認知症とともにあるウェブメディア

今日は晴天、ぼけ日和

自分の手を嚙み、爪を立てる その裏にある心の痛みを癒やす言葉とは

《介護士でマンガ家の、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》

「カプッ」

認知症の診断を受けてから、
私は、気丈にふるまってきた。 

それでも、ふと、心がさまよう瞬間がある。 

そんな時、私は自分の体を、
軽く傷つけるようになった。 

ぎゅっ

私は自分の手に、歯をたてる。
爪を食い込ませる。

心の痛みが出てこないように。

こんなことしたってどうにもならないと、
わかっているのに。

「手が痛そうだよ?」

「やめなよ」と手を強くおさえられたり、
「その行為は症状のひとつだよ」と諭されたりしたら、
私の心は行き場をなくすだろう。 

あなたにこの痛みを大切にされて、
ようやく戻る、私の心。

内出血するほど、
腕に爪を食い込ませたり、
足を椅子に打ちつけたり。 

認知症当事者さんが、
ご自身の体をわざと傷つけてしまう場面に、
何度か居合わせました。 

それは症状のひとつ、と受けとる人もいるでしょうが、 

私には症状ではなく、
当事者さんが内に抱えた痛みと、
ひとり葛藤している姿に見えました。 

もし、そんな場面に遭遇した場合、
親しい人であれば、
手などをそっと握り、
ご本人の体が傷つかないようにサポートしてもいいでしょう。 

一方、あまり親しくない人や、
体に触れるのが難しい場合は、
その行為をむやみに止めるのではなく、 

「そうすると、大切な体が傷ついてしまいます」
「腕が痛そうですよ?」 

と、そばで体の状態を親身な言葉で伝えるのも、いいかもしれません。 

かくいう私もご本人と一緒に
おろおろしてしまうのがほとんどなのですが、 

せめて、心の準備だけはしておきたいと思っています。

《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》

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