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介護施設で、あるある探検隊♪

みんな喜ぶ「リモートお笑い」が新しい!あるある探検隊の活動報告40

「あるある探検隊」のリズムネタで一世風靡したお笑いコンビ・レギュラーの松本くんと西川くんは、いま全国の介護施設をまわって、お年寄りたちを笑顔にする活動をしています。ところがここ数ヶ月、世界的に蔓延する新型コロナウィルスの影響で、思うように活動ができません。感染防止のため家族の面会もできなくなった利用者たちのストレスも心配です。

そこで今回は、昨年9月に2人が介護レクリエーションで訪れた、ケアハウス「慈恩」とデイサービスセンター「サルビア」(ともに静岡県富士市)などを運営する社会福祉法人「岳陽会」の常務理事・遠藤聡さんとオンラインでつなぎ、現場のお話をうかがいました。

レギュラーのイベントポスター
写真は毎回、レギュラー公式マネジャーがスマホで撮影した「渾身」の1枚です!

昨年9月に岳陽会の施設で開かれた介護レクリエーションは、併設するケアハウスとデイサービスの利用者に加え、同じ敷地内にある特養ホームの入居者とその家族、さらには地域の人たちも参加した、ちょっとした地域イベントだった。レギュラーの2人は、みんなの「笑顔」をつくり、地域の交流に一役買った思いもあるが、反省点もいっぱい。

コロナ自粛でこうしたイベントができない今だからこそ、自分たちの介護レクに磨きをかけたい。そう考える2人は、遠藤さんに率直な感想を聞いてみた。

松本くん 昨年9月の介護レクはよく覚えてます。富士山が目の前に見えて、ものすごく環境のいい施設ですよね。遠藤さんが、僕らに声をかけてくれたのは、何かきっかけがあったんですか?

遠藤さん 私はもともと地元でテレビの仕事をしてきたんで、そのつながりで吉本興業さんにお願いしたんです。芸人さんたちのステージに行くと、スタジオとは違う生のネタが、いろいろと出てくる。そういうライブの場を大切にしたいなと思っていたところ、レギュラーのおふたりが介護レクリエーションをやっていると知って、声をかけさせてもらったんですよ。

西川くん なるほど、そういう経緯だったんですね! それで利用者さんたちの反応はどう見えました?

遠藤さん 利用者さんたちも笑顔でしたが、印象深かったのは、スタッフがすごく喜んでいたことですね。もちろん、僕らの中では利用者さんが第一ですけど、施設で働いている人を楽しませたり、地域の人たちに施設のことを知ってもらったりすることも大事。その意味でも実りあるイベントになりました。

松本くん もしかして、利用者さんたちから「またレギュラーに来てほしい!」なんて声が上がったりして⁉(笑)

遠藤さん (間髪入れず)残念ながらないですね(笑)。でも、プロの芸人さんに来てもらったのは、レギュラーさんが初めて。やっぱり利用者さんたちが楽しそうに笑っている顔を見られたのは、嬉しかったですね。

西川くん スタッフさんたちに喜んでもらうのも、僕らの介護レクの目的の一つなんで、それは嬉しいなあ。

松本くん あと、小さなお子さんもけっこう来てくれたじゃないですか。ゲームにも協力してもらって、楽しいステージになったのがありがたかった。施設でのイベントが、地域の人が楽しみでやってくるお祭りみたいになってくるといいですね。

遠藤さん そういうのを目指して、うちも地域のお祭りのようなイベントをやってます。岳陽会で運営している地域包括支援センターでは、地域の人の悩みや相談も受けています。一人暮らしのサポートとか、引きこもりのサポートとか。それだけに地域との連携は、施設にとって大事なことだと思っています。

松本くん これは僕らも地域を巻き込んだ介護レクの達人にならないといかんですね。施設の利用者さんたちにウケるツボって、なにかありますか?

