風呂場や寝室をのぞく義父 認知症だからと思っても嫌です【お悩み相談室】
構成/中寺暁子
認知症介護指導者の上村尚之さんが、高齢者や介護の様々な悩みに答えます。
Q.同居している義父(80代)の認知症が進んできたのか、風呂場や寝室をよくのぞいてきます。夫は「認知症だから仕方ない」と言いますし、私もそのように理解はしていますが、すごくイヤです。最近は同じ空間にいるだけでストレスを感じます(50代・女性)
A.お義父さんはなぜ、風呂場や寝室をのぞくのでしょうか。単純にのぞきたいという欲求からくる行動であれば、当然イヤだと思いますし、大きなストレスになるのもわかります。ただ、それ以外の理由がある可能性もあります。例えば風呂場からもの音がしたから見に行った、相談者の姿が見えなくて不安になったから探しに行ったといったことも考えられるのではないでしょうか。
というのも、認知症の人はふと誰の姿も見当たらないことに気づくと、不安になる傾向があります。「お風呂に行ってきますね」と伝えていたとしても、認知症が進んでいればそれを忘れてしまい、「どうして誰もいないのだろう」と不安になるのです。認知症の人が家族を探して家の中をうろうろするというのは、よくあるシーンですし、特に家族の中で一番頼りにしている人を探す傾向があります。家の中にお義父さんと相談者しかいないときに限ってのぞいてくるということであれば、その可能性は高いと思います。
不安からのぞきに来ていることがわかれば、嫌悪感やストレスは多少軽くなるかもしれませんが、いずれにしてものぞかれるのはイヤですよね。そこでお義父さんが忘れてしまったときのために、お風呂に入る前や寝る前にホワイトボードやメモ用紙にその旨を書いて渡すのはいかがでしょうか。
認知症の中でも「前頭側頭型認知症」は、社会性が欠如する、抑制がきかなくなるといった症状が出ることがあるので、のぞきたくてのぞいているという可能性もあります。この場合は、風呂場や寝室にカギをつけるなどして環境を調整し、「何かあったらノックしてくださいね」と伝えておくのがいいと思います。
前頭側頭型認知症以外の認知症であれば、やはり不安からくる行動の可能性が高いと思います。認知症の人の行動には理由があるはずなので、夫の「認知症だから仕方ない」という言葉は、認知症の人に対して誤解があるように感じます。これを機にご家族で認知症サポーター養成講座を受講するなどして、ぜひ認知症への理解を深めてほしいと思います。お義父さんのためというだけではなく、よくわからないからこそ感じるご家族のストレスも軽くなるはずです。
【まとめ】認知症の義父が浴室や寝室をのぞいてくるときには?
- 家の中に誰の姿も見当たらないことに気づき、不安から風呂場や寝室まで探しにきたのかもしれないことを理解する
- 風呂場や寝室に行く旨をホワイトボードやメモ用紙に書いて、渡しておく
- 風呂場や寝室に鍵をつけるなど、のぞかれないような環境をつくる
- 認知症サポーター講座を受講するなどして、認知症への理解を深める
≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました≫