排泄や食事も孤独 人知れず認知症が進む…それでも誰かを待っている
《介護士でマンガ家の、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》
その人は1日、
荒れた畳の上で
膝を抱えている。
今日も明日もなく。
その人も
かつては誰かの
可愛い子どもだった。
どんなに自分自身を諦めても、
決して消えない、手の温み。
もう誰かに
助けを求める声さえ、
失くしてしまった。
でも待っている。
ずっと待っている。
様々な理由から、長い孤立の末、
おひとりで高齢者となり、
誰にも気づかれないままに
認知症が進み、
衣食住が保てなくなる方が
いらっしゃいます。
私がいた訪問介護チームにも
主に民生委員さんからでしたが、
そのような状況に陥った方への
サポート依頼が何度もありました。
つまり、少なくないのです。
孤立し、希望が失われると、
清潔の保持はもちろん、
食べることや排泄さえ、
億劫になります。
私が出逢った方々はそれが、
認知症からくる症状なのか、
精神的なものなのか、
医師でさえ判断するのは困難な状況でした。
けれど、どんなに孤立を極め、
他者を寄せ付けない方でも、
誰かが関わることで
必ず、変わってゆかれます。
それは私たちにとっても、希望です。
人はどんなに絶望しても
だれかの手があれば生き直せる
という、証ではないでしょうか。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》