介護施設で、あるある探検隊♪

演劇とお笑いと介護。意外な共通点見つけたり!あるある探検隊の活動報告64

「あるある探検隊」のリズムネタで一世風靡したお笑いコンビ・レギュラーの松本くんと西川くんは、いま全国の介護施設をまわって、お年寄りたちを笑顔にする活動をしています。ところがここ半年以上、新型コロナウイルスの影響で思うように活動ができません。いまはとにかく自分たちの介護レクリエーションのノウハウを蓄えていくのみ!
今回は、「老い」をテーマに演劇活動をする劇団「OiBokkeShi(オイボッケシ)」を主宰する岡山県在住の菅原直樹さんとオンラインで結び、認知症の高齢者を楽しませる方法などについて指南してもらいました。

写真は毎回、レギュラー公式マネジャーがスマホで撮影した「渾身」の1枚です!

「オイボッケシ」とは、「老い」「ボケ」「死」をつなぎ合わせた言葉で、俳優で介護福祉士の菅原直樹さんが主宰する「老いと演劇」をテーマにした劇団の名前。介護現場で働いていた菅原さんが掲げる「介護と演劇は相性がいい」を合言葉に、高齢者や介護者とともに老いや認知症をテーマにした演劇をつくったり、演劇的手法を取り入れた認知症ケアなどのワークショップを全国で開催したりしている。看板俳優は、認知症の妻を在宅介護している94歳の岡田忠雄さんだ。

今回は、テレビで劇団のドキュメンタリー番組を見て感銘を受けたレギュラー2人のたっての願いで、菅原さんとオンラインによる対談が実現。「自分たちが介護レクリエーションをするときに考えていることと似ていてびっくりした!」という2人が、“答え合わせ”のように菅原さんを質問攻めにした。

西川くん 菅原さんが「芝居」と「介護」を絡めようと思ったきっかけは、なんですか?

菅原さん 10代、20代と東京で小劇場の俳優をやっていたんですが、なかなかメシが食えなくて、当時のホームヘルパー2級(現在の介護職員初任者研修)を取得して老人ホームで働くようになったんです。
そこで、まずお年寄りの存在感にびっくりしました。老人ホームのお年寄りがゆっくり歩くだけで、そのたたずまいがみんな個性的じゃないですか。見ちゃうんですよね。歩くだけで観客を引きつける、最高のパフォーマーなんじゃないかと。俳優として負けたと思いました(笑)。

松本くん 確かに! おじいちゃん、おばあちゃんはキャラが強いですからね。

菅原さん 存在感はあるし、話もおもしろい。人生のストーリーも豊富にある。老人ホームは、いろんな肩書を持ったいろんな人のストーリーが集まっている場所なんですよね。

西川くん 僕らが介護レクをやっているときも、やっぱりトークが面白くて、むしろこっちが楽しんでいます。

菅原さん 「年を取ると個性が煮詰まる」と言われるんですが、ガンコな人はますますガンコに、真面目な人はますます真面目になる。本当にそうだなあと思います。お笑いも演劇も、人間の魅力を引き出すものです。老人ホームで働いていると、むき出しの人間というか、“愛らしさ”みたいなものを感じるんですよね。そこに惹かれました。

西川くん 芸人の世界でも、最終的に人は「芸」を見るのではなく「人」を見る、と言われますからね。

松本くん 介護の現場では、ほかにもいろいろと驚きがあったんじゃないですか?

菅原さん いろんな体験がありますね。認知症のお年寄りから孫と間違えられることも(笑)。最初は、「いえいえ、介護職員です」と正していたんですが、ずっと付き合っていくうちに、それを受け入れて演技をしてもいいんじゃないかな、と思うようになりました。認知症の人が見ている世界を正して、現実の世界に戻すんじゃなくて、そっちの世界で一緒に歩いてもいいんじゃないかなと。認知症の人とのかかわりにおいて、「演技」というのは重要なんじゃないかな、と思うようになったんです。

松本くん 僕らの世界では、それを相手のボケに「乗る」、と言うんです。「それ、ちゃうやん」とツッコむんじゃなくて、相手の話に乗る。たとえば、相手が「警察官」の口調で話し始めてたら、こっちは「犯人」になる。否定せずに乗っかって空気感を出すというところは、似ているかもしれませんね。

菅原さん 正しちゃうと、その人が見ている世界はそこで終わってしまう。乗っかったり、演じたり、受け入れたりすることによって、その人の世界がこっちにも見えてくるんです。そうすると、その奥にある気持ちが伝わってくることがあります。

西川くん まさに菅原さんのワークショップで実践していることですね。認知症の人の言うことに対して「否定」と「肯定」を演じることで、感じ方がどう変わるか体験することができる。

