今日は晴天、ぼけ日和

泥棒!と思ったら一呼吸 私のバッグをいじる高齢者に、こんなひと言

《介護士でマンガ家の、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》

『私のリュックを知らない人が開けてる!』ガサゴソ

近所の喫茶店の、
いつものモーニング。

私の席に誰かがいる。
「泥棒!」と叫びそうになって
慌てて口をつぐんだ。

いやいや、もしかしたら、
認知症がある人なのかもしれない。

何か勘違いをしているのかも。

「それ、私のです。大丈・・・じゃなくて、なにか、お困りですか?」

「なにかお困りですか?」
そう私が声をかけると女性は、

「私の席かと思ったの。じゃあ私のカバンは?」

理由が分かれば、お互い安心。
すぐに女性の席を一緒に見つけて、もっと安心した。

ほっ ほっ ほっ

もし、私が「泥棒!」と叫んでいたら……。
女性が、濡れ衣を着せられていたら……。

私たちはこんな
穏やかな日常のひとときさえ、
失ったのかもしれません。

この高齢女性に、
認知症があったのかどうか、
実際にはわかりません。

でもお互い、穏やかに過ごせたのは、

「なにか、お困りですか?」

そのひとことのお陰でした。

以前、こんな話を聞いたことがあります。

「人に『大丈夫ですか?』と聞くと、
人は困っていても反射的に
『大丈夫』と答えてしまいがち」

でも「お困りですか?」だと、
聞かれた方はちょっと立ち止まり、
自分の心に問いかける余裕ができます。

そして、困っていることの解決に向けた糸口を、
一緒に見つけることができます。

ちょっとした言い換えですが、
私はこのひとことに助けられました。

その後、再びこの女性を、喫茶店で見かけました。
私たちの日常が変わらず、本当に良かったです。

《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》

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