泥棒!と思ったら一呼吸 私のバッグをいじる高齢者に、こんなひと言
《介護士でマンガ家の、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》
![『私のリュックを知らない人が開けてる!』ガサゴソ](http://p.potaufeu.asahi.com/27ce-p/picture/26829111/f961719a61a9f53098f3de9614b5d008.jpg)
近所の喫茶店の、
いつものモーニング。
私の席に誰かがいる。
「泥棒!」と叫びそうになって
慌てて口をつぐんだ。
いやいや、もしかしたら、
認知症がある人なのかもしれない。
何か勘違いをしているのかも。
![「それ、私のです。大丈・・・じゃなくて、なにか、お困りですか?」](http://p.potaufeu.asahi.com/598a-p/picture/26829109/8f03b9625440eab00edab26a58675c6f.jpg)
「なにかお困りですか?」
そう私が声をかけると女性は、
「私の席かと思ったの。じゃあ私のカバンは?」
理由が分かれば、お互い安心。
すぐに女性の席を一緒に見つけて、もっと安心した。
![ほっ ほっ ほっ](http://p.potaufeu.asahi.com/12f5-p/picture/26829110/ba927a75cbe3fcfc81c8c7f5bf5d7363.jpg)
もし、私が「泥棒!」と叫んでいたら……。
女性が、濡れ衣を着せられていたら……。
私たちはこんな
穏やかな日常のひとときさえ、
失ったのかもしれません。
この高齢女性に、
認知症があったのかどうか、
実際にはわかりません。
でもお互い、穏やかに過ごせたのは、
「なにか、お困りですか?」
そのひとことのお陰でした。
以前、こんな話を聞いたことがあります。
「人に『大丈夫ですか?』と聞くと、
人は困っていても反射的に
『大丈夫』と答えてしまいがち」
でも「お困りですか?」だと、
聞かれた方はちょっと立ち止まり、
自分の心に問いかける余裕ができます。
そして、困っていることの解決に向けた糸口を、
一緒に見つけることができます。
ちょっとした言い換えですが、
私はこのひとことに助けられました。
その後、再びこの女性を、喫茶店で見かけました。
私たちの日常が変わらず、本当に良かったです。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》
![](http://p.potaufeu.asahi.com/nakamaaru/img/nakamaaru450_450.gif)