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なるほど!有料老人ホームはこう見分ける!チェック方法を専門家が解説

有料老人ホームを見学するときのポイント 専門家が解説

安くはない利用料を支払うことになる有料老人ホームへの入居に際しては、契約の前に施設を見学しておくことが重要になります。「こんな所とは思わなかった……」と後悔しないためにも、見学時には、どのような点をチェックすれば良いのでしょうか。架空の朝日太陽さんのエピソードをもとに解説します。アドバイスしてくださるのは、シニアライフに必要な情報を提供する株式会社ベイシスの「介護の三ツ星コンシェルジュ編集部」の荒牧誠也編集長です。

【今回のエピソード:いよいよ有料老人ホームの見学へ】
東京で働く朝日太陽さん(52)は、地方の自宅でひとり暮らしをしている母の月子さん(80)のために有料老人ホームを探しています。様々な資料や重要事項説明書を取り寄せて比較し、いよいよ、ここぞという有料老人ホームを見学することになりました。どのようなところに注意して見学をすればいいのでしょうか。

*重要事項説明書ついては、前回の記事『老人ホーム選びでは要チェック!「重要事項説明書」に含まれるアレコレ』をご覧ください。

備えのためのアドバイス:居心地がいいかどうかを見極める3つのポイント

たくさんある有料老人ホームの中から見学する施設を絞り込むには、まずは捻出できる費用を把握しておく必要があります(『心と財布にゆとりを 年金生活でも無理なく入れる有料老人ホーム探し』の回をご参照ください)。

その上でインターネット検索をしてみましょう。「〇〇(お住まいや希望している地域名)の有料老人ホーム」と入力すれば施設や施設の検索サイトが表示されるので、予算に合った施設をいくつか選んで、資料を請求し、見学の予約を取ってください。

なお、ホームページだけでは施設の雰囲気を判断するのは難しいものです。より具体的な内容を知るためには、ブログやSNSが参考になります。ブログやSNSで、館内の様子や取り組みを頻繁に発信しているところは、「運営に自信を持っている施設」と言える傾向があります。

資料を請求するときは、パンフレットだけでなく「重要事項説明書」も送ってもらってください。重要事項説明書は契約のときには必ず提示しなければならない書類で、従業員の経験年数や離職率、看取(みと)りの能力といった施設の運営状況などが明記されています。いい面だけでなく悪い面もわかる書類なので、隠すことなく渡してくれる施設は信用できます。

有料老人ホームを見学するときのポイント 入居者が楽しそうにだんらんしているかもチェックしよう

入所する有料老人ホームでは、ご本人に快適な日々を過ごしていただきたいもの。また、安くない利用料を払うことになるのですから、見学をしてどのような施設なのかを直接確認するステップは重要です。いくつかの施設を見学し、比較することで、それぞれの施設の運営状況や職員の質も把握しやすくなります。見学の際に重視してほしいのは、入居するご本人にとって、「そのホームで長く暮らせるか」「自分に合ったホームか」「居心地がいいか」の3点。見学時にはこの3点を見極めるために、館内、入居者、職員を観察してみましょう。

館内を見る

まず「館内が清潔」「きちんと整理整頓されている」というのは、基本中の基本。とくに建物に入って最初に目に触れる玄関ホールからして汚い、雑然としているような施設は、ほかの場所も期待できません。

なお、ほとんどの施設の玄関ホールはきれいにしてありますが、さらに花が生けてあるとか、絵が飾ってあるといった「おもてなし」の雰囲気を感じるかどうかもチェックすると良いでしょう。

一方で、玄関ホールや、すぐ横にある事務室のドアなど、目立つ場所に「ヘルパー募集」のポスターを貼っている施設は、大声で「うちは人が足りていません」と言っているようなもの。こういう施設は避けた方が無難でしょう。

玄関に続いてぜひチェックしてほしいのが、トイレ。トイレの清潔状況はホーム全体の整理整頓や清掃の姿勢に直結しています。「トイレが汚れているにもかかわらず、館内が片付いている」という施設はないと考えてよいと思います。

建物周りの植栽まで気を配っているかどうかも確認してください。外出する機会が少ない入居者にとって緑や季節ごとに咲く花に囲まれて過ごすことが、癒しや楽しみになるものです。ここまで気遣いがあり、手をかけている、ホスピタリティーあふれる施設なら、ご本人も心穏やかに過ごせるのではないでしょうか。

入居者を見る

入居者の様子でまず着目してほしいのは服。日中なのにパジャマやジャージーを着ているようであれば、起床時に職員が着替えを促したり、手伝ったりしていない可能性があります。朝起きたら着替えるという当たり前の生活を重視していない施設、あるいは職員の手が足りていない施設かもしれません。

入居者が楽しそうにしているかどうかもチェックしてみましょう。食事の時間以外に食堂やデイルームに自然と集まってだんらんし、さらにそこに職員が寄り添っている施設であれば温かみのあるケアが期待できそうです。

職員を見る

職員を観察する際には、常にメモ帳を持ち歩いて活用しているかどうかチェックを。介護職は超多忙なので、入居者の状態に変化があった時など大事な連絡事項は、忘れないようにきちんと記録して残しておくために、筆記用具は欠かせません。けれど、メモ帳を持ち歩かずに手や腕にボールペンやサインペンでメモしている職員も意外に多くいます。それでは消えてしまうこともあるし、誰かにメモを渡すこともできません。書き間違いや見間違いも起こりやすくなり、安全管理の不備につながりかねません。

職員の表情や接し方もチェックポイントの一つです。見学に行った際に会う職員は明るくにこやかにあいさつをしてくれますが、それは「施設長や営業マンに連れられたお客さんだから愛想良くしている」ということが多いのが実情です。

そこで見学時には「トイレをお借りします」などと言って見学対応の職員から離れ、一人で館内を歩いてみることをお勧めします。「一人で歩いているときでも同じように笑顔であいさつをしてくれるか」が重要です。

また、各施設の運営方針や介護方針を決めているのは、施設長です。見学時には必ず施設長にも会って、方針を確認してください。施設長がしっかりとした考え方で運営に携わっていると、自然と施設全体の職員に伝わるもの。見学の予約をするときに「施設長にも会いたい」と、頼んでおくといいでしょう。

これらの3つのポイントをチェックした上で、入居されるご本人が快適に過ごせる、ご本人に合った施設を選んでもらえればと思います。

荒牧誠也さん
荒牧誠也(あらまき・せいや)
株式会社ベイシス 取締役事業本部長、コラムサイト介護の三ツ星コンシェルジュ編集長。
1964年、大阪府大阪市生まれ。88年 関西電力株式会社入社。99年、介護事業子会社 株式会社かんでんジョイライフを設立。取締役として主に有料老人ホーム、サービス付高齢者向け住宅、認知症対応型グループホームの開発・運営等に従事。2017年に関西電力を退社後、現職。

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この連載について

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