イオンでウオークでマーチして、ハイ!あるある探検隊の活動報告60
構成/福光恵
「あるある探検隊」のリズムネタで一世風靡したお笑いコンビ・レギュラーの松本くんと西川くんは、いま全国の介護施設をまわって、お年寄りたちを笑顔にする活動をしています。ところがここ半年以上、新型コロナウイルスの影響で思うように活動ができません。そこでこの時間を利用して、資格取得の勉強にあてることに――。そして今回、見事合格となりました! 以前のような施設訪問はもちろん、今後のオンラインでも、利用者さんたちの介護レクリエーションに生かしたいという、その資格とは?
「みなさんの体に巻き付けたチューブを後ろから引っ張ります。さあ、歩いてみてください」
そんな講師のかけ声で足を前に出そうとするレギュラーの2人。しかし、空中で足踏みしてしまい、なかなか前に進まない。
「足だけで進もうとしてませんか? 腰を落として体の重心を前に移動させるのがポイントです」
今度は体の重心を意識して歩いてみると、なるほど、少しずつ前進できるように。向かい風のなかを歩くような感覚だ。
「そうです。それが正しい歩き方なんです」
これは、2人が受講していた日本ウオーキング協会が認定する指導者養成通信講座の一コマ。この日は1日かけた座学(講義と実技)の講座があり、通信だけでは体験できないウオーキングのさまざまな知識を学んだという。
新型コロナによる非常事態宣言以降、本業のお笑いの仕事のほか、全国の施設をまわって提供してきた「介護レクリエーション」もほとんどできなくなった2人。代わりにたっぷりと与えられた「時間」を活用して挑戦したのが、この講座で取得できる「健康ウオーキング指導士」の資格だった。
健康ウオーキング指導士とは、ウオーキングに関する専門的な知見を学んで、生活習慣病などの未病・予防・疾患改善に役立てたり、心身の健康を維持促進するためのプログラムをつくったりする資格。ウオーキングやトレッキングのオリジナルコースを作って、専門的な知見から健康を指導することもできる。2人が受講したのは、そのなかでも健康づくりのためにウオーキングを活用する、より専門的な学習をした「ヘルスウオーキング指導士」の資格である。
「介護施設でも、単に『健康寿命のためにウオーキングしましょう』と勧めるんじゃなくて、知識を持って勧められるようにしたい」というのが2人の狙いだ。
通信講座では、歩き方のフォームなどの基本的な知識に加え、ウオーキングのカテゴリーとそれぞれのウォーカーの人口やタイプなどを学ぶ「ウオーキング マーケット概論」や、ウオーキングを活用した病気の予防や改善などの知識と方法を学ぶ「身体運動とウオーキング」など、30単位の専門的知識を教材で学び、それぞれレポートを提出したという。
そうして、ほぼ半年の時間をかけて30本を超えるレポートを提出し、この9月末に2人とも、めでたく合格通知を受け取ったのである。
松本くん チューブで引っ張られながら歩くのは、ほんま不思議な感覚やったね。足だけ出そうとしても、まるっきり進まない。でも重心を意識すると前進できる。歩き方って、当たり前すぎて学校でも教わらないもんな。自己流が多いって、つくづくわかったわ。
西川くん あと、「床に貼ったテープの上を歩いてください」と言われて、みんなの前で歩いて見せる授業もあったやんか。肩が揺れてる人や、前かがみの人やいろんな人がいて、そうした特徴を受講者同士で指摘した。改めて人の歩き方を見ると、ほんといろんなクセがあるもんやとびっくりしたわ。
松本くん 僕らが受講したのは、自分たちの介護レクリエーションにいかせないかと思ったのが大きな理由のひとつだけど、ほかの受講者も、ド直球の靴メーカーの人がいたり、介護系の仕事をしている人とか、介護グッズ関連の会社の人もいたな。
