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介護レクの「オンライン時代のノウハウ」あるある探検隊の活動報告53

「あるある探検隊」のリズムネタで一世風靡したお笑いコンビ・レギュラーの松本くんと西川くんは、いま全国の介護施設をまわって、お年寄りたちを笑顔にする活動をしています。ところがここ数カ月、新型コロナウイルスの影響で思うように活動ができません。そこで今回は、2人が3年前に取得した民間資格「レクリエーション介護士」を手がける「スマイル・プラスカンパニー」の“師匠”たちとリモートで対談。後半は、オンライン介護レクリエーションの可能性について聞きました。

オンラインでつながる、玉城梨恵さん(上段左)、青木佑太さん(下段左)とレギュラーのお二人
「レクリエーション介護士」の資格制度を手がけるスマイル・プラスカンパニーの玉城梨恵さん(左上)と、青木佑太さん(左下)。レギュラーの松本くん(右上)と西川くん(右下)

新型コロナウイルスの収束が見通せないなか、感染者の多い首都圏を中心に多くの介護施設では、いまも外部との接触制限が続き、家族との面会もままならない利用者たちは寂しい思いをしている。レギュラーの2人も、2月に都内の介護施設で介護レクリエーションをしたのを最後にキャンセルが続く状態だ。

とはいえ、すべての動きがとまってしまっているわけではない。「レクリエーション介護士」の資格制度を手がけるとともに、資格取得者を各施設に派遣して介護レクをおこなっている「スマイル・プラスカンパニー」では、ウィズコロナの時代の“新たな形”を模索している。

同社では、6月からオンライン会議アプリ「Zoom」を使った介護レクのライブ配信をスタート。会員の施設が決まった時間にURLにアクセスすると、レクリエーション介護士の講師がオンラインでおこなっているリアルタイムのレクリエーションに参加できる仕組みだ。

同社の創業メンバーで、「レクリエーション介護士」の資格の開発に中心的にかかわった玉城梨恵さんが、こう話す。
「いまのところ、画面を見ながら体操をしたり、歌を歌っていただいたり、というのがメインコンテンツです。普段の介護レクはだいたい1セット1時間ですが、オンラインの場合は、時間を短縮して30分に。やはりリアルのレクリエーションと比べて、画面を通してではなかなか集中力が続かない。オンラインの特性を見ながら、試行錯誤しているところです」

スマイル・プラスカンパニーは、レギュラーの2人が介護レクを学んだ“母校”。これまでも同社の紹介で全国の介護施設に出向き、介護レクをおこなうことがあったが、これからはオンラインでコラボする機会があるかもしれない。今回は、レギュラーの2人とともに介護レクの現場に同行してきた同社の青木佑太さんも加わってもらい、“オンライン時代のノウハウ”について聞いた。

松本くん 僕らもオンライン介護レクの可能性を考えているんですが、うまく双方向性でできるかとかいろいろ課題があって。

玉城さん うちで始めたライブ配信は、いまのところ少人数が対象なので普通のZoom会議のようにみんなの顔が見えて、みんなが発言できる形でやっています。耳の遠い利用者さんもいるので、現場のスタッフさんに“通訳”などのサポートをしてもらいながら、双方向のコミュニケーションが可能になっています。

西川くん 現場のスタッフさんが中継してくれるなら、いつもと同じ調子でできそうですね。

玉城さん ただ、今後の課題もわかってきました。参加施設を増やして参加者が多くなると、ネット回線に負荷がかかって映像や音声が途切れてしまうかもしれない。それでは、テンポのいい介護レクはできません。それに双方向の画面では、利用者さん同士の顔が見えてしまうというプライバシーの問題もあります。

西川くん なるほど。実際にオンラインでやってみて利用者さんの反応はどうですか?

玉城さん 施設ではだいたい、大きなモニターを前にみんなが集まるんですが、そこで介護レクのライブ配信が映し出されると、利用者さんたちはたいてい、最初は「ぽかーん」としていらっしゃいますね。なにかしらこれ?みたいな。そこから次第に「テレビの中の人が私たちに話しかけてくるぞ!?」って、どよめきが起きるんです(笑)。

松本くん そりゃ驚きますよね(笑)。

玉城さん レクリエーション介護士の派遣は施設と契約をしているんで、利用者さんたちのこともよく知っている。だから画面からお名前を呼びかけると、「私?」みたいな感じで、これがまた盛り上がるんです。これがいいアイスブレイクになって、みなさん慣れてくるとこちら側に手を振ってくれたりします。

西川くん 時間は30分に短縮しているとのことですが、内容もオンライン用に変えているんですか?

