認知症とともにあるウェブメディア

お悩み相談室

ヘルパーを息子だと思いこむ男性 対応のしかたは【お悩み相談室】

若い男性ヘルパー、Getty Images
Getty Images

認知症介護指導者の白石昌世司さんが、認知症の様々な悩みに答えます。

Q.訪問介護のヘルパーをしていますが、私のことを息子だと思っている認知症の利用者の方がいます。適当に話を合わせてきましたが、本当の息子さんが帰省していたときにも、私を息子だと思っていて、息子さんが悲しそうでした。話を合わせないほうがよかったのでしょうか(20代・男性)

A.なぜ話を合わせたのでしょうか? もしかしたら相談者のことを息子だと思っている利用者の方の表情があまりにも嬉しそうで、否定できなかったのかもしれませんね。確かに否定せずに相手を傷つけないようにすることは大事なのですが、否定することと事実を伝えることは別です。このようなケースで適切なのは、否定はせずに事実を伝えるということです。息子だと間違われたら、まず「息子さんに似ているんですね」などと言っていったん受け入れ、そのうえで「でも実はヘルパーの○○(名前)なんです」と事実を伝えます。

認知症が進行すると、症状の1つである見当識障害も進み、人物を正しく認識できなくなることがあります。ただし、完全に認識できなくなる手前の段階として「この人のことは知っているけれど、自分とどういう関係なのか忘れてしまった」「男の人だから自分の子どもかもしれない」というように人物を誤認することがあります。このケースでは、事実をしっかり伝えることを丁寧に繰り返していけば、認知症の方であっても正しく認識できるようになることもあるのです。しかし、ヘルパーが話を合わせてしまうと「やっぱり息子だったんだ」と思いこみを強めてしまうことになります。

特に息子さんが帰省したときには「こちらは息子さんの〇〇さんで、私はヘルパーの○○です」と事実をしっかり伝えるチャンスです。今回の帰省でそれができなかったのであれば、次の帰省の際には、ぜひ実践してほしいと思います。事前に息子さんに「最近私のことを息子さんだと受け止めてお話される傾向があります」というように状況を説明しておくと、息子さんのほうも心構えができますし、どのように事実を伝えるのがいいのか、一緒に考えることもできます。もしかしたら、相談者のことを息子さんと間違えるのは、背景に「息子となかなか会えなくてさみしい」といった思いがあるのかもしれないので、そうしたことも話し合えるといいですね。

利用者と日常的に接するヘルパーは、本人の思いに気づきやすい存在です。ご家族とのパイプ役にもなれるように活躍してほしいと思います。

【まとめ】ヘルパーのことを息子だと思い込む認知症の利用者。話を合わせるべきではなかった?

  • 息子と間違われたときには、否定せずに事実を伝えるようにする
  • 事実を繰り返し伝えれば、正しく認識できるようになることもある
  • 本当の息子が帰省する際には、事前に「自分のことを息子さんと間違える傾向がある」と状況を伝えておく。そのうえで「こちらが息子の〇〇さんです」と正しく伝える

 

 

≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました≫

あわせて読みたい

この記事をシェアする

この連載について

認知症とともにあるウェブメディア