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今日は晴天、ぼけ日和

インコの次は?夫の思いがけない言葉に大笑い 夫婦で紡ぐ「小さな遊び」

《介護福祉士でイラストレーターの、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》

「九九」「くり」「りんご」「ごりら」「ランドセル」「ルイボスティ」「インコ」しりとりする人

「九九!」
「また『く』?!えっと…じゃあ、栗!」

最近、私たち夫婦の暇つぶしはしりとり遊び。
これが、なかなか面白いの!

夫の口から飛び出したのは、この前初めて飲んだ「ルイボスティー」。

私はすかさず、子どものころ飼っていた「インコ」と返した。

こんな無邪気な時間が流れる日が、
働き詰めだった私たちに訪れるなんて、
昔は思いもしなかったな。

「こ」からはじまる言葉を考える夫

「『こ』か……。こ、こ、こ……」
夫はうーん、と考え込む。

ふと夫を見ると、年齢を重ねたしわしわの肌。
でも瞳の雰囲気は、昔と変わらない。

無言でこのひとの顔をじっと見つめるなんて、
若いころならまだしも、
しりとりをするまで私、したことがなかったな。

笑顔の夫婦

すると、ぱっとひらめいた顔で、夫は叫んだ。

「恋わずらい!」

飛び出たロマンチックな単語に、ふたりで大笑い。

そんな頃も、私たちにあったかしら。
でも、今がいちばん。
こんな時間が待っていてくれたなんて——。

私たち、幸せね。

大切な人の顔を、無言でじっくり眺めたことがありますか?

話す話題がなければ、誰かと一緒にいる時間は過ごしづらいですか?

そんなひとには、ひとつ提案があります。
『しりとり』は、いかがでしょう?

特別な準備は一切不要。ふたりでも、大勢でも楽しめます。
必要なのは、小さな遊びを楽しむ無邪気さだけ。

子ども心が見え隠れする時間は、日々に明るさを与えてくれます。

かくいう私も、ご高齢の知人に誘われ、
おしゃべりの合間に始まるしりとりに、最近ハマり始めたひとり。

話すのが苦手なひとも、その場にいる誰かとつながれる。

私の番、次はあなたの番。

順繰り、ひとりひとりに視線を送り、
言葉を待ち、
一緒にその間を楽しむ心。

人生のしめくくりを迎えつつあるご高齢の方々と、
笑顔でつながれるその時間の豊かさを、
ぜひどなたにも味わっていただきたいものです。

《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》

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