遠藤さん シンプルですけど、お年寄り相手のときは、ゆっくりと聞き取れるようにしゃべることが大事なんじゃないかな。とくに京都生まれのおふたりは、関西弁じゃないですか。馴染みのない地域のお年寄りには、笑う以前に意味がわからなかったり、ちょっと怖く感じたりすることもある。

西川くん なるほど。施設でなかなか盛り上がらないときは、言葉の問題の場合もあるかもしれないなあ。

遠藤さん あと、これからオンライン介護レクも広がるでしょうが、やはりモニター越しはどうしても身近に感じづらいものです。だから、私はイベントなどのライブの空気感は絶対になくならないと思っています。それどころか、この先どんどん贅沢な楽しみになっていくんじゃないかな。利用者さんにも、そういう体験をしてもらいたいし。 リモートをやりながら、ライブも大切にする。おふたりには、そういうスタイルでやっていってほしいですね。

松本くん よーし、このコロナ自粛を機に、新しいスタイルを見つけるで!

遠藤さん コロナが収束したら、新ネタを引っさげて、また富士に来てください。オンラインのレクもトライしてみたいですね。

2人 ぜひお願いします!

<オンラインミーティングを終えて>

西川くん 僕らの介護レクに施設のスタッフさんたちも喜んでくれたみたいで、ほんまよかったな。日々、大変なお仕事をしているスタッフさんたちに、つかの間の「非日常」を楽しんでもらえたみたいやし。やっててよかった、と心から思うわ。

松本くん 遠藤さんのところの施設のように、地域の人なんかも巻き込んで、もっといろんな人に見てもらえるようになるとええね。

西川くん そうやね。松本くんは、介護レクリエーションを始めたころからずっと、「近所の人も、みんな見に来てくれたらいい」って言ってたもんな。

松本くん 昔は介護施設というと、ちょっと怖いところというイメージがあったやろ。高齢者が最後に死を迎えるために行くところ、みたいな。場所も、人里離れた山の奥にあったり。でも、たとえば夏祭りを地域の人と一緒に盛り上げたりすることで、施設ってこういうところなんやとみんなに知ってもらうことができる。そうやって地域との繋がりができると、今度は利用者さんが散歩中に迷子になったりしても、地域の人が、「ああ、あそこの」と捜索に協力してくれるようになるんやないかな。

西川くん そうそう。僕らの介護レクリエーションにも、地域のイベントに足を運ぶ感覚で、近所の人たちが気軽に来てくれるのが理想やね。なんといっても子どもさんたちが会場にいると、ネタを盛り上げやすいし(笑)。

松本くん 実際に今までいろんな施設に行って感じたのは、入居者さんだけのときより、スタッフさんがいたり、家族がいたり、さらにスタッフの家族やら、地域の人やら、いろんな人がいたほうが盛り上がるってことやね。

西川くん お年寄り向けの笑いのツボも研究しないといかんな。

松本くん 僕らの芸はツッコんだり、ボケたりするのが基本やけど、自分たちの間があるから、ときには緩急織り交ぜた“チェンジアップ”で空振りを取れるような技も身につけなあかんってことやね。

西川くん お年寄り向けやからといって、とことんベタにわかりやすいことをすればいい、というのも失礼な話だと思うしな。てか、サッカー少年がいきなり慣れない野球のたとえでびっくりするわ(笑)。

松本くん チェンジアップが投げられるピッチャーになれば、いろいろな場面で使い分けもできるということや。若者向け、お年寄り向けから、劇場用、テレビ用などバリエーションが広がる。

西川くん 遠藤さんが言っていたように、ゆっくり話すことも意識しないとな。ツッコミひとつにしても、「なーーんーーでやねーーーん」みたいな(笑)。

松本くん 標準語なら「なんでだよ!」みたいな(笑)。て、むしろツッコミよりもフリをゆっくり丁寧にするのがええんやろな。

西川くん 関西弁についても、将来的には地域性がどんどん失われていって、方言使っているだけで「古い人」と呼ばれる時代が来るかもしれへんで。

松本くん 結局、面白いと面白くないの境は、理解できるか理解できないかだと思うねん。理解できないことは、笑いたくても笑えないもんな。とにかく、時代は変わっていくもの。どこに呼ばれても、だれが相手でも対応できるようにしたいな。

西川くん 松本くん、それはたしかにアルな!

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