西川くん そもそも、僕らがこの資格を取ろうと思ったのは、ショッピングモールのイオンでやったステージやったね。
松本くん そうそう、イオンでお笑いステージをやったあとに、観客のみなさんとウオーキングしながらイオンの中をまわるというイベントがあったんやね。そのときは講師の先生がついてくれたけど、僕らもああやって知識を持ったうえでウオーキングができたら、いろいろ活動の幅が広がるんじゃないかと。
西川くん そもそも僕らの「あるある探検隊」だって、動きのベースは「行進」やからね。僕ら自身、ちゃんと知識を持って足腰が弱らないようにしなくちゃ、これから長いことできません(笑)。
松本くん それに勉強してみると、やっぱり正しい知識でウオーキングをすれば、認知症予防につながるみたいやしな。そうやってウオーキングとレギュラーは、いろいろとかかわりが深いことがわかって、2人で資格を取ることに決めたんやね。
西川くん しかし、想像以上に勉強はハードやったね。基本は通信教育なんやけど、毎回、教材が送られてきて、レポートを書かなくちゃいけない。「自身の経験などを盛り込んで自分の言葉で説明せよ」みたいなやつや。教材の内容も、「歩く」ことをいろんな角度から科学的に解説する専門的なものやった。
松本くん 「散歩」「ウオーキング」「トレッキング」「登山」の違いといった基本的なところから、ちゃんと人間の身体の仕組みから学んで、姿勢を正して歩くにはどうしたらいいかとか、こういう人は左右の足のどちらから出すべきかとか。歩幅を数値化して分析したりな。あと、たとえば糖尿病の人には糖尿病の人向けの歩き方がある、というのも目からウロコやった。
西川くん なんせアンケートを取ると、ウオーキングはシニア層が「実際にやっている運動」のナンバーワンというからな。実際、高齢者も手軽にできるところがポイントや。
松本くん しかも認知症だけじゃなく、筋肉が衰えることで寝たきりになってしまう「ロコモティブシンドローム」なんかも、ウオーキングなどの運動で防げることがあるらしい。正しく続ければ、高齢者特有の病気の特効薬にもなりそうや。
西川くん 資格の勉強では、高齢者が筋肉を落とさない方法についても学んだな。筋力というと、スクワットや腕立て伏せをイメージする人が多いだろうけど、高齢者にそんな激しい運動はNG。それよりも、椅子に座ったまま、ちょっと足を上げたり下げたり、“第2の心臓”と呼ばれる「ふくらはぎ」を鍛える軽い運動から始めるのがいい。
松本くん 実はまんま僕らが施設の介護レクでやってる「ギャグ体操」やもんな。座ったまま ギャグの振り付けをすることで 、行進したり、手足を動かしたり、適度な運動になっている。
西川くん 施設では立ち上がれない人も多いから、苦肉の策で考えた体操だったけど、理にかなってたんやね。
松本くん 高齢者のウオーキングのやり方についての詳しい話はまた改めて紹介するとして、今日は手始めにこんなのやってみようか。
はい、ここで発表です。筋力の低下予防にいいといわれる「レジスタンス運動」(筋肉に繰り返し抵抗をかける筋力トレーニング)を使って、僕らの介護レクで使えそうな簡単オリジナル運動が完成しました。拍手〜!
西川くん 拍手〜! ほな、やってみよか。
松本くん まず左右の手のひらを胸の前でぴったり合わせます。
西川くん あー、仏様みたいにね。松本くんの坊主頭によく似合うポーズや。
松本くん 続いて、左右の手のひらを押し合うように力を入れて……。猫背にならないように背筋を伸ばすことを忘れずに。
西川くん くー、けっこう効くなあ! これ、腕や胸は筋トレに、背中はストレッチになるんよね。
松本くん そう、名付けて「ホトケ体操」や(笑)。施設でも神々しい“ホトケ顔”のスタッフさんがいたら、ぜひ試してもらいたい体操やね。みなさん、拝んでください!みたいな。
西川くん 松本くん、それはたしかにアルな!