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介護施設で、あるある探検隊♪

トマト専門店?脱線してこそ面白い介護レク あるある探検隊の活動報告54

「あるある探検隊」のリズムネタで一世風靡したお笑いコンビ・レギュラーの松本くんと西川くんは、いま全国の介護施設をまわって、お年寄りたちを笑顔にする活動をしています。ところがここ数カ月、世界的に流行する新型コロナウイルスの影響で、思うように活動ができません。いまはただ自分たちの技術を磨くのみ。そこで今回は、2人が介護レクリエーションを学んだ「スマイル・プラスカンパニー」の師匠たちと一緒に、定番ゲームをアレンジしたレギュラー流レクを考えました!

レギュラーと介護施設のみなさん
写真は毎回、レギュラー公式マネジャーがスマホで撮影した「渾身」の1枚です!

♪や〜おやのお店に並んだ、品物見てごらん〜、よく見てごらん、考えてごらん♪
 
そんなメロディーを、みんなで歌いながらスタートするのがこのゲーム。もとになっているのは、八百屋の店頭に並ぶ商品を順番に答えていく定番リズムゲーム「やおやのお店」だ。

一般的なやり方は、始まりのメロディーを歌ったあとに「パンパン」と2回手拍子を打ったら答える合図。

利用者さん1「(パンパン)トマト」
全員で「(パンパン)あるある」
利用者さん2「(パンパン)キャベツ」
全員で「(パンパン)あるある」

というように、ちゃんと答えられれば、みんなで「あるある!」と声をあげ、一方、八百屋にないものを言ってしまったときは、「ないない」とみんなで指摘して盛り上がる(「ブブー」と言って、手で×を作るやり方などもある)。「あるある」でも「ないない」でも、そのまま続けていくのが基本ルールだ。

その定番ゲームを、レギュラーの2人が自分たちの介護レクリエーション用にアレンジした「レギュラー版やおやのお店」では、おもしろい答えや間違った答えが出たときが真骨頂となる。

利用者さん「(パンパン)キャラメル」
西川くん「(パンパン)あるある」
松本くん「ちょっと待ってや。どこの八百屋さんにキャラメル売ってんねん!」
西川くん「地方に行くと、いっぱいあるで。八百屋さんは、お菓子でも洗剤でも虫取り網でも、なんでも売ってるデパートやもん!」

こうして、利用者たちの珍回答をネタに、ゲームから脱線して面白おかしく場を盛り上げていくのは2人の得意ワザ。同じ答えが続いてしまう、という“介護施設あるある”の対処もお手のものだ。

利用者さん1「(パンパン)トマト」
全員で「(パンパン)あるある」
利用者さん2「(パンパン)トマト」
全員で「(パンパン)あるある」
利用者さん3「(パンパン)トマト」
松本くん「ちょっと待ってください! もうトマトの置き場がないです! その八百屋さんは、トマト専門店ですか!?」

レギュラーが取得した民間資格「レクリエーション介護士」を手掛ける「スマイル・プラスカンパニー」の玉城梨恵さんは言う。

「クイズ形式のレクリエーションでは、ひとつの正解が決まっている問題よりも、いろんな答えが出てくる問題のほうが、脳のさまざまな部位を刺激することになります。認知症予防にも効果的と言われます。最初はなかなかリズムに合わせられない利用者さんもいるので、気長に何度でもやって、言葉を拾っていくことが大切です」

松本くん この「やおやのお店」は、まだまだアレンジのしようがあるな。僕らなりのリズムをつくってやってもいいし。「さかなやのお店」でも「はなやのお店」でもいいし。

西川くん 「さかなやのお店」か。マグロ、サバ、アジ……うーん、難しいなあ。3つくらいしか思いつかん。

松本くん だからといって、「スーパーマーケットのお店」だとなんでも売ってるから、ぜんぶ「あるある」やで。

西川くん なんにせよ、僕らが目指すべき方向は、この“正解がひとつでない”系のゲームやね。玉城さんの話を聞いていて思ったんやけど、これってまさにお笑いで言うところの「大喜利」やん。

松本くん このときもう一つ教えてもらった「生活音連想ゲーム」もまさにそれや。もともとは、スケッチブックに描いたイラストを利用者さんに見せて、その擬音を答えてもらうゲームやね。たとえば、「雨」とか「うどん」とか「自転車」とか。

西川くん はい!(手を挙げる)

松本くん では西川くん、答えてください。

西川くん 雨はザーザー、うどんはツルツル、自転車は……コギコギ?

松本くん それって音やろか?

西川くん じゃあ、ギコギコ?

松本くん はい、その自転車は整備不良ですね……。

2人 (声を合わせて)みたいな!

松本くん こういうゲームは、まさに僕ら向きやな。いろんな答えが出てきて面白いし、その答えを拾って脱線しながらいろんなトークができる。なにより、なに言ってもいい空気が利用者さんにも楽しいはずや。

西川くん 僕らの場合は、スケッチブックはナシで、問題を言葉で伝えながら、たまにはっきりとした擬音がないものを出題したりしてな。たとえば、「カピバラ」とか。

松本くん まったく鳴き声の想像がつかん……。どんな答えが出てきても、ツッコミどころ満載やな。

西川くん イヌは「キャンキャン」。

松本くん 虐待してますやん!

西川くん ネコは「ゴロゴロ」……。

松本くん なついてる! 飼い方うまいですね……とか? ヘンな答えが出るほど、面白くなるゲームやね。

西川くん 僕らは「笑い」に寄せてしまうけど、こうしたゲームは、正解を競うんじゃなくで、要は利用者さんたちの“おしゃべり”のきっかけになればいいんやからね。玉城さんは、たとえば「やおやのお店」ゲームでは、「八百屋さんが減っていますね」とか、「むかしの八百屋さんは、ザルにお釣りを入れていましたね」とか話しかけて、利用者さんの記憶を引き出すきっかけにしていると言っていたしな。

松本くん 施設や家庭でも応用できるワザや。いま施設では、新型コロナの影響で外部の人が入れないから、スタッフさんがレクリエーションのネタに困っていると言うやん。僕らみたいに“ひと工夫”、自分たちのやりやすいようにちょっとアレンジを加えるだけで、定番のゲームもいろいろ広がると思うで。

西川くん 松本くん、それはたしかにアルな!

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