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今日は晴天、ぼけ日和

何度も同じことを聞いてくる父 怒鳴ってしまって罪悪感 「許してね」

《介護士でマンガ家の、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》

「今日、デイだっけ?」「何回聞くのよ!」

やってしまった。

何度も同じことを聞く
認知症がある父に、
また声を、荒げてしまった。

言ってスッキリするどころか、
今日も後悔の嵐。

「あのさ・・・今日、デイだっけ?」

ため息つく間もなく続く
堂々巡りのやりとりに、
もう声をあげる気もおきない。

でも、ほんとは分かっている。
父が何度も話しかけてくるのは、
なにか不安があるからだって。

だから、手を止めた。

すいかを食べる二人

私の心に余裕があるときは、
父も穏やかでいる不思議。

そんなふうには
いつもいられない私を

「まだまだ子どもだな」って
許してね、お父さん。

先日、友人から

「認知症がある家族が、
 何回も同じことを聞いてきて、
 怒鳴っちゃった!」

と、ぷりぷりしながら伝えられました。

とは言うものの、
家族を責めてしまったことへの後悔が
友人の言葉のはしばしに、にじんでいます。

「何度も話しかけてくるのは、
 なにか不安があるからよね。
 怒っちゃって情けない」

そう話す人を、
責められるでしょうか。

長年介護をしている人は、
何回も聞かれることの理由を、
単に物忘れだけとは、とらえていません。

とはいえ、
せわしない日常のなかで、
その理由のひとつひとつに耳を傾け、
明らかにすることは難しい。

それでも、時々立ち止まり、
何が不安なのかを想像してみる。

もうその一瞬があるだけで、
その人の介護は、
百点満点だと思うのです。

気持ちのやり場がなくなりがちな、
在宅介護は、

たまに、
「うまく対応できたかもしれない」
と思えるくらいが、
いいあんばいかもしれません。

《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》

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