もめない介護

帰省するならここを見ろ!親の認知症チェックポイント もめない介護137

新幹線の座席
コスガ聡一 撮影

新型コロナの新規感染者数が少ない状況が続いている今のうちに、帰省したい。知人友人からそんな話を聞く機会が増えました。離れて暮らしていると、普段はなかなか気づきづらい認知症のサイン。今回は過去の「もめない介護」連載から注目したいポイントと対応についてダイジェストで紹介します。

「冷蔵庫の様子がいつもと違う!?」は黄色信号

認知症というと、ひどいもの忘れをイメージされる方もいらっしゃるかもしれません。でも、兆しには個人差があり、現われ方もさまざま。「もの忘れ」だけを取り上げて一喜一憂すると、ほかのサインを見逃しやすくなるので要注意です。

たとえば、冷蔵庫。久しぶりに実家に帰って冷蔵庫をのぞいたら、あふれんばかりの食材の山。しかも、どれも賞味期限が切れていて……といった光景に遭遇したら、黄色信号です。これまでに比べて調理が億劫になっているのかもしれませんし、買ったのを忘れてさらに買い足しているのかも。あるいは、強い不安感があって捨てたくても捨てられない状態が続いているのかもしれません。

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ただ、親の老いを色濃く感じてドキッとしても、強く問いただすのは禁物です。「どうしてこんなことになってるの!?」「ダメじゃない!」「ちゃんとしてよ」など、とがめる言い方をしたら間違いなくもめます。何歳になってもどんな状況にあっても、親は親。子どもから頭ごなしに叱られたらカチンときます。困りごとを打ち明けるどころではなくなってしまうはず。

几帳面で厳格な親に育てられた人ほど、親の老いにともなって現われる生活のほころびが許せない傾向が見られます。「自分はあんなにうるさく言っていたのに!」も、納得がいかない一因なのかも。
でも、ここで真正面からぶつかり合い傷つけ合っても、事態は混沌とするばかり。いいか悪いか、望ましいか望ましくないかの判断はいったん保留にして、「いま親がどんな暮らしをしているのか」「命に関わる困りごとがありそうか」を軸にさりげなく観察し、親の言い分に耳を傾けてみるところからスタートするのがよさそうです。

※冷蔵庫に関する記事はこちら「認知症のサインは冷蔵庫で分かる。親子ケンカ回避の心得 もめない介護1

止まらない愚痴に文句、悪口。すべてを「年のせい」にするのは禁物

親の性格が、年をとって変わった気がする。いつもイライラして文句ばかり言う。口を開けばご近所さんの悪口ばかりでウンザリ。正直言って、もう会いたくない――。そんな悩みを抱える子ども世代は少なくありません。
たしなめたり、反論したりしてもぶつかるばかり。一歩も引かない親の態度に困り果てているという声も聴きます。

「話を聞かない、聞こえない」「変化を受け入れるのが難しくなる」も老化のひとつではありますが、すべてを年のせいと決めつけるのは禁物です。おっとりと穏やかなタイプだった親が急に攻撃的になった場合、認知症の予兆であることも考えられます。認知症ではなくとも、思わぬ病気が潜んでいることも。

「あのとき、“もしかしたら何か病気があるかも”という話を聞いていて助かりました。危うく、大ゲンカしたまま、母を見送るところでした」

こう教えてくれたのは以前、トークイベントでお会いした方です。日増しに言動がきつくなる親御さんへの対応に悩んでいると聞いて、「どうやって、親の暴言を真正面から受け止めずにすませるか」「丁々発止でやりあう時間を最小限にするか」などを一緒に考えたことがあったのです。

大切なのは、現実をそのまま受け止めること

当時、言動のきつさはさておき、元気いっぱいに見えたその方のお母さまの体は、実はがんに蝕まれていたことが後にわかったそうです。手術などができる状態ではなく、緩和ケア病棟に入り痛みがやわらぐころには、お母さまのきつい言動がピタリと止んだそう。

「おふくろは体がつらかったんだなと、その時わかりました。もっと早く気づいてあげられたらよかったと後悔もあるけれど、気づかないまま病院にも行かず、ケンカ別れにならなくてホントよかった」

