移乗中の母の尻もち ブレーキ掛けた車いすがなぜ動く?原因探り見事に解決!
タレント、アナウンサーとして活躍する“コマタエ”こと駒村多恵さんが、要介護5の実母との2人暮らしをつづります。ポジティブで明るいその考え方が、本人は無意識であるところに暮らしのヒントがあるようです。移乗が上手くいかず、床に尻もちをついてしまった母親。その原因は、移乗中に車いすが後退してしまうことにあるようです。どうしたら車いすが動かなくなるのでしょうか。解決を試みた時のお話です。
車いすが動くのをどう防ぐ?
失敗の理由は何だろう。母を車いすからベッドへ移乗する際、母が床に尻もちをついたのは2度目。改めて理由を考えました。今回は、以前より気をつけていた自負もあります。私の介助方法だけでなく、他にも問題があるのではないか。鍼の先生が、「最近、移乗の時に車いすが動く」とおっしゃっていたのも気になっていました。
室内用車いすはオーダーメイドなので、レンタル品のように定期点検はありません。なんとなくアフターケアは本来業務ではないような気がして、見に来ていただくのは気が引けていたのですが、相談すると、1週間後、来てくださいました。
まずはタイヤをチェック。空気が抜けている様子はありません。続いてブレーキ。ブレーキをかけていても動いてしまうことがネックでしたが、こちらも不具合はありませんでした。であれば?
「うーん、どうしてもフローリングは滑るんですよね」
床の問題!?床を変えるのは、簡易的に何かを敷くにしても大がかりになります。
「まずは、ブレーキの位置をタイヤに近づけましょう」
ブレーキのかかり方が少し良くなるかもしれないと調整したのですが、移乗の動きをしてみると、車輪が回転しない状態でスライド。滑っていきました。
更に車いすを観察します。
「あとは…タイヤの凸凹が摩擦ですり減って、なくなってきていますね」
これは使っていたら仕方がないことですが、タイヤを交換する手はあると。ただ、交換したとて滑らなくなる保障はないという見解でした。
二の足を踏むな…。
「その前に、タイヤの下に滑り止めを敷いてみたらどうでしょう? 100円ショップで売っているような滑り止め」
ちょうど家にあったので、後輪の下に敷いてみます。しかし、
「…やっぱり動きますね」
これもダメ。手詰まりに肩を落としたその時、ベッドの方から声が。
「問題は前輪なんですよ」
ちょうど訪問診療に来ていた鍼の先生が、ベッド上で母に治療を施しながら、前輪が回転しない状態で動くので、ブレーキがかかる後輪よりも、前輪を何とかしたほうがよいのではないかとアイデアをくれました。
早速、前輪の下に滑り止めを敷いてみます。ところが、残念ながら効果なし。やはり、車輪が回転しないまま後ろに下がりました。
「であれば、車輪の下にストッパーみたいなものをはめるといいんじゃないですか?」
今度は福祉用具会社の方がアイデアを出します。
それは、台車を置くとき、動かないようにそれぞれの車輪を固定するためのアイテムとのこと。その場ですぐ検索し、検索結果をみんなでのぞきながらスクロール。
「あ、それです!」福祉用具会社の方が指さした、それらしきものの画像から、発注画面へ進みます。
「サイズが3つあるみたいですが?」
「推奨直径だとLに当てはまるけど、Mでもいける気がするなー。でも、これ、4輪全部じゃなく、1個はめるだけでも止まるんじゃないかと思うので、とりあえずLを1つだけ買ってみるのはどうですか?」
「はい!」仰るとおりにその場でポチッ。便利な世の中です。
2日後。無事に届いた車輪ストッパーを前輪にはめてみると、
「すごい! 止まった!」
1個だけで、全然動かなくなりました。はめるのも外すのも、片手でつまんで開けばよいので、最初は少し硬いけれど、コツを掴めばスムーズにいきそう。しみじみ眺めながら喜びを噛みしめます。後日、診療に来た鍼の先生も「何これ!? 感動! めっちゃいいじゃないですか! すごいな」と、声が一段大きくなって喜んでいました。みんなで知恵を出しあってたどり着いた車輪ストッパー。母の安全性がグッと高まって、嬉しいです。