母が怒った体験ステイ 棒餃子で心新たに 認知症の母が喜ぶ毎日ごはん
撮影/百井謙子
フードライター大久保朱夏さんが、認知症のお母さんとの生活のなかで見いだしたレシピを紹介します。セロリのさわやかな香りが、口いっぱいに広がります。
※料理は普通食です。かむ力やのみ込みに配慮した介護食ではありません
介護のために実家に戻ったばかりの頃は、いざとなればショートステイを利用し、自宅に帰ったり、出張にも行けたりするのではないかと考えていたが、それは実現できなかった。
ケアマネジャーが「お母様の場合は、環境の変化にとても敏感なのでいきなりショートステイを利用するのは難しいかもしれない。試しに半日ほど体験利用してみたらどうか」と提案してくれ、アットホームだと評判の施設を紹介してくれた。
そこは古い一戸建てを活用した施設で、8畳ほどの居間に大勢の利用者が座っていた。台所で50代の女性がニラとニンニクを刻んでいて、そのにおいが充満している。「バイタルチェックと体操をした後、みんなで餃子を包み、昼食に食べます」と、スタッフから説明があった。母は緊張していたのかジャンパーを脱がず、リックサックも下ろさずじっとしていた。私はしばらく様子を見守って、母が着席したところで引き上げた。
母はニラ餃子を食べて送迎車で昼過ぎに帰宅。部屋に入った途端に「寒かった! あんな寒いところはイヤだ」と、烈火のごとく怒り出した。ふだん利用しているデイサービスは鉄筋コンクリートで、窓から燦々と太陽光が入るので温かい。古い戸建ての寒さは、母には過酷だったのだろう。
あれから3年以上経つが、ニラ餃子の匂いを想像しただけで私の苦い記憶が呼び起こされてしまい、以前は好きだったニラ入りの餃子を作る気になれない。
豚ひき肉とセロリの棒餃子
餃子の具に入れる香味野菜はセロリにしてさわやかに。たけのこを刻み入れることで春らしさを感じる餃子になります。皮を折りたたむ棒餃子にすると、時短になるだけでなく、皮のふちがかたくならず食べやすいのでおすすめです。酢じょうゆでどうぞ。
材料 2人分
餃子の皮 15枚
豚ひき肉 250g
水煮たけのこ(みじん切り) 30g
セロリの葉(みじん切り) 50g
塩 小さじ1/4
こしょう 少々
しょうゆ 小さじ1/4
オイスターソース 小さじ1/2
ごま油 小さじ1
おろししょうが 小さじ1
サラダ油 大さじ2
作り方
- ボウルに豚ひき肉を入れて、粘りが出るまで手で練る。塩、こしょう、しょうゆ 、オイスターソース、ごま油を加えて混ぜる
- たけのこ、セロリの葉、おろししょうが を加えて混ぜる
- 餃子の皮で2を棒状に包む(1個25g程度)。皮が重なるところを水でとめる
- フライパンにサラダ油を入れて熱し、餃子を並べて皮がきつね色になるまで強めの中火で焼く
- 熱湯約50ml(分量外)を注いで、ふたをして水けがほどんどなくなるまで蒸し焼きにする