだ70代なので続けるうちに、よりスムーズにできるようになるかもしれませんね。お母さんも骨折しているので今は動けないかもしれませんが、まだ若いですし、リハビリ次第で動けるようになる可能性があると思います。骨折する前までは家事のほとんどをお母さんが担っていたようですが、治ったあともお父さんと家事を分担すれば、お母さんの負担は軽くなるのではないでしょうか。
家族のかたちは、状況によって変化していくものです。今回のお母さんの骨折を家族再編成の機会と捉えると、お父さん、お母さん、相談者自身もポジティブな気持ちになれるのではないでしょうか。相談者からお母さんに「お父さんが家事をできるようになったから、骨折が治ったあとも一緒にできてお母さんラクになるね」といった声がけをするといいと思います。お母さんも、自分の役割を一時的にお父さんにやってもらうと考えるのと、今後も一緒にやっていくと考えるのとでは、気持ちも変わってきて、お父さんに対する口調も和らぐかもしれません。
もちろん、お父さんの今のストレスに対するケアも必要です。介護保険サービスを利用できる部分は使って、お父さんの負担を軽くしてほしいと思います。お母さんが動けない状態での2人だけの生活はストレスがたまると思うので、お母さんにデイサービスやデイケアに行ってもらう、可能であればたまに相談者が実家に帰ってお父さんにリフレッシュのために出かけてもらうなど、夫婦が離れる時間をつくることも大事です。
相談者からはお父さんに対して、ぜひ労いの言葉をかけてほしいと思います。きっとお父さんの力になるはずです。
【まとめ】母が骨折して不慣れな家事をする父。いつも母に怒られていて父がかわいそうなときには?
- これを機にお父さんが家事をできるようになれば、骨折が治ったあとも夫婦で家事の分担ができてお母さんの負担は軽くなるはず。家族を再編成するよい機会だと捉える
- 介護保険サービスを利用して、お父さんの負担を軽減するほか、夫婦が離れて過ごす時間をつくる
≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました≫