「今日は起きよう」。気持ちと体が動き出す朝、目覚める”私のリズム”
《介護士でマンガ家の、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》
訪問介護ヘルパーの鳥羽くんが来ると、
今日は起きよう、と気持ちも体も動きはじめる。
鳥羽くんは、私を急かさない。
その背中はゆっくりと、
私を待っている。
鳥羽くんがいると、
私のリズムが戻る。
私らしい1日が、はじまってゆく。
高齢になったり、認知症が進むと、
ご自身で1日のリズムをつかむのが
難しくなりがちです。
なので、
訪問介護ヘルパーが起床を促し、
はじまりのリズムをつくるのを
目的とした、ケアがあります。
通称、朝ケア、と呼ばれるものです。
なかでも鳥羽くんのように、
見事な朝ケアを提供する、
介護士さんがいました。
ご本人に無理矢理、
エンジンをかけるのではなく、
ご本人の流れに添いながら、
リズムを引き出す、介護士さんです。
ケア時間は限られているので、
ヘルパーの私は、ついつい、
ご本人の手を引っ張るような、
その場しのぎの時間の流れを、
作りがちでありました。
けれど、
鳥羽くんのような介護士さんの働きは
朝ケア本来の目的に留まりません。
多くの高齢者が、仕事だ家族だ、と、
外側のリズムに合わせてきたであろう
人生の締めくくり、
そのひと本来のリズムを取り戻す、
重要な役割を、になっているのです。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》