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介護施設で、あるある探検隊♪

芸能人から防空壕。記憶たどれば3億円事件も解決?あるある探検隊の活動報告58

「あるある探検隊」のリズムネタで一世風靡したお笑いコンビ・レギュラーの松本くんと西川くんは、いま全国の介護施設をまわって、お年寄りたちを笑顔にする活動をしています。ところがここ数カ月、新型コロナウイルスの影響で思うように活動ができません。いまは少しずつ増えてきた「オンライン」に対応すべく、自分たちの介護レクリエーションをブラッシュアップするのみ! そこで今回は、これまで約3年にわたっておこなってきた施設訪問の反省会をします。あのときどうすればよかったのか――明日のためのステップアップ研修です。

オンラインイベントに臨むレギュラー
写真は毎回、レギュラー公式マネジャーがスマホで撮影した「渾身」の1枚です!

これまで全国各地の施設で介護レクリエーションをしてきたレギュラーの2人だが、現場でどうにもうまくいかなかった事例はいくつもある。

たとえば、パネルを使った人名当てゲーム。お笑い芸人の名前の一部を伏せ字にして、2人がヒントを出しながら、それが誰だか当てるという単純なゲームだが、これが思いのほか空振り。以前、この連載コラムでも紹介したが、お笑い芸人の「とにかく明るい安村」を出題したときの盛り下がりぶりといったら……。そのトラウマから、あれ以来、2人にとってパネルゲームは“禁じ手”になっているほどだ。

あれはいったい、何がいけなかったのか。
民間資格「レクリエーション介護士」を手がけ、2人が介護レクの技術を学んだ「スマイル・プラスカンパニー」の玉城梨恵さんが言う。
「基本的に、芸能人の写真パネルなどを使ったレクリエーションは、話を引き出しやすいのでオススメです。歌手や俳優、タレントさんなどの名前を当てたり、どの作品に出演していたか、どの曲を歌っていたか、といった話で盛り上がることができます」

ただし、これにはやり方があって、「最近の人気者ではなく、往年のスターを出すことが鉄則」だという。

吉永小百合、美空ひばり、石原裕次郎、三船敏郎、高倉健、北島三郎……こうした昭和の大スターたちを選んで、さらに当時の写真を見せれば、たいてい反応があるんだとか。
「さらに言えば、そうした当時のスターたちの恋愛事情や結婚、あるいはスキャンダルめいた話も事前に調べておくといいでしょう。そういう話は、意外に利用者さんたちもよく知っていて、そこから話が盛り上がることがあります」(玉城さん)

昭和の大スターたちの存在感は、いまも圧倒的なのである。

松本くん お笑いの感覚でいうと、安村くんは悪くない人選やと思ったんやけどなあ。

西川くん いや、安村くんはまったく悪くないで。僕らが、どうしても芸人目線になってしまうからいけないんや。玉城さんが言っていたことは、言われてみればそのとおりで、利用者さんたちの興味を考えれば、やっぱり「最近の人はNG」やろ。

松本くん 古い人となると……聖徳太子とか?

西川くん それは古すぎや! とにかく利用者さんはもちろん、世代が違うスタッフさんたちも知っているくらいのビッグネームのほうが、だんぜん会場が盛り上がる。さらに、いまの写真じゃなくて、当時の写真をパネルにして用意しておくことが重要やって。

松本くん たしかに、僕らが施設で介護レクをするときも、西川きよし師匠や坂田利夫師匠は、名前を出すだけでドッカン、ドッカン。エゲツない人気やもんな。

西川くん 玉城さんによると、利用者さんたちの人気ナンバーワンは吉永小百合さん。あとは、やっぱり石原裕次郎さん、高倉健さんあたりは鉄板みたいやね。

松本くん その人の名前や代表作なんかをクイズにして、そこからその時代のことなどを題材に利用者さんたちとおしゃべりすれば、「回想法」にもつながるってわけやな。昔を思い出すことで脳の活性化につながる効果が期待されるっていうアレや。

西川くん で、それに加えて意外に効果的なのが――。

松本くん ゴシップやね。離婚した、再婚した、浮気した、あるいはなんらかの不祥事を起こした、といった芸能人のゴシップは、世代にかかわらず誰もが興味を持つキラーコンテンツらしい。

西川くん そういうところは、いまも昔も変わらんなあ。でも考えてみたら、吉永さんも、高倉さんも、施設の人気上位はみんなクリーンなイメージよね。

松本くん 昔の大スターを話題にする効果は、ほかにもあるで。当時のことをよく知らないスタッフさんたちに、利用者さんたちが“先生”になって教えることができる。介護レクでは、教えるんじゃなくて教えてもらう、というスタンスが重要やからね。

西川くん 大スターといえば、みんなで歌うときに盛り上がるのが、やっぱり美空ひばりさんや舟木一夫さんやな。まさに昭和歌謡の“二大巨頭”。これまでの僕らの介護レクでも、舟木一夫さんの「高校三年生」には何度助けられたことか。

松本くん 僕らが「舟木一夫さんのこと、あんまり知らないんですよ」と白旗をあげると、「かっこいいんだよ」とか、「学生服が似合ってた」とか、おばあちゃんたちが大盛り上がりやもんな。そこから「みなさんが高校3年のとき、何してました?」と話を振ると、「防空壕のなかで逢瀬した」とか、「手をつなぐのも恥ずかしかった」とか淡い思い出が……。期せずして昔の恋愛事情を学んでしまうっていうパターンや(笑)。

松本くん あと、当時の事件や社会のできごとを題材にするのも手やな。自分らの経験から言っても、まず1964年の東京オリンピックや1970年の大阪万博なんかは鉄板よね。大阪万博は当時、関西中の子どもが行ったらしいからな。当時はまだ外国人が珍しくて、万博に来た一般の外国人観光客にサインもらいに行ったとか、いまじゃ考えられないエピソード満載や。

西川くん 事件も、1968年の「三億円事件」なんかは、みんないまだに興味が尽きてないから、めちゃ盛り上がる。でもって、みんないろんなことをよく覚えてる。「東芝のボーナスだった」とか、「発煙筒で煙を出した」とか。

松本くん 当時の3億円は、いまの100億円の価値とも言われるもんな。みんな新聞やテレビで情報をむさぼったんやろうね。利用者さんたちに当時のことをいろいろ思い出してもらったら……意外に真犯人まで行き着いたりして(笑)。

西川くん 松本くん、それはたしかにアルな!

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