子どものくせに…80代利用者が20代の僕に取り合ってくれない【お悩み相談室】
構成/中寺暁子
認知症介護指導者の落川晃央さんが、高齢者や介護の様々な悩みに答えます。
Q.グループホームに勤務しています。認知症の利用者(80代)がほかのスタッフの言うことは聞くのに、私が何を言っても「まだ子どものくせに」と取り合ってもらえません。80代から見れば20代の私は子どもかもしれませんが、困っています。どうしたら話を聞いてもらえるでしょうか(20代・男性)
A.見た目というのは印象を左右しますから、若いというだけで「何もできないだろう」と判断されてしまうのは、仕方のないことかもしれません。しかしそこからが、介護スタッフとしての腕の見せどころです。信頼してもらうために、まず何から始めればいいのかを考えてみるといいと思います。
例えば、朝会ったときには「おはようございます」としっかり挨拶をする、自分の名前を名乗る、利用者の名前を呼ぶ……、当たり前のことのようですが、まずは基本的なコミュニケーションがきちんとできているかどうか、振り返ってみてください。基本的なことができると、存在を認識してもらえるようになります。そのうえで利用者が困っていること、してほしいことに気づいてケアすることを積み重ねていくと、信頼関係を築いていけると思います。言われたからやるのではなく、こちらから「お茶でもどうですか?」「そろそろお疲れではないですか?」と先回りしてケアしていくことで、利用者に認めてもらえるはずです。
相手のことをよく知ることも大事です。名前や年齢、ADL(日常生活を送るための基本的な動作)の程度だけではなく、どのような家族構成で、どんな仕事をしていたのか、出身地はどこか。ご家族などに聞いたり、入居の際の書類を確認したりして情報を集めておくと、会話のきっかけになります。「そんなこと聞くな」「言いたくない」と言われることもあるかもしれませんが、それも情報の1つ。次からはその話題は、避ければいいのです。逆に盛り上がった話題があれば、それも大事な情報になります。「会話のさしすせそ」(「さすが」「知らなかった」「すごい」「センスある」「そうなんですね」)を使って相づちをうつと、気分よく話してもらえるかもしれません。
先輩スタッフも若かったころは、相談者と同じような体験をしているのではないでしょうか。今の状況を相談してみると、経験をもとにアドバイスをもらえるかもしれません。
「見た目は怖そうなのにやさしい」など、見た目と中身のギャップは、評価を一気に上げる武器になります。若いというだけで、マイナスのスタートであるということを理解して、「若いのに信頼できる」「若いのによく気づく」と言ってもらえるように、努力を重ねてほしいと思います。
【まとめ】グループホームの利用者から「まだ子どものくせに」と取り合ってもらえないときには?
- 若いというだけでマイナスのスタートであることを理解し、その分がんばる
- 挨拶や自分の名を名乗る、相手の名前を呼ぶなど、基本的なコミュニケーションをしっかりとる
- 言われてからやるのではなく、先回りしてケアする
- 家族などから情報を集めて利用者のことをよく知る
≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました≫