特養スタッフがタメ口で父をまるで子ども扱い 傷つきます【お悩み相談室】
構成/中寺暁子
認知症介護指導者の上村尚之さんが、高齢者や介護の様々な悩みに答えます。
Q.父(80代)が脳梗塞で24時間介護が必要な状態になったのですが、タイミングよく近くの特養に入居できることになりました。そこで気になったのが、スタッフがみな、父にタメ口で口調も強いこと。尊敬している父が子ども扱いされているようで、私も傷つきます(50代・女性)
A.これは明らかに施設側に問題があるので、相談者の今の思いをそのまま伝えていいと思います。そのことで逆にお父さんへの対応が悪くなるかもしれないと心配される方もいますが、そういったことはないので、遠慮なく伝えてください。施設側がそれをふまえてどういう対応をとってくれるのかというところまで、回答をもらえるといいですね。
ポイントとなるのは、どのスタッフに伝えるのかということです。管理する立場の人に伝える方法もありますが、それだと、上から一方的にスタッフに伝えるだけになってしまう可能性があり、スタッフも単に注意されたからタメ口をやめるということになりかねません。このため、現場のスタッフに伝えるのがいいと思います。口調が強いスタッフがいると、その影響でスタッフすべてがそのように見えてしまうことがあるかもしれません。けれどもなかには気持ちのいい挨拶をするスタッフ、親切なスタッフ、笑顔で話しかけてくるスタッフもいるはずです。そうした信頼できそうなスタッフを頼って、相談者自身が「傷ついている」という今の気持ちを伝えるのがおすすめです。スタッフが「このままではいけない」と自発的に変わろうとしてくれたら理想的ですね。
言葉づかいの教育というのは、実はとても難しいのです。というのも、私自身、利用者の方に常に敬語で話しているかといったら、そうともいえません。例えば男性の利用者とプロ野球の話をするときに「昨日ソフトバンク勝ったね」というように、同じチームを応援する同志として、くだけた口調になることもあります。ただし、それは2人の関係性のなかで成り立つ言い方ですし、どういう場面でならくだけた口調になってもよいかというのは説明しづらいものです。また、ご家族の前では常に敬語で話すようにしています。本人はタメ口でよくても、関係性を知らないご家族は傷つくかもしれないからです。
このため、スタッフには、利用者に対して基本的に敬語で接するということを指導しています。それだけではなく、なぜ敬語で話す必要があるのかということも説明します。相手を尊重するという意味もありますが、私は言葉づかいというのは、行動に影響すると思っています。ていねいな言葉づかいをしていたら、ていねいな行動につながりますし、それを続けていれば適切なケアができるようになります。
もしかしたらスタッフは親しみをこめてタメ口になっているのかもしれませんし、最初はタメ口に疑問を感じるスタッフがいたとしても、みんながタメ口だとそれでいいのだと感覚がまひすることもあります。相談者の訴えは、施設のスタッフにとって新たな気づきになるはずです。
【まとめ】特養のスタッフが父にタメ口で、口調が強いときには?
- 施設側の問題なので、今の思いをそのまま施設側に伝える
- 現場のスタッフのなかでも、気持ちのいい挨拶をしてくれるなど、信頼できそうなスタッフに伝える
- 要望を伝えたうえで、どのような対応をしてくれるのか、回答をもらう
≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました≫