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緊急アンケート~自粛からwithコロナへ。認知症カフェそれぞれの対応は?

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、多くの介護・医療の現場が前例のない対応に追われています。そんななか全国に7千カ所以上あるとされる認知症カフェはどのような状況に置かれているのでしょうか。その一端でも推し量ることができる情報を得たいと、「コッシーのカフェ散歩」を担当するコスガ聡一さんが、これまでに取り上げた43のカフェを対象に緊急アンケートを行い、レポートを届けてくれました。

認知症カフェ緊急アンケート写真サブ

36カ所中30カ所の認知症カフェが開催休止

アンケートの第1問では、認知症カフェを休止しているかどうかを尋ねました。

Q1:新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、あなたのカフェは開催を休止していますか?(選択)

休止している

30

休止していない

6

 予想通り、大半のカフェが休止しているという結果になりました。

一方で休止せず活動を続けているカフェが6か所。それらには、オンラインに切り替えたカフェ、常設型、老舗、という3つの特徴があるようです。

 休止していないカフェ

・金沢市若年性認知症カフェ もの忘れが気になるみんなのHaunt(石川県金沢市)
・昼の町内会(愛知県東郷町)

オンライン化

・八王子ケアラーズカフェ わたぼうし(東京都八王子市)
・家族介護者支援センター てとりんハウス(愛知県春日井市)

常設型

・オレンジサロン石蔵カフェ(栃木県宇都宮市)
Dカフェ・ラミヨ(東京都目黒区)

老舗

 オンライン化して継続している2か所は、どちらも新型コロナウイルス流行以前からオンライン開催の経験がありました。半年ごとに詳細な活動計画を決めている「もの忘れが気になるみんなのHaunt」では、今年3月以降の内容を変更しつつ、あらかじめ決まっていた日時にオンラインで開催しているそうです。

常設型の2か所は「カフェを閉めずに開けつづけている」という表現がふさわしいでしょう。「てとりんハウス」は、毎月20回以上行ってきたセミナーや講座などを減らし、ボランティアにもお休みしてもらいながら、それでも相談のある人が立ち寄れるようオープンしつづけています。

石蔵カフェ」と「Dカフェ・ラミヨ」は、どちらも2012年に始まった国内で最も歴史がある認知症カフェです。「石蔵カフェ」代表の金澤林子さんは「1人で苦しんでいる介護者が一人でも、カフェに来てくれるのであれば、その気持ちにより添いたいというスタッフ一同の思いを形にしています」と回答しています。  

2問では、休止中のカフェにそれを決定した日付を記述してもらいました。第3問と合わせて、休止の経緯を尋ねています。

 Q2:休止が決まった日付を教えてください。

2月上旬以前

2

2月下旬

11

3月上旬

8

3月下旬

4

4月上旬

4

4月下旬以降

1

 各カフェの回答を月の上旬・下旬でまとめると上記の表の通りになります。2月下旬から3月上旬に、カフェ休止のひとつのボリュームゾーンがあることが分かります。

2月上旬は、ダイヤモンドプリンセス号が横浜港に到着(3日)したころです。船内の感染者が日ごとに増える一方で、まだ市中への拡大は抑えられていました。

2月14日、タクシー運転手の感染から都内でのクラスター発生の可能性が明らかになり、空気が変わりはじめます。政府の専門家会議が「不要不急の外出」を控えるよう呼びかけ(17日)、さらに24日になると「これから1~2週間が(感染の)急速な拡大に進むか、収束できるかの瀬戸際」という見解を講評すると、JリーグやEXILEのライブなど大規模イベントが続々と中止になっていきました。

認知症カフェ緊急アンケートimage写真2

そぉれdeおしゃべりカフェ」(大阪府枚方市)は、「2月下旬 に厚生労働省からグループホームでの面会・入室を制限するよう要請があり、それがカフェ休止を決めるきっかけになった」と回答しています。

政府が全国すべての小中高校と特別支援学校に、3月2日からの臨時休校を要請したのが2月27日。この要請の前後にかけて休止を決めたカフェが8か所に上ります。「いちばいきいきサロン」(神奈川県横浜市)は、「学校が休みになったことが休止を検討するきっかけになった」と回答しています。

一方、政府が7都府県に緊急事態宣言を出した4月7日以降に休止を決めたカフェは4か所にとどまります。このことから認知症カフェの休止に関して緊急事態宣言の影響は大きくなかったといえるでしょう。多くのカフェは緊急事態宣言に先んじて、「安全側に大きくマージンを取り」(「すももカフェ」(千葉県船橋市)回答より)休止を決断していたといえます。

 開催休止、どう決めた?

