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今日は晴天、ぼけ日和

大好きなカップケーキ さらにスペシャルにしたのは真っ白なナプキン

《介護福祉士でイラストレーターの、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》

カップケーキを前に喜ぶひと

デイサービスの今日のおやつの時間は、スペシャル!

だって、メニューは私の大好きなカップケーキ。

甘い香りに誰もがニコニコ、子ども心が弾んじゃう。
さあ、みんなでいただきましょう!

そう思った、その時——。

エプロンを掛けられるひと

「服が汚れますから、かけますね」

そう言われて、スタッフさんに背後から、
ばさりと大きなエプロンをかけられた。

恥ずかしい! こんなの、つけたくない!

——でも、私は拒否できない。
心の叫びを、静かにのみ込む。

だって、食べこぼす私が悪いんでしょう?
他の選択肢なんて、どこにもない…。

気がつけば、目の前のケーキの輝きはもう消えていた。

ナプキンを差し出されるひと

「ごめんなさい、エプロンは嫌でしたね」

そんな私の沈んだ気持ちに気づいたスタッフさんが、エプロンを外してくれた。

「今日のデザートは崩れやすいので、
 もしよかったら、お召しものにナプキンをいかがですか?」

改めて姿勢を正したスタッフさんに、差し出された真っ白なナプキン。

私はにっこりほほ笑んだ。

今日のデザートタイムは、やっぱりスペシャルね!

自尊心が傷ついたことのない人など、いないでしょう。

そして、その痛みの鋭さを、私たちは誰もが知っています。

にもかかわらず、

「あなたにはできないから、こうしますね」

そうした有無を言わせない“正しさ”にのっとった介護が行われがちです。

それは、介護を受ける人の自尊心を、確かに奪ってしまいます。
そして、生きる意欲を失わせることに他なりません。

けれど、そのことに介護者が気づいた瞬間から、
介護は、ただ”世話をすること”ではなくなります。

一緒に喜びをふくらませ、人生の素晴らしさを分かち合う時間へと変わるのです。

もちろん、できないことも、間違えることもたくさんあるでしょう。
私も、間違ってばかりのひとりです。

それでも…。

何度、間違ってもいいじゃないですか。

昨日より今日。今日より明日。
私たちは少しずつ、でも必ずや幸せに向かっているのですから。

 

 

《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》

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