そのお金はどこから 認知症の母の貯金を使い込み?【お悩み相談室】
構成/中寺暁子
介護福祉士、介護支援専門員の山城裕美さんが、認知症の様々な悩みに答えます。
Q.認知症の母(82歳)は独身の姉と2人暮らしなのですが、最近姉がブランドもののバッグを買ったり、車を高級車に買い替えたりとお金遣いが荒いのです。母のお金を使いこんでいるのではないかと不安です(50歳・女性)
A.この相談内容から、何度もSOSを出したのに助けてもらえず、孤立していったお姉さんの姿が浮かびます。「1人でがんばってきたのだから、これくらいのごほうびはもらってもいい」……そんな気持ちかもしれません。
もちろん、相談者もできる範囲でお姉さんをサポートしてきたことと思います。ただ、本当に助けが必要なときは、「今すぐ」助けてほしいんですよね。そうなると一緒に住んでいない限り、難しいものです。「明日は仕事が休みだから、手伝いに行こうか?」など、離れて暮らしていると、どうしても自分のタイミングでサポートしがちです。お姉さんとしては、そのタイミングでは、特に手伝いを必要としていなかったのかもしれません。
まずは、お姉さんがSOSを出し切って孤立した状況から今の行動に至っているのかもしれない、ということを理解する必要があると思います。お母さんが認知症だとわかる前から、一緒に暮らすお姉さんは大変な思いをしていたのかもしれません。お姉さんがどれだけがんばってきたのか、話をよく聞いて労いや感謝の言葉を伝えてください。
お金のことは直接確認しにくいですよね。「お母さんはこれから、介護に関する費用がかかるだろうから、一度お金を整理しよう」などと伝えて、お母さんの財産について確認するのはいかがでしょうか。担当のケアマネジャーがいれば、これからどのような介護保険サービスが必要になってくるのか、費用はどのくらいかかるのかということを具体的に聞いてみるといいと思います。お姉さんと一緒に確認することで、打ち明けてくれることもあるかもしれません。
実際に使い込みが発覚したら、成年後見制度や、社会福祉協議会が実施する日常生活自立支援事業を利用して、第三者にお母さんの財産を管理してもらうというのも一つの方法です。
周囲にお姉さんをサポートしてくれるような人はいるのか、状況を確認することも大事です。そして自分の思いを伝えるより先に、お姉さんの話をよく聞いてあげてほしいと思います。
【まとめ】姉によるお母さんの財産の使い込みが疑われるときには?
- 姉がSOSを出し切って孤立している状態であるかもしれないことを理解する
- 苦労してきた姉の話を聞いて、労いや感謝の言葉を伝える
- 現在のお母さんの財産、今後介護などにかかる費用を姉とともに確認する
- 使い込みが発覚した場合は成年後見制度や日常生活自立支援事業などを利用して、第三者にお母さんの財産管理をしてもらう