高齢の親の移動手段 タクシー?レンタカー?メリデメ解説 もめない介護136
編集協力/Power News 編集部
お互い元気なうちは気にならなかった移動手段。親が高齢になると、以前のようには動けなくなる場面も出てきます。我が家も公共交通機関での移動が難しくなってからは一般のタクシーや介護タクシー、レンタカーなどさまざまな交通手段を使ってきました。
今回はそれぞれの用途と、使う際の注意点についてご紹介します。
一般のタクシー
通院の際、徒歩で行くには少々遠いという場面で活躍したのが、一般のタクシーです。月1回のもの忘れ外来受診のほか、近所にある総合病院受診の付き添いなどもタクシーを使っていました。
こちらも読まれています : 義母と嫁の衣替え “心も替え”て挑むべし
もっとも、認知症といってもすべてができなくなるわけではなく、できることとできないことが入り組んでいます。たとえば、義父は自分でタクシーを呼ぶことができる(義母は難しい)。でも、受診予約に合わせて予定を組んだり、到着時間を逆算して呼んだりするのは難しい。誰かが一緒にいれば、おそらく電車での移動もできないことはない。でも、移動だけで疲れ果ててしまう可能性もある。
親の状態を見ながら、移動手段は慎重に検討しました。
80歳を超えてもなお、姿勢良く歩いていた義父
昭和ひとケタ生まれの義父母はいずれも健脚。「せっかくだから歩きたい」と言われることもしばしば。「行きはタクシー、帰りは病院発着のシャトルバスを利用して自宅の最寄り駅まで戻り、駅から歩く」といったこともしていました。
炎天下、タクシーに乗るつもりだったのに義父がサッサと歩き始めてしまったため、ヘロヘロになりながらついていく羽目になったことも。義父は80代後半にさしかかっても歩くのが驚くほど速く、背筋がピンと伸びた後ろ姿を懐かしく思い出します。
高齢になるにつれ通院先や通院の頻度も増え、すべてタクシーを利用しようと思うと金額がバカにならない側面もあります。
通いやすさや医師との信頼関係、親の希望とさまざまな条件をてんびんにかけながら検討することになりますが、認知症のある・なしにかかわらず、「通うのが難しくなる時期」がいずれやってくることは頭の片隅に置いておくことをおすすめします。その時どうするか?は、早いうちから選択肢を探し始めたほうが、じっくり考える時間が得られるためです。
介護タクシー
自力での移動が難しい場合、“介護タクシー”を利用するという選択肢もあります。車椅子専用のリフトやスロープが付いていることが多く、なかにはストレッチャーのまま乗れるタイプもあります。
少々ややこしいのですが、介護タクシーには介護保険が適用されるタイプとされないタイプがあります。
(1)介護保険が適用される介護タクシー
「通院等のための乗車または降車の介助」です。これは訪問介護サービスのひとつで、通称として“介護タクシー”と呼ばれています(法律上規定されている名称ではありません)。
介護保険で定められている条件を満たしたら、ケアプランに組み込むことで自己負担額を減らすことができます。条件は細かく決められており、仕事や趣味などの目的に利用できないのはもちろん、「家族の同乗は原則として認められない」「運転手は病院内の付き添いは原則できない」などの制約もあります。
(2)介護保険が適用されない(介護保険外)介護タクシー
全額自費になりますが、外出目的や利用条件に制約はありません。病院の入退院や転院などの一時的な利用、ドライブや旅行など趣味のための外出など、さまざまな用途に対応できます。
我が家の場合はもっぱら、(2)介護保険外の介護タクシーを利用しました。場面としては、義父が入退院を繰り返し、車椅子での移動が必要になった時、特に病院と自宅、あるいは施設の間を移動する時に、介護タクシーをお願いしています。
担当のケアマネさんに介護タクシー事業者を紹介してもらったこともあれば、病院のソーシャルワーカーさん、介護付き有料老人ホームの相談員さんに手配をしてもらったこともあります。台数が限られているため直前に手配するのは難しく、可能な限り早めに予約したほうがよいと口をそろえて言われたのが印象に残っています。
実際なかなか手配できず、気をもむことになった場面もありました。入退院や施設の入所・退所のタイミングは家族も立て込むので、関わっている専門職の方々(在宅介護ならケアマネ、病院ならソーシャルワーカーなど)に相談し、プロの力を借りながら乗り切ることをおすすめします。
レンタカー
家族に運転できる人がいると、レンタカーやカーシェアリングも視野に入ります。ただ、この“運転できる”が曲者で、運転免許は持っていても日ごろまったく運転していないという場合は、慣れない運転と高齢の親の対応を重ねるのは負荷が大きいので、可能な限り避けたほうがよさそうにも思います。
我が家の場合、わたしは完全にペーパードライバーのため戦力外。夫が運転できて、かつ介護タクシーも含めほかの選択肢では対応できない場面にレンタカーを使用しました。
たとえば「お墓参り」。遠方にある市民霊園に往復するとなると半日がかりで、介護タクシーだとかなり費用がかさんでしまうことや、現地で義父母がどれぐらい過ごしたいかなど、不確定要素が多かったことなどが理由でレンタカーを選んでいます。
逆にほかの選択肢がある場合は、なるべくレンタカーを避けるようにもしていました。それは、運転自体には慣れていたとしても、親に何か不測の事態があるかもしれない状態で長時間、運転するストレスはできるだけ背負い込みたくなかったからです。
移動が難しくなったから移動しない。移動が難しくなったとしても、構わずに移動する。どちらかにこだわってしまうと、本人も周囲もつらくなります。「どうすれば移動時間/距離を短くできるか」「移動そのものをなくせないか(訪問診療を利用するなど)」といった選択肢も探りながら、折り合いのつけやすい移動手段をぜひ探ってみてください。