菅原さん 「老いと演劇のワークショップ」といって、いろんなところでやっています。認知症に限らず、自分が信じていることを相手から全否定されて価値観を押し付けられても、人の気持ちは変わらないんですよ。双方の信頼関係を築くためには、相手の話を聞いて共感するということがとても大切なコミュニケーションの手法なんじゃないかなと思います。

西川くん 本当に、われわれの考えていることと通ずるものがありますね。僕らも気づけば、そういうふうにやっていたんで。

松本くん 昔からお笑いの人と演劇の人は近いと言われますが、本当にそれを感じます。

菅原さん 僕も、おふたりの施設での活動を映像で見たことがあって、素晴らしいと思いました。「間違ってもいいんですよ」という空気を作り出すのは大切なことです。僕も介護施設で演劇をやったり、レクリエーションをやったりするとき、そこに気を付けていますね。遊びというのは、できなくてもいい。むしろできないほうが盛り上がる。そこが大切で、「できないこと」が「いいこと」になり得るんですよね。

松本くん そう言ってもらえるとうれしいなあ。「間違ってもいい」というのは、まさに僕らが意識していることです。

菅原さん 僕らが生きている社会は、学校でも職場でも、“できない人”は反省して学習してできるようにならないといけないというプレッシャーがとても強い。だけど、介護の現場では「できる」「できない」にこだわるんじゃなくて、いまこの瞬間をともに楽しもうという姿勢が大切です。介護する人がどんな価値観で接するかで、介護の現場の雰囲気も変わります。

西川くん そうしたアイデアを現場に伝えるために、いまはオンラインでワークショップをやっているそうですね。

菅原さん 介護スタッフ向けにオンラインでやっています。演劇の世界でいう即興演劇のワークショップ「イエスアンドゲーム」を介護バージョンにしたものです。
もちろん、リアルと比べると顔を合わせないぶんコミュニケーションの豊かさは半減しますが、それでも趣旨は伝わります。むしろ、オンラインでもできちゃったねという“感動”が生まれることもあるんですよね。

西川くん 菅原さんの話を聞いて、あらためて気がついたわ。僕らのやり方は間違ってなかったな。「否定しない」「間違ってもいい」ということがいかに重要か、という話が聞けてよかった。

松本くん ほんま、自分たちの「答え合わせ」になったわ。高齢者介護の現場では「正しい」だけが正解じゃないってことを、自然と身につけてたってことや。

西川くん 僕らからすると、お笑いの世界では「ボケ」と「ツッコミ」が基本だけど、たしかに施設で介護レクをするときは、ほとんどツッコまないもんな。利用者さんが間違ったことを言っても、ふたりで首かしげるとかな。あれ?そうやったっけ?と。で、笑いにつなげていく。

松本くん そうそう。僕らの介護レクは菅原さんに褒めてもらったように、間違ってもいい場所やからね(笑)。「できないこと」が「いいこと」になり得るっていうのは、まさにその通りや。

西川くん 菅原さんが言っていた、年を重ねれば重ねるほど人間の味が出るという見方も、わかるわあ。

松本くん 年いくほどキャラが濃くなって、もうネタの宝庫やもんな。

西川くん 変わったキャラの人がいたら、僕らはむしろ興味が出る。何か起きるかも⁉とワクワクしてしまう“芸人の性”というかな。

松本くん そのへんの感覚は、お芝居の俳優さんと芸人は似ているんやろうね。

西川くん そうそう。どちらも、そもそも相手に興味を持たないとできないことやし。強烈な個性を面白がって受け入れるって、ある意味、究極の“ダイバーシティ”やで。

松本くん ほんまやな。いつの間にか時代が巡ってきたってことや。ということで、次回は続きで、オンライン・ワークショップをやってもらったんで、そのノウハウをとことん“盗む”で。

西川くん 松本くん、それは確かにアリやな!

「老いと演劇」OiBokkeShi 今後の予定

●2020年11月28日(土)29日(日)
第8回公演「ハッピーソング」
場所:奈義町文化センター大ホール(岡山県勝田郡奈義町)
詳細は、オイ・ボッケ・シのホームページ

●2021年1月17日(日)
OiBokkeShi × 三重県文化会館「介護を楽しむ」「明るく老いる」アートプロジェクト
老いのプレーパーク出張公演 in いなべ市「あたらしい生活シアター」
場所:いなべ市北勢市民会館さくらホール
詳細は、三重県文化会館のホームページ

「コロナ禍を生きぬく~認知症とともに」 の一覧へ

あわせて読みたい

この記事をシェアする

この連載について