義父の介護は義妹が行い、我が家は費用負担 不満です【お悩み相談室】
構成/中寺暁子
認知症介護指導者の上村尚之さんが、高齢者や介護の様々な悩みに答えます。
Q.足が不自由な義父(70代)は一人暮らしですが、近所に義妹たちが住んでいるので、安心しています。ただ介護を手伝えないという理由で、介護保険サービスにかかるお金を我が家が支払っています。夫は何も言いませんが、義父が出すべきではないかと不満です(40代・女性)
A.お金の問題は、家族の関係性が壊れる大きな要因となります。私たち専門職が口を出しづらく、家族だけで話し合わなければならないというのも難しいところです。
相談者が考えるとおり、本来介護保険サービスにかかる費用は、利用者であるお義父さん自身が支払うべきだと思います。本人に直接聞きづらいとは思いますが、まずはお義父さんの経済状況を把握しないと、相談者の不満は解消されないのではないでしょうか。例えば貯蓄がほとんどなく、年金が月に15万円で家賃や光熱費を払うと残りが2万円となる場合、その中で食費などのほかにサービスの利用料を払うのは無理ですよね。そうなると、子どもたちが払うということに関しては、納得せざるをえなくなるかもしれません。
そうなると今度は、義妹たちにも費用を負担してほしいと思うかもしれません。できれば家族で集まって、現状のそれぞれの役割を確認することが望ましいと思います。お義父さんの家の近所に義妹たちが住んでいるということですが、どの程度介護を担っているのでしょうか。例えばですが、義妹たちはお義父さんの介護のために、相談者が想像している以上に時間をさいている可能性もあります。買い物や食事づくりのサポートをしていたとしたら、食材や日用品などにかかる費用を義妹たちが負担している可能性もあります。お互いにどういう役割を担っているのかを細かく把握することで、相談者がいま抱えている不満が軽くなることも考えられます。
家族会議には、ケアマネジャーが参加してもいいと思います。ケアマネジャー自身は家族のお金のことに口をはさめないと思うので、要介護の方が在宅で生活するために必要な知識や家族のチームワークの重要性、介護サービスにかかる費用などについての勉強会という形にするのはいかがでしょうか。勉強会ということなら、家族にも声をかけやすいかもしれません。勉強会の話のなかでお金についての話し合いもできるといいですね。
ただし、介護やそれにまつわるお金の問題は、誰もが納得がいくようには解決できないことがあるというのも現実です。そうした場合には、不満を吐き出せる場をもてるといいですね。今、相談者は義理の家族に対してだけではなく、現状を受け入れているかのようにみえる夫に対しても不満があるのかもしれません。認知症カフェでは、同じような経験をしている人がいるかもしれないので、話を聞いてもらって、共感してもらえるだけでも気持ちがラクになることもあります。お義父さんが認知症でもないのに参加しづらいという場合は、地域包括支援センターなどに聞いてみると、家族介護者の会のようなものを紹介してくれると思います。
少しでも精神的な負担を軽減するために気持ちを吐き出せる場をもつということは、介護においてとても大事なことです。それが家族関係を壊さずにすむ1つの方法でもあるのです。
【まとめ】義父の介護費用を負担していることに、不満があるときには?
- 義父の経済状況を具体的に把握する
- 家族会議を開き、現状のそれぞれの役割を確認する
- 不満を吐き出せる場をもつ
≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました≫