おめでとう!フレンチトーストでご機嫌を…認知症の母が喜ぶ毎日ごはん
撮影/百井謙子
フードライター大久保朱夏さんが、認知症のお母さんとの生活のなかで見いだしたレシピを紹介します。甘くて栄養満点も、ほろ苦い思い出。
※料理は普通食です。かむ力やのみ込みに配慮した介護食ではありません
4年前の3月、母は元気に72歳の誕生日を迎えた。今は車椅子になってしまったが、当時はまだ歩けたので「100歳まで杖を使わずに元気に生きたい」と生きるエネルギーに満ちていた。日によって気分の波は大きく、薬の調整は難しかったが、「元気度は何パーセント?」と質問すると、80〜100%と答えることが多かった記憶がある。
しかし、残念ながら誕生日当日は、起床時から機嫌が悪かった。「72歳、おめでとうー!」と、何度も言い、拍手をして気分を盛り立て、いつもはごはん食だが、誕生日だからと特別にフレンチトーストを焼くことにした。喜んでくれるかと思ったら、ごはんではないことにガッカリしたのか、フレンチトーストが食べづらかったのか、具合が悪いのか、なぜかもっと不機嫌になってしまい、手が止まってしまった。ハッピーバースデーの歌を歌ってもニコリともしない。
私は「せっかくがんばって焼いたのに」と言いたかったが、「フレンチトーストが食べたいと言われたわけでもないか」と、気を取り直して、すぐに食べられる卵かけごはんを出した。母は、「おいしい」と言って食べてくれた。誕生日もふだんと同じごはんの朝食でよかったのだ。
フレンチトースト
ほんのり甘いフレンチトーストです。食パンだけで食べるよりもエネルギーがとれます。バターの風味が豊か。乾燥して少しかたくなったパンも、卵液をつけてフレンチトーストにすることで食べやすくなります。
材料 2人分
食パン 2枚
卵 2個
砂糖 小さじ2
牛乳 大さじ2
バター 30g
ミニトマト 2個
ベーコン(ハーフサイズ) 2枚
メープルシロップ(またははちみつ) 適量
作り方
- 食パンを半分に切り、フォークで数カ所穴を開ける
- ボウルに卵、砂糖、牛乳を入れて泡立て器でよく混ぜ、食パンにつける
- フライパンにバターを入れて弱火で熱し、溶けたらパンを焦げ目がつくまで焼く
- ベーコンを焼き、ミニトマトを食べやすい大きさに切って3とともに皿に盛る。メープルシロップをかける