認知症かと思ったら、単なる“年相応”ということもあれば、その逆もあります。大切なのは、「こうに違いない」と決めつけず、「こうあってほしい」に惑わされず、目の前にある現実をなるべくそのまま受け止めること。もちろん、そう簡単ではない場面も多々あります。ひとりで受け止めるのが苦しい時は、頑張りすぎることなく周囲に助けを求めましょう。

ひとりで持つのは重たい荷物も、3人、5人と一緒に持ってくれる人がいると、つらさも和らぎます。「この人と話をすると心がラクになる」「この人になら弱みを見せても大丈夫」と思える人を見つけておく。逆に、「悪気はないのは分かるけれど、この人と話すと暗い気持ちになる」「アドバイスはありがたいけれど、つらくなる」という人とは、さりげなく距離をとっていくのも大切な自衛策のひとつです。

※義母の罵詈雑言に関する記事はこちら「すべて『年のせい』は禁物 もめない介護99

老親にまつわる相談は事前予約のうえ、地域包括支援センターへ

久しぶりの帰省では、親の思いがけない老いを目の当たりにしてドキリとすることも少なくありません。以前は当たり前のようにできていたことができなくなっていたり、もの忘れが増えていたり……。具体的な変化を目にすると、いても立ってもいられない気持ちになることも。一方、親本人からすると“いつもの日常”の延長線。「そんなに大騒ぎするほどのことじゃない」「心配しすぎ」と意に介されず、子どものモヤモヤがますます募るという悪循環も“あるある”なやりとりのひとつです。

「もっと危機感を持って!」と食い下がっても、うるさがられるだけ。こんなときにトライしたい具体的なアクションのひとつに「地域包括支援センター」(以下、地域包括)への相談があります。

地域包括は、高齢者の暮らしを地域でサポートする公的機関。社会福祉士や保健師、主任ケアマネジャーといった専門資格をもった職員が、専門を生かしながらさまざまな相談に乗ってくれます。

私もつい先日、2年ぶりに帰省した際、71歳になる母親と近所の地域包括に行ってみました。場所や電話番号は前からインターネット検索で調べてありましたが、実際に訪問するのは私も母も今回が初めてです。

義父母の時は、介護経験のあるいとこが異変に気付き、即座に地域包括に連絡。「なるべく早いタイミングに相談に行って」とつないでくれました。今回の訪問では一応、場所と中の様子を確認し、地域の高齢者向けのサポートがまとめて書かれた冊子でももらえたらOK……ぐらいに考えていました。

いざというときのために、チラシをもらってみるだけでも

到着してみると、義父母の時に訪れた地域包括の広々とした様子とは異なり、こじんまりしたアパートの一室。小さな相談スペースがひとつあるだけ。あらかじめ予約の電話をするべきだった!と後悔しても後の祭りです。幸いほかの相談者と時間がかぶっておらず、「せっかくなので、どうぞ」と職員さんに案内され、親の現状や訪問のきっかけなどを簡単に伝えることに。

「いま何か気になっていることなどありますか?」
「特に介護は必要ない状態ではあるんですけど。そうそう! いずれ、家の中のガラクタを処分したいけれど、老夫婦だけでは難しそうな気がしていて。業者にお願いするとしても、自宅の中に入られるのはちょっと怖い。信頼できる業者さんを紹介してもらえたりしますか?」

職員さんと母のやりとりを横で聞きながら、初耳の話に驚いたり、職員さんが親身に話を聞いてくれる様子に安心したり。いますぐ何かをどうこうする段階ではありませんが、地域包括に行ってみてよかったと感じた瞬間でした。

遠方に住んでいる場合は電話で相談することもできます。ただ、帰省などで近くに行けるタイミングがあれば、親と一緒に(親がいやがるようなら、無理に誘わず自分だけでも)足を運んでみることをおすすめします。相談もそうですが、地方自治体が作成した高齢者向けのサービスをまとめたパンフレットやチラシなどをもらっておくと情報収集や今後のシミュレーションの助けになるのはもちろん、親と今後について話すきっかけとしても活用できます。

※地域包括に関する記事はこちら「親が認知症かも? 心配なときの相談できる窓口や公的機関 もめない介護2

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