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認知症の母が喜ぶ毎日ごはん

繊細な海の味で思い出す青森の旅 認知症の母が喜ぶ毎日ごはん

フードライター大久保朱夏さんが、認知症のお母さんとの生活のなかで見いだしたレシピを紹介します。繊細な海の味が春の訪れを告げます。

※料理は普通食です。かむ力やのみ込みに配慮した介護食ではありません

ワカメと白身魚の酒蒸し

母が認知症だとわかった2012年の夏、ふたりで旅に出かけた。行き先は青森県西津軽郡深浦町。「飛行機より電車でのんびり行きたい」という母の希望で8時間以上かけてJR五能線の深浦駅を目指すことになった。新幹線の車内で「どこへ行くの?」「切符がない」と、何度も同じことを聞く。旅行の楽しみよりも、先が読めない不安の方が強いのだろう。「切符は私が持っているからだいじょうぶ」と、何十回もバッグから切符を2枚取り出して母に見せた。
秋田から五能線に乗り、眼下に広がる真っ青な海を見たら気持ちがすっかり切り替わったのか、母は切符のことを聞かなくなった。4泊5日の間、仕事で縁ができた深浦町役場のYさんたちが、ブナの森や十二湖、大イチョウ、千畳敷海岸の岩浜などを案内してくれ、母はコンパクトカメラで撮影をして回った。また、介護職の経験があるというKさんがいろいろ親切にしてくれ、母の話もよく聞いてくれた。それから事あるごとに母は「深浦はいいところ、人もやさしかった。また行きたい」と言い、2016年には母と一緒にKさんに短い手紙を送ったこともあった。
深浦の春といえば生ワカメ。海から引き上げ、そのまま凍らせたというワカメをサラダにしたり、酒蒸しにしたりすると、母は「繊細な海の味がする」と言って喜んでくれた。今年は久しぶりに深浦のワカメを取り寄せて母に食べてもらおう。

ワカメと白身魚の酒蒸し

ワカメの香りを魚とともに楽しむシンプルな蒸し料理です。ワカメと蒸した白身魚は磯の香りを含んで豊かな味わいに。塩蔵ワカメの場合は、水に浸して塩を抜いてから調理してください。白身魚以外に豆腐でも合います。

材料 2人分

白身魚 2切れ(160 g)
生ワカメ 100g
小ぶりのたけのこ 50g
スナップエンドウ(あれば) 2本
酒 40ml
塩 適量
しょうゆ 適量

作り方

  1. ワカメは食べやすく切る。たけのこは薄切りにする
  2. 白身魚は3つに切り、塩をふってしばらく置く。湯にくぐらせてから氷水にとり、ウロコや血合いを除く
  3. 鍋に1を敷き2をのせ、酒を回しかけてふたをし、強火で5分ほど蒸す
  4. あればスナップエンドウをゆでて開いてのせ、しょうゆをかける

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