ダンディー牛若丸が爆誕!笑いをつくる芸人イズム あるある探検隊の活動報告42
構成/福光恵 写真/レギュラーのマネジャー
「あるある探検隊」のリズムネタで一世風靡したお笑いコンビ・レギュラーの松本くんと西川くんは、いま全国の介護施設をまわって、お年寄りたちを笑顔にする活動をしています。ところがここ数ヶ月、世界的に蔓延する新型コロナウィルスの影響で、思うように活動ができません。感染防止のため家族の面会もできなくなった利用者たちのストレスも心配です。
実はこういうときこそ、介護レクリエーションの出番。今回は、好評におこたえして、施設でも家庭でも、簡単にできて、みんなが楽しめる2人のオリジナル介護レクをさらに紹介します!
レギュラーの2人による介護レクリエーションでは、一般の介護レクで定番の「鼻クロス」と「後出しジャイケン」もよく登場する。この2つのゲームに共通するのは、だれもが最初は必ずと言っていいほど間違える難しいゲームだということ。できないことができなくて、みんなで笑うのがレギュラー流だ。
今回は、この2つのゲームを詳しく見てみよう。
「鼻クロス」は、まず自分の右手で鼻をつまみ、左手で右耳をつまんで準備オーケー。そこから松本くんが「パン」と手を叩いたタイミングで、逆(右手で左耳をつまみ、左手で鼻をつまむ)に入れ替えるシンプルなゲーム。
これが実際にやってみると、右手で右耳、左手で左耳をつまんでしまうなど、本人も思わずお腹を抱えて笑ってしまうさまざまな失敗パターンが飛び出し、盛り上がること必至だ。
ここで意識するのは、レギュラーのほかのゲームがそうであるように、これも目的は「上手くやる」ではなくて、「間違えるのが楽しい」という一体感をつくり出すこと。もちろん、間違えるのが面白いから、事前の練習はナシ、だ。
「練習はナシですよ。はい、いきますよ」 「はい、そこ練習しない! ここの地域の人たちは、ホント、手癖が悪いですねえ」
などと、軽くジャブを入れつつ、おもむろに「パン!」。それを西川くんがチェックして、「こんなんなってましたよ」「これはひどいですねえ(笑)」などと盛り上げる。
ある介護施設では、こんな伝説的な間違いが——。 松本くんの「パン」の合図で、初老のダンディーな男性利用者が慌てて両手を左耳の横に。図らずも「横笛を吹く」ような格好になってしまった。これを見つけた松本くんが、すかさずツッコむ。
「ちょっと先輩! その手はなんですか(笑)。牛若丸じゃないんですから。あ! 足まで内股になってる。すっかり笛を吹く格好になってますよ!」
間違えたくないと思えば思うほど、とんでもない間違いをするのがこのゲーム。みんな間違えて当たり前だけに、ツッコみやすいというメリットも見逃せない。
もうひとつの「後出しジャイケン」は、「ジャイケンホイ!」の掛け声に合わせて、西川くんの出したジャンケンの手を見ながら、後出しでそれに「勝つ手」を出すというもの。西川くんの手がチョキならグー、パーならチョキ……と、言うのは簡単だが、実際にやってみると、これがまた面白いように間違える。
「えーと、このグーに勝つには?」 などとヒントを与えて導きながら、一方で「なるべく早く出してくださいね」と軽くスピードアップのプレッシャーをかけて、“間違えやすい”状況をつくり出すのがポイント。
より盛り上げるために、ライバル対決のストーリーをつくり出すのも、ちょっとしたテクニックだ。
「あなた、正解です! いちばん!」 「では、頂上決戦といきましょう!」 「〇〇さんも早かったですけど、●●さんの勝ちです!!」
慣れてきたら、今度は西川くんの手がチョキならパー……というように、わざと「負ける手」を出す正反対のモードに突入する。これがまた難しい。
何度も言うが、気をつけなきゃいけないのが、くれぐれも間違えて嫌な思いをさせないこと。 どちらもシンプルながら、恥ずかしさを感じずに思う存分間違えられる、介護レクにぴったりのゲームなのだ。
西川くん 今週もオリジナルレクリエーションの棚卸しでいくで。「鼻クロス」「後出しジャイケン」や。
松本くん どちらも僕らが考案したわけではなくて、もとからある定番レクリエーション。でも、そのまんまパクるのは、芸人としてご法度だからな。たとえば、お肉を好きなように料理してくださいと言われて、ただの塩コショウっていうわけにはいかないやろ。そこはアレンジを少しでも加えて、バターソテーとか、生姜焼きとか、自分らしく料理したいと思うのが芸人や。
西川くん あれ? 得意そうに語ってるけど、「鼻クロス」も「後出しジャイケン」も何かオリジナルのアレンジなんてしてたっけ?
松本くん そやから聞いてや。そのままパクりたくないと心から思って、いろいろトライ&エラーを繰り返したやないか。
西川くん ああ、あれな。ただのジャイケンじゃなくて、僕らの「あるある探検隊!」の「い!」で出してもらって、続く「ハイ、ハイ、ハイ!」で手を変えてもいい、ってやつね。
松本くん それが施設でやってみたら、だーれも、ジャンケン出してくれない。ほんま、全員スルー。ところが普通に「ジャイケンホイ」とかけ声をかけると、みんなやってくれる。すごいもんやな、ジャイケンマジック。
西川くん いろいろ試したけど、オーソドックスがいちばんやったな。
松本くん だから、あくまでもパクリではなくて、リスペクトや。肉も、やっぱり塩コショウがいちばん美味いからな。
西川くん 「鼻クロス」も「後出しジャイケン」も、まるっきりそのまんまだけど、僕ららしいエッセンスは、それを面白おかしくまわすところやね。
松本くん しかし、人というのは、いくつになっても競争心を持ってはるもんやね。負けたくないと焦れば焦るほど、ヒートアップして、へんな間違いをしてしまう。鼻クロスで笛吹きの格好になってしまった利用者さんも、まさにそれや。
西川くん ほんま、間違えて、ものすごくくやしがってる利用者さんもおるもんね。でもそういうときは、恥かかせないように注意していじるのがポイント。「失敗しましたね」じゃなくて、「うわー、おしい!」とか、「こんな面白い恰好して、(笑いのセンスを)持ってはるわー」とかね。
松本くん 失敗を“おいしい笑い”に変えるのが、芸人イズムだな。この2つのゲームは簡単そうに見えて年齢に関係なく難しいから、間違いをツッコんでも笑いに変えやすい。「牛若丸」のご本人も、みんなに笑いを提供して、楽しそうにニコニコしてはったもんな。
西川くん もう一つのポイントは、練習なしのぶっつけ本番で始めること。とくに「鼻クロス」は、入れ替えたときのことを頭のなかでイメージしてからやってもらうと、さらに頭の体操になるんやないか。
松本くん そうや! 大事なことを言い忘れた。鼻なんかを触るときは、よーく手を洗ってからにしてな。
西川くん 松本くん、それはたしかにアルな!