解決!お金の困りごと

種類が多すぎて分からない! 高齢者向けの住まい 専門家が選び方を解説

どうする? 高齢で介護が必要になった親の住まい

有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、特別養護老人ホーム……などなど。近年、高齢期になり、介護が必要になることを見据えて、介護サービスが受けられたり、見守りをしてもらえたりする様々な形の施設や住宅といった「高齢者向け住まい」が整備されています。高齢期になってからの「住み替え」は、老後を豊かに過ごすための選択肢の一つと言えるでしょう。ただ、お金がかかるにもかかわらず、「どこを選ぶのが良いのか分からない」という方も多そうです。新シリーズでは、架空の朝日太陽さんのエピソードをもとに、高齢期の住まいの選び方について解説します。アドバイスしてくださるのは、シニアライフに必要な情報を提供する(株)ベイシスの「介護の三ツ星コンシェルジュ編集部」の荒牧誠也編集長です。

【今回のエピソード:種類がいっぱいで分からない】
東京で働く朝日太陽さん(52)の母、月子さん(80)は、地方で一人暮らし。現在は要介護4で、介護保険の在宅サービスを利用しながらなんとか自宅で生活してきましたが、車いすでの生活になり、太陽さんは、施設への入所を検討し始めました。しかしいろいろな施設があって、何を基準に選べばいいのかわからず、途方に暮れてしまいました。

備えのためのアドバイス:大別すると公的な施設と民間施設

高齢者を対象にした住まいには、自立している人向けのものと、介護が必要な人を対象としたものに分かれます。月子さんは要介護4ですので、今回は、要介護者向けの住まいについて説明していきます。

要介護者向けの住まいには、大きく分けて、公的な介護保険制度の中で位置づけられている公的な施設と、民間事業者が自由に内容を決めて運営しているものがあります。

費用負担が少ないとされるのは公的な施設で、「特別養護老人ホーム(通称・特養)」「介護老人保健施設(通称・老健)」「介護医療院」があります。これらは、介護保険3施設と呼ばれています。

「認知症対応型グループホーム」は介護保険で「地域密着型サービス」と位置づけられています。地方自治体や社会福祉法人が運営する福祉施設である「ケアハウス」の中にも介護型がありますが、設置されている数が少ないのが現状です。

一方、民間施設では、介護入居型の「有料老人ホーム」「サービス付き高齢者住宅(通称・サ高住)」が要介護者向けの住まいになります。

費用が安い「特養」は多くが入所待ち

「特別養護老人ホーム(以下「特養」)」は、日常生活に常時介護を必要とするような要介護度が高い方のための住まいです。原則、入所できるのは要介護3以上の認定を受けた方に限られています(ただし、要介護1~2でも認知症が重度だったり、家族による虐待があったりした場合などは、特例で入所が認められることもあります)。

特養の最大の特徴と言えるのが、費用の安さです。特養は、いわば国や自治体に代わって社会福祉法人などが運営するもので、建設費に助成金が出たり、税金が免除されていたりします。このため、費用を抑えることができ、要介護度や部屋の形式、所得などによって違いはありますが、介護サービス費や居住費、食費などを合わせても月8万~13万円ほどで利用できます。

ただし費用が安いために入所希望者が多い上、施設数が限られるため、特に都心部では申し込んでもなかなか入所できないケースが少なくありません。さらに、入居の空きがでる度に、要介護度4~5や一人暮らしなど「入所がより必要」とされる方が優先して選ばれるため、ご家族と同居している方や要介護度3の人は、待ってしてもなかなか入ることができないいのが現実です。

そうした場合は、自宅の近隣にこだわらず、遠方の特養にも目を向けてみましょう。自身が住んでいる自治体の特養しか申し込めないと思われている方が多いのですが、実は30床以上の一般的な特養は、全国どこの施設でも、入所を申し込むことができるのです。地域によっては空きがある施設もあります。入所を急いでいる場合は、遠方も含めて数多くの特養に申し込むことをお勧めします。

医療的ケアが必要ならば「介護医療院」

「介護医療院」は病院に入院するまでではないけれど医療的なケアが常時必要になった方向けの施設です。入所できるのは、要介護1~5の認定を受けている方。医師や看護師が常駐し、長期にわたる療養が可能で、ターミナルケアや看取(みと)りにも対応しています。

介護医療院では、介護保険が適用されますので、介護サービスを受けても一定の自己負担で済みます。おおむね月13万円~15万円ほどと考えておけば良いでしょう。ただ、あくまで高度な医療が必要な方が対象ですので、長期の入所になると、費用が多額になることもあります。

在宅復帰を目指す「老健」

介護老人保健施設(以下「老健」)は、特養や介護医療院とは位置づけが異なり、「在宅復帰」を目的とした施設で、終(つい)のすみかにはなりません。たとえば「脳梗塞(こうそく)で急性期病院に入院後、回復期病棟に移って症状が安定し退院が見えてきたけれど、自宅で過ごすにはまだ不安がある」などというときに、リハビリテーションを中心に支援を行いう場が老健なのです。医師やリハビリテーションの専門職である作業療法士や理学療法士が常勤し、65歳以上で要介護1以上であれば入所が可能です。しかしあくまでも自立した生活に戻るための施設なので、入所期間は原則3~6カ月に限られます。

