長期入院時と同症状で病院へ 介護タクシー見つからず歓楽街を車椅子で疾走
タレント、アナウンサーとして活躍する“コマタエ”こと駒村多恵さんが、要介護5の実母との2人暮らしをつづります。唇が腫れていた母親。以前甘く見て、1カ月半もの入院に至った時の症状に似ていました。かかりつけの歯科医院に問い合わせ、紹介してもらった病院を受診したときのお話です。
蜂窩織炎(ほうかしきえん)での入院
ある朝、母の唇から顎にかけての腫れを発見した私は、ご厚意に甘えて仕事の日程を変更していただいて、母を口腔外科に連れて行きました。そして、蜂窩織炎と診断され、結果、入院することになりました。以前と同じ、不随意運動によって唇を噛んでしまったことに起因する炎症を疑っての入院です。
前回の入院は、訪問で受診している内科の本院にお世話になったのですが、総合病院ではあるものの歯科がありませんでした。お願いすれば、提携している歯科に診てもらえる仕組みだったのですが、歯科の巡回診療は週に1回、月曜の午前と決まっていて、間の悪いことに、母は月曜日の血液検査は正常値だったものの、火曜日に炎症が悪化。1週間受診を待たねばなりませんでした。その経験を踏まえ、訪問診療の先生からもまずは歯科の受診を助言されました。
月に1度診ていただいている歯科から紹介を受けた口腔外科に電話し、手短に症状を伝えると、「今日11時台なら予約の合間に見ることが出来ます」とのことで、すぐに病院へ。
最近寒いので、出かけるときは介護タクシーを利用していましたが、急には見つからず、久しぶりの電車移動です。その病院はターミナル駅にあるのですが、駅は何年もずっと工事をしていています。以前と動線が違う駅に戸惑い、エレベーターの位置を駅員さんに聞いて地上に向かったのですが、地上に出ると、そこは行き止まり。教えてもらったエレベーターはどうやらバスターミナル専用のもので、そこから横断歩道などはなく、街へは出られませんでした。工事中の駅が難しすぎる! エレベーターで会った方から交番に行くことを勧められ、交番で改めて道順を聞いて無事地上へ。昼の歓楽街を車椅子で疾走し、なんとか診ていただけました。
まずは血液検査で炎症をチェック。私もですが、母も血管が細く、いつも血液検査で苦労します。病院で一番の腕を持つラスボスのような方が来てくださり、何とか完了。いつもの歯科では車いすのままでは撮れないと諦めていたCTも撮っていただきました。
検査の結果、炎症反応の数値が入院判断基準まで上昇しており、極めて深刻な状況ではないけれど、深刻になる前に入院して加療しようという判断になりました。
「前回みたいに1カ月も入院なんてことにはなりません。薬も変えるし、3日ほどで退院できます。ある意味安心して、レスパイト入院のようなつもりで、娘さん、この機会に少しゆっくりしてください」
私を気遣う言葉までいただき、入院させてもらうことになったのです。
看護師さんは若い方が多く、担当の女性は、何時に会ってもつけまつげがバチッと決まっています。画面を見ながらキーボードをたたいているときに話しかけると、「ちょっと待って!」と制止され、担当医、薬剤師さん、私、その場にいた3人は思わず息を止めて待機。「どうぞ!!」の合図で順番に話し始めます。私は、午前中の退院が難しいこと、退院時の介護タクシーの予約が取れなかったことを伝えると、「え? 電車で帰るのは大変ですよぉ。ソーシャルワーカーに言っておきます!」。翌朝には、ソーシャルワーカーさんから「介護タクシーの予約が取れました」とご連絡いただき、退院時間も調整済みでした。
別の看護師さんは、母をベッドから車いすに移乗した拍子に母のズボンが下にずれてしまったのを見て、「わっ! ケツ出ちゃった!」と朗らかにズボンを上げてくれました。愛嬌があり、つけまつげはついていないけれども、仄(ほの)かなギャル味を感じます。
先生も看護師さんも、命を預かる重責を担いながらも明るくテキパキと働いていて、頼もしく、そんな彼女たちに、こちらまで元気になりました。母は予定通り3日で退院。お陰様で今は自宅で健やかに過ごしています。