玉城さん ずいぶん変えてますね。オンラインだと基本的に、1人の講師が全体を相手におこなうレクリエーションしかできない。おふたりも勉強したと思いますが、本来、リアルな現場でやる介護レクの構成には手順があります。まずは講師が会場全体に話しかける「1対多」。そこから小グループにわけて盛り上げていく「1対小グループ」。そしてグループ対抗戦などでコミュニケーションを活性化しながら、最後に改めて全員の一体感をつくり出す「1対全体」にもっていく、という流れです。

松本くん オンラインでは、なかなかそこまでできそうもありませんね。

玉城さん オンラインでは、一人ひとりに対してそこまで綿密なケアはできないので、基本的に「1対全体」のコミュニケーションに徹する構成にしています。その意味では、レギュラーのおふたりの介護レクは、もともと話術で全体に話しかけながら場を作っていくので、むしろオンラインに向いていると思いますよ。

青木さん 現場では西川さんが利用者さん一人ひとりに近づいて、それぞれの反応を拾い上げてますが、その役目もスタッフさんがサポートに入ってくれれば、問題ないでしょう。

西川くん それは勇気の出る話ですね! オンラインでは、具体的にどんなレクリエーションが盛り上がるんですか?

玉城さん 定番の「グーパー体操」(左右の手でグーとパーを交互に出す体操。慣れてきたら腕や足を連動させる)は、オンラインでもできます。あと「指折り体操」。1、2、3、4、5と掛け声に合わせて指を折っていく脳トレ体操です。オンラインでもできることはいろいろありますが、画面越しで集中力が続くのは30分程度が限界なんで、そこでのメニューはまだまだ研究の余地があります。

松本くん 世の中でもっとオンライン介護レクの機会が増えるといいんやけどなあ。

玉城さん コロナ対策でいまも1カ所に多くの利用者さんを集めないようにしている施設は多いですからね。徐々に解禁されてきましたが、利用者さん同士が間近でコミュニケーションを取ることを制限している施設もあって、レクリエーションの形は工夫が必要です。

青木さん 一方で、外部の受け入れ自体を自粛している施設もまだ多く、いままでレクリエーションをボランティアに頼んでいたようなところは、活動自体が止まってしまって困っているという相談もきています。身体を動かす機会が減って、利用者さんたちの状態が悪化しているという話も聞くようになりました。

西川くん コロナの状況下でもできることを見つけていかなきゃですね。

玉城さん 実は最近、弊社で出している介護レクリエーションの専門誌「介護レク広場.book」が売れています。コロナ禍のなかで、現場のスタッフさんが自分たちで介護レクを企画しようと勉強を始めている傾向があるのかと。現場の負担を少しでも軽減して、利用者さんたちが楽しく充実した日常を取り戻せるように、私たちもノウハウを積み上げていきたいと思います。

<オンライン・インタビューを終えて>

松本くん 僕らも双方向のオンライン介護レクの可能性を考えてきたから、実際にそれが実践できてるというのは朗報やったな。しかも、1セット30分程度に短縮しているというのは勉強になった。

西川くん たしかにな。30分というと僕らだったら何しようとか思ったけど、よく考えたら、いつもの介護レクリエーションでもたまに長いと感じるときがあるから、逆にちょうどええかもしれん(笑)。

松本くん 今回、玉城さんと青木さんの2人と話して、いろんなことがどんどん動き出してるってことがわかってよかったわ。コロナが居座っているからといって、僕らまでじっと立ち止まっているわけにはいかないということや。

西川くん しかし、現場のスタッフさんたちが一斉に自分たちで介護レクをやろうということになったら、僕らのライバルが増えてしまうな。

松本くん いやいや、いまこそ差別化のチャンスやで。プロの芸人が見せるオンリーワンの介護レクや。たとえば、YouTubeみたいな2分くらいの動画を作って介護レクをやるとか。

西川くん おー、それはオンラインぽいな。

松本くん 介護度が高い利用者さんはもともと行動範囲が限られているし、いまはコロナ禍やから自分で動ける人も施設内に閉じこもったままや。だから僕らが代わりに、スマホで動画を撮りながら東京タワーとか名所などをまわって東京観光みたいなことをやったら盛り上がるんやないか。

西川くん それは、利用者さんたちにとって“新しい体験”になりそうやな。僕らの親世代ってネットに触れた経験が少ないから、ある意味ピュアな相手や。僕らがVTR使いながらオンライン介護レクをやったら、きっと驚くで。

松本くん 災い転じて、新しい介護レクが生まれる予感やね。

西川くん 松本くん、それはたしかにアルな!

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