認知症の人向け「グループホーム」

認知症と診断され、要支援2以上の認定を受けている方は、「認知症対応型グループホーム」という選択肢もあります。ただし、入所できるのは施設がある自治体に住民票を持つ方のみという点に注意が必要です。

5~9人を1ユニットとする少人数で、認知症になった方が集まり、専門スタッフから介護サービスや機能訓練などを受けながら、料理や掃除などの家事を分担し共同生活を送ることで、認知症が進行しないようにするための施設です。家庭的な雰囲気で過ごせる魅力がありますが、より重い介護や医療ケアが必要になった場合は退去しなければならないこともあります。

グループホームに入居する際には、入居一時金または保証金のいずれかを初期費用として支払う必要があり、そのほかに毎月、日常生活費や介護サービス費などの費用がかかります。初期費用は0~数百万と施設によって大きく異なります(数万~20万円が相場で、全国平均は8.2万円)。月額費用はだいたい15万~20万円程度です。

介護が必要な高齢者向け住まいの主な種類

選択肢が豊富な有料老人ホーム 介護時入居型と住宅型

公的な施設と比べて、サービス内容が自由に決められるため、さまざまな特長があるのが「有料老人ホーム」です。数も多く、選択肢が豊富です。

有料老人ホームの中でも、介護が必要になった方が入所できるのが、「介護時入居型」というタイプ。入所は要介護1からとしている施設が多いですが、要支援から受け入れているところもあります。

その中でも、介護保険上「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた「介護付き有料老人ホーム」は、公的な特養に準ずる施設として、民間が主導して整備されてきました。本来は「住宅」扱いの有料老人ホームですが、この指定を受けると、介護保険上で、施設や設備の基準、方法が定められることになります。いわば「民間版特養」となるのです。サービス的にも一定のレベルが確保されているといえるでしょう。さらに、民間の良さとして、たとえば「看護職員を24時間配置して医療依存度の高い人も受け入れている」「理学療法士などが常駐し、リハビリテーションが充実している」など、特徴を打ち出しているところが多いです。

それ以外の有料老人ホームは「住宅型」と呼ばれます。あくまで、住宅で、老人福法上も「高齢者を対象に食事や見守りサービスを提供施設」とされ、介護サービスの提供は義務づけられていません。介護サービスは、別途、提供を受けることになりますが、公的介護保険が利用できます。居室の広さや共用施設などが充実しているところが多くあり、「介護付き」以上にサービス内容は多種多様です。レクリエーションや食事に工夫を凝らしているところもあります。

介護付き、住宅型ともに、有料老人ホームは、費用は、千差万別です。有料老人ホームと言うと「高額」というイメージが強く、実際に高額な入居一時金が必要なところもあります。一方で、比較的、安価に入居できるところもありますので、探してみましょう。月額利用料金(家賃相当額、管理費、サービス費、食費などの合算)も13万円くらいから60万円を超える施設までさまざまです。

サービス付き高齢者住宅 入居時は敷金、高額な一時金は不要

「サービス付き高齢者住宅(以下「サ高住」)」は、国土交通省が整備を進めている高齢者向けの賃貸住宅で「バリアフリー構造などを有し、介護・医療と連携し高齢者を支援するサービスを提供する住宅で、都道府県知事への登録が必要」とされています。居室面積は18平方㍍以上で、トイレや洗面が居室内に設置されており、少なくとも安否確認サービスと生活相談サービスが受けられます。サ高住はあくまで賃貸住宅であり、介護サービスは自分の必要なものを選ぶことができるので、自由度が高い生活を送れることが特徴の一つと言えるでしょう。

サ高住にも、介護が必要な人向けの「介護入居型」があります。

「介護入居型」は、サービス内容としては、前述の住宅型有料老人ホームと同様だとイメージすると良いでしょう。さらに、近年は、有料老人ホームの場合と同じように介護保険上の「特定施設入居者生活介護」の指定を受けるところも出てきています。そうしたところでは、住宅に住みながら、特養に準じたサービスを受けることができます。

費用は、賃貸住宅と同様に、入居時に敷金を支払うところが多いですが、有料老人ホームのように高額な入居一時金は必要がないのが特徴です。その後は、毎月、家賃や管理費、食費などとして10万~40万円ほどを支払うところが多いです。介護サービス費については、別途、利用した分を公的介護保険の自己負担分に応じて支払うことになります。

このように、高齢者の住まいには、多種多様な種類がありますが、種類が異なっても、受けられるサービスから見ると内容が近いものもあります。種類だけにこだわらず、その人にとって必要なサービスが受けられる住まいを探していくことが大切です。

*荒牧誠也さんによる、より詳しい解説を聞きたい方は、こちらの動画をご視聴ください。

荒牧誠也(あらまき・せいや)
株式会社ベイシス 取締役事業本部長、コラムサイト「介護の三ツ星コンシェルジュ」編集長。
1964年、大阪府大阪市生まれ。88年 関西電力株式会社入社。99年、介護事業子会社 株式会社かんでんジョイライフを設立。取締役として主に有料老人ホーム、サービス付高齢者向け住宅、認知症対応型グループホームの開発・運営等に従事。2017年に関西電力を退社後、現職。

あわせて読みたい

この記事をシェアする

この連載について