3問、第4問では、休止の判断が主に誰によるものだったか、そしてその経緯について尋ねています。

Q3:休止の判断について最も決定的だったのは誰の意見・指示でしたか?(複数選択可)

スタッフ

18

参加者

2

会場施設

8

自治体

8

1

その他

 「自治体」と回答したカフェには、県独自の緊急事態宣言を受けて中止した「オレンジドア も~やっこなごや」(愛知県名古屋市)、市から開催中止が通達された「お喋りカフェ希望・双葉台」(茨城県水戸市)、市が定めた基本方針に従った「ほっとカフェ」(神奈川県南足柄市)など、行政や包括が直接運営に携わるカフェが多く含まれます。また、「みちくさ亭」の千葉県柏市や、「すももカフェ」の船橋市は、自治体から、中止の方向での問い合わせや依頼等の連絡があったと回答しています 。どちらの自治体も認知症カフェ事業に積極的で、普段から各カフェと行政が密に連絡しあっているという共通点があるといえるでしょう。

「(休止の判断をしたのは)会場施設」 と回答したカフェのうち、高齢者施設内で開催している「cafeマリエ」(東京都渋谷区)、「きのこカフェ」(東京都千代田区)、「Dカフェ・でんどう」(東京都目黒区)は、2月下旬の早い段階で中止を決めています。一方、ホテルを会場とする「みかんカフェ」(静岡県富士宮市)、一般のカフェ・レストランを借りて開催する「ひだまりカフェ・ロックガーデン」(埼玉県飯能市)、「オレンジカフェ逆瀬川」(兵庫県宝塚市)は3月の比較的遅い時期に中止を決めています。地域ごとの事情は様々だと思いますが、このアンケート結果からは高齢者施設を会場とするカフェではより安全が重視され、飲食店を会場とするカフェではぎりぎりまで継続しようとしたという傾向を読み取ることができるかもしれません。

認知症カフェ緊急アンケートimage写真5

一方、最も多い回答は「スタッフ」です。それぞれ経緯に違いはありますが、国や自治体の動きを見ながら、主体的に中止を決断したカフェが多いようです。

この期間中に一度開催してみて中止を決めたというカフェもありました。「長屋カフェ」(東京都江東区)は2月に消毒や距離に注意しながら開催したものの、カフェが盛り上がると感染予防策を徹底できなくなることが分かり、その日のミーティングで中止を判断しました。また「ももとせサロン」(千葉県成田市)では、2月20日の開催時にスタッフと参加者で話し合い、中止を決めたと回答しています。

なお今回の調査では「参加者」から要請されるかたちで中止を決めたカフェはなかったようです。2つある「参加者」という回答のいずれも、スタッフと常連参加者が話し合って決めたという記述がありました。 

「仕方がない」の向こうに思い様々

5問では中止決定に対する参加者からの反応を尋ねています。

 Q5:カフェの休止が決まったあと、常連参加者からどのような反応・対応がありましたか?(自由記述を要約)

残念だが仕方ない

14

行き場がない・やることがない

5

早く再開してほしい

5

認知症の進行などが心配

4

コロナウイルス感染が心配

3

 カフェ休止については「残念だが仕方ない」に集約される反応が多数となりました。地域ごとの事情は様々だと思いますが、このアンケート結果からは「残念だが感染リスクに配慮した良い判断だ」、「今の状況では休止はやむを得ない」、「みんなの集まる居場所なので残念ですね」(「も~やっこなごや」代表・山田真由美さん)といった具合に、受け止め方にグラデーションがあるといえそうです。

「行き場がない・やることがない」という声に対して、「cafeマリエ」と「夜の認知症カフェ和心」(広島県広島市)ではそれぞれ代わりの夜カフェや食事会を企画したり、「みかんカフェ」では認知症のある方の就労場所運営者に連絡して、就労はしないが顔を出せるよう環境づくりをしたりしています。

「不安・心配がある」については、生活パターンが変わってしまうことへの不安、仲間と情報共有ができなくなったことへの不安、認知症が進行してしまうのでは?といった、心配の声が寄せられているという回答が寄せられました。

認知症カフェ緊急アンケートimage写真3

 毎週木曜に開催していた「ももとせサロン」は、独居で認知症のある方がカフェ休止後もやってきてしまうことがあったと回答しています。代表の夏目幸子さんが1対1で対応しつつ、その後は自宅玄関先まで訪問し、会話をしたり、買い出しを手伝ったりしているそうです。

「早く再開してほしい」という声がある一方で、「コロナウイルス感染が心配」という声もあります。今後カフェとしてはどちらにも配慮しながら、うまく両立する道を探る必要があります。  

再開に向けて具体策は?

6問からは今後のことについて尋ねています。まずは再開の予定が決まっているかどうかです。 

Q6:カフェ再開の予定は決まっていますか?(選択)

決まっている

2

決まっていない

24

条件付きで決まっている

4

 5月21日までに回答が寄せられた今回のアンケートでは、開催を中止しているカフェ30カ所のうち、24か所が再開の時期を「未定」としています。

Q7:カフェ再開の条件が決まっていれば教えてください(自由記述を要約)

緊急事態宣言の解除

8

会場施設の再開

6

自治体の判断

4

団体・法人内での合意

3

市中感染の危険がなくなること

2

スタッフの復帰

1

マスク・消毒薬などの確保

1

 第6問で、再開日が決まっている(6月11日)と回答した「オレンジカフェあん・ど」(山梨県富士吉田市)は、「会場としているカフェの営業自粛が解除されることと、マスク・消毒薬などが確保できること」の2つを条件に挙げています。同じく再開日が決まっている(7月18日)と回答した「も~やっこなごや」は、「行政の判断に従う」としています。

「条件付き」とした4か所は、それぞれ「緊急事態宣言の解除」、「市中感染の危険がなくなること」、「所属する団体内での合意」を挙げており、その点では「未定」としたカフェと大きな違いはないようです。  

8問、第9問では今後カフェを続けるにあたり、これまでの開催方法から何かを変える予定があるかを尋ねました。ここからは休止していない6つのカフェも回答しています。

 Q8:今後カフェを開催する際、何らかの変更を考えていますか?(複数選択可)

時間

3

場所

2

内容

5

人数

8

参加資格

0

オンライン化

8

その他

3

変更は考えていない

17

 Q8で「人数」と回答したカフェが8か所あり、いずれも参加者を減らす方向で考えています。予約制の導入を検討する「長屋カフェ」や、椅子を減らすという「みちくさ亭」、さらに休止していない「石蔵カフェ」でも現在は団体客の予約を受けないという対応をしています。

オムソーリ・カフェ」(千葉県浦安市)、「みやの森カフェ」(富山県砺波市)、「オレンジカフェしもさんち」(東京都豊島区)、「きのこカフェ」、「八王子ケアラーズカフェわたぼうし」、「介護者の心のやすらぎカフェ」(東京都荒川区)と、「みんなのHaunt」、「昼の町内会」の8か所が「オンライン化」を選びました。これらはすでにオンラインを実現している2か所を含め、日常的にSNSなどを使いこなしているカフェという印象があります。

「その他」としては、認知症の当事者がコーヒーを淹れて販売している「Sカフェ」(神奈川県横浜市)が、金銭のやりとりを含めた販売方法を見直すと回答しています。また2か所のカフェが消毒などの感染予防、参加者の健康管理を挙げていますが、これはおそらくほとんどのカフェで今後実施されていくことになるでしょう。

withコロナ時代の認知症カフェ

最後の第10問では各カフェが今後の運営における課題をどのようにとらえているか尋ねています。

 Q10:今後、認知症カフェを運営していくにあたり不安や悩みがあれば教えてください(自由記述を要約)

オンライン化について

8

安全に関すること

7

休止期間の影響について

4

資金面について

3

新しい会場確保

2

その他

2

 今回のアンケートにおいて「オンライン化」は一つの焦点となりました。新型コロナウイルスの感染が拡大するなかでもオンライン化して開催を続けたカフェがあったように、自宅にいながらお互いの顔を見て話しができる新しいテクノロジーには、いままさに熱い視線が向けられています。

その一方で、第10問の回答には認知症カフェのオンライン化に対する悩みや課題もつづられました。オンラインカフェはITスキルの差によって参加者が限定されてしまうこと、高齢者の多くがスマホやパソコンを持っていないこと、そしてこれまで築いてきたカフェの雰囲気が失われてしまうのではないかといった内容が見られます。

オンラインカフェの先駆者である「みんなのHaunt」もまた、次のようにオンライン移行の悩みを回答しました。

  • あまり話さない人は、オンライン参加していても発言の機会が少なくなる
  • モニターで見ても仲間の顔が分かりにくい若年性認知症の人がいる
  • 症状が進行した当事者にとっては、モニター越しでは楽しめない(家族からの意見)
  • 活動の軸である「本人のやりたいこと」を発展させにくい

ただ、オンラインで仲間に会えることをモチベーションにして、ウクレレの練習に励む方もいるという前向きな反応もあるそうなので、これからは各カフェで情報を共有し、集合知でより良いオンラインとの向き合い方を模索していくことになるでしょう。

認知症カフェ緊急アンケートimage写真4

第10問で「オンライン」の次に多かったのは「安全」に関する内容です。「カフェから感染者を出さないためにはどうしたらいいのか」、「参加者の健康チェックはどこまでやるのか」、「今後どうやって認知症の方のそばで話しかけたらいいのか」など。たとえ緊急事態宣言が解除されても市中感染の危険があるうちは再開できないだろうという見通しや、今後1、2年は「集うこと」自体を避けなければいけないという慎重な意見もありました。

現在、認知症のある方の自宅玄関先を訪問している「ももとせサロン」は、「独居の方のQOLは確実に低下しています」と回答しています。そうした「休止期間の影響」が、本人や家族に及ぼすダメージについて心配する声が4つのカフェから寄せられました。  

むすびに

今回の緊急調査の結果、未知の感染症流行に際して主体的に対処した認知症カフェ関係者の姿が浮かび上がりました。高齢者施設を会場としているカフェや、スタッフに介護職員がいる場合は、安全を最優先して早期に中止を決定する傾向があったようです。 

一方で在宅の本人・家族に寄り添おうとする市中のカフェが、可能な限りの対策をしながら、人と人のつながりを維持しようとする努力も見えてきました。そうした努力の中に、通信環境の整備と技術革新を背景とした、新しいコミュニケーションとしての「オンライン認知症カフェ」の萌芽が見られたことは大変意義深いことだと思います。今後はこのようなICT分野と、電話や手紙など従来の通信方法を巧みに組み合わせ、会場の制限や物理的距離にとらわれないコミュニケーションを充実させていくことが、新型コロナウイルスと共存していかざるをえない新しい時代のカフェ的取り組みにとって重要になっていくことでしょう。

アンケートでは「おしゃべりすること、一人一人の話をじっくり聞くこと、たくさん笑うこと、その中で参加者がお互いを認め合うことに意味がある」(「お喋りカフェ希望・双葉台」山口明子さん)のように、いまだからこそ見つめなおしたい従来のカフェの真価についても多くの回答がありました。あらためてこのような思いを共有させていただきたいと思います。

本調査には、36のカフェより回答をいただきました。お忙しいなかご協力いただいた関係者のみなさまに、この場を借りて御礼申し上げます。
アンケートを送った5月2日は、連休前に出された緊急事態宣言が当初の期限(5月6日)を迎える直前であり、宣言延長が取りざたされはじめた頃でした。またアンケート締め切りである5月14日朝の時点では、予定より早く解除が行われる可能性が報じられていたものの、まだ決定していないタイミングでした。
なお本調査は小規模かつ、対象も限定されていることから、パーセンテージなどは参考値以上のものでないことをご了承いただきたいと思います。

アンケートの全質問と選択肢
Q1:新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、あなたのカフェは開催を休止していますか?
選択肢:休止している、休止していない
Q2:休止が決まった日付を教えてください。
Q3:休止の判断について最も決定的だったのは誰の意見・指示でしたか?(複数選択可)
選択肢:スタッフ、参加者、会場施設、自治体、国、その他
Q4:休止が決まった経緯を教えてください(自由記述)
Q5:カフェの休止が決まったあと、常連参加者からどのような反応・対応がありましたか?(自由記述)
Q6:カフェ再開の予定は決まっていますか?
選択肢:決まっている、決まっていない、条件付きで決まっている
Q7:カフェ再開の条件が決まっていれば教えてください(自由記述)
Q8:今後カフェを開催する際、何らかの変更を考えていますか?(複数選択可)
選択肢:時間、場所、内容、人数、参加資格、オンライン化、その他、変更は考えていない
Q9:「Q8」で選んだ項目について、くわしく教えてください(自由記述)
Q10:今後、認知症カフェを運営していくにあたり不安や悩みがあれば教えてください(自由記述)

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