自分の手を嚙み、爪を立てる その裏にある心の痛みを癒やす言葉とは
《介護士でマンガ家の、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》
![「カプッ」](http://p.potaufeu.asahi.com/de05-p/picture/26806718/e229745c98af6dd2f7c792be9cbf875e.jpg)
認知症の診断を受けてから、
私は、気丈にふるまってきた。
それでも、ふと、心がさまよう瞬間がある。
そんな時、私は自分の体を、
軽く傷つけるようになった。
![ぎゅっ](http://p.potaufeu.asahi.com/5cbb-p/picture/26806722/4ffaa3c091d68467c4efc7c1caf77641.jpg)
私は自分の手に、歯をたてる。
爪を食い込ませる。
心の痛みが出てこないように。
こんなことしたってどうにもならないと、
わかっているのに。
![「手が痛そうだよ?」](http://p.potaufeu.asahi.com/e5bb-p/picture/26806723/a9d49e8f78d09e8eb56a441871c80283.jpg)
「やめなよ」と手を強くおさえられたり、
「その行為は症状のひとつだよ」と諭されたりしたら、
私の心は行き場をなくすだろう。
あなたにこの痛みを大切にされて、
ようやく戻る、私の心。
内出血するほど、
腕に爪を食い込ませたり、
足を椅子に打ちつけたり。
認知症当事者さんが、
ご自身の体をわざと傷つけてしまう場面に、
何度か居合わせました。
それは症状のひとつ、と受けとる人もいるでしょうが、
私には症状ではなく、
当事者さんが内に抱えた痛みと、
ひとり葛藤している姿に見えました。
もし、そんな場面に遭遇した場合、
親しい人であれば、
手などをそっと握り、
ご本人の体が傷つかないようにサポートしてもいいでしょう。
一方、あまり親しくない人や、
体に触れるのが難しい場合は、
その行為をむやみに止めるのではなく、
「そうすると、大切な体が傷ついてしまいます」
「腕が痛そうですよ?」
と、そばで体の状態を親身な言葉で伝えるのも、いいかもしれません。
かくいう私もご本人と一緒に
おろおろしてしまうのがほとんどなのですが、
せめて、心の準備だけはしておきたいと思っています。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》
![](http://p.potaufeu.asahi.com/nakamaaru/img/nakamaaru450_450.gif)