見えない症状 混乱だらけの外出 それでも、ヘルプカードとともに
《介護士でマンガ家の、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》
![「ひとりで来たの?!」](http://p.potaufeu.asahi.com/1b20-p/picture/26819726/aeaa083287e9e134ed552aa4495cf6a1.jpg)
認知症になる前から、大好きだったギャラリーに足を運んだ。
私の症状を知る店主さんは、驚きながらも喜んでくれた。
これをかばんに付けて、やっとたどり着けた。
赤地に、白の十字とハートが描かれた、
「ヘルプマーク」
![ガタン ゴトン ヘルプマークを身につけて電車に乗る人](http://p.potaufeu.asahi.com/8eed-p/picture/26819724/68e1c8d21a9ca1c97bec7298a51968f7.jpg)
帰りの電車は、座れなかった。
ヘルプマークを付けていても、
若く元気に見える私に、
周りの人も、声をかけづらいのだろう。
行きは、このマークを見た人に
席を譲ってもらったお陰で、
ゆっくりと降車駅を確認できたけれど……
![身体を休める人](http://p.potaufeu.asahi.com/6b1e-p/picture/26819725/0cf4b67358f25cc5d682c0c57170209c.jpg)
必死の思いで、なんとか帰宅した。
途端に、床に崩れ落ちた。
全身が重く、一歩も動けない。
きっと2、3日はこの状態が続くだろう。
それでもまた、私は出かける。
ヘルプマークをお守りに。
「優先席に座っていたら、周りの人に
『なんであなたみたいな若い人が座るのか』と注意された。
だから私は誤解を生まないために、ヘルプマークを付けています」
続けてこうも言っていました。
「確かに席を譲ってもらえたら、とても助かるんです。
でも、このマークが周りへの強制になったら申し訳ない」とも。
ヘルプマークは、外からはわからない障害や症状がある人が、
周りに援助や配慮を必要としていることを、
知らせるためのマークです。
今では多くの方に周知されるようになりましたが、
マークを付ける、当事者さんのお気持ちは様々です。
それでも、ヘルプマークを付けた方々が、
席を譲られることで得られる、安心やメリットは、
周りが思っている以上のことなのです。
長い間、立っているのが難しい人はもちろん、
認知症がある人であれば、
降車駅ひとつの確認でさえ、細心の注意が必要になることもあるからです。
自分がどこに向かっているのか、
そのために今なにをすべきか、
混乱なしに、明確でいられること。
それを交通機関を使っている誰もが、
容易にできているわけではありません。
「席を譲る」
その小さな親切は、
誰かの困難だらけの外出の、
大きな支えになっているのです。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》
![](http://p.potaufeu.asahi.com/nakamaaru/img/nakamaaru